日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GC 固体地球化学

[S-GC50] 固体地球化学・惑星化学

2015年5月25日(月) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*下田 玄(産業技術総合研究所地質調査総合センター)、鈴木 勝彦(独立行政法人海洋研究開発機構・地球内部ダイナミクス領域)、山下 勝行(岡山大学大学院自然科学研究科)

18:15 〜 19:30

[SGC50-P01] COHを含むかんらん岩の融解によるカーボナタイトメルト生成の可能性

*小澤 亜耶1小木曽 哲1 (1.京都大学人間・環境学研究科)

キーワード:リン, カーボナタイト, 部分融解, 液相不混和, 初期地球

生命体を構成する必須元素(炭素、酸素、窒素、リンなど)の持続的供給は、生命の誕生とその発展を支える重要な条件のひとつと考えられる。だとすれば、初期生命発生時の地球上にはそれら必須元素が豊富に濃集している場所が存在し、その場所こそが初期生命誕生のゆりかごとなった可能性が考えられる。では、必須元素が濃集するような場とはどのようにして形成され得るのだろうか。特にリンに関して言えば、有機体が存在しない場合、地殻あるいはマントルから供給するしかない。地殻はマントルの部分融解によって形成されるので、マントルこそがリンの供給源のはずである。従って、マントルからどのようにしてリンに濃集する岩石が形成されたかを検討することが必要である。
現在地球上に見られるカーボナタイトにはリンが多く含まれており、中には他の火成岩と比較して桁違いにリンを濃集しているものも発見されている。従って、カーボナタイトの生成過程のなかにマントルからリンを濃集させる重要な鍵がある可能性がある。
カーボナタイトの成因について近年有力視されているのは、CO2を含むマントル物質の部分融解メルトから液相不混和によってカーボナタイトメルトとアルカリ玄武岩質メルトの二相が離溶するというものである。現在噴出しているカーボナタイトとその周辺のアルカリ玄武岩組成を用いて元素の分配を調べた先行研究にはVeksler et al. (2011)やBrooker (1998)がある。Veksler et al. (2011) では、同じ出発組成でも無水の場合にはリンは珪酸塩メルトへ濃集し、含水条件ではリンはカーボナタイトメルトへ濃集することが示されている。Brooker (1998)ではCO2に飽和した実験でより不混和領域が広がり、カーボナタイトメルトへのリンの濃集がより顕著となることが示唆されている。しかし、これらの実験で示された不混和現象が、マントル由来のメルトで起こり得るのかどうかについては明らかではない。
よって本研究では、出発組成として始原的マントル組成+CO2+H2Oを用い、マントル由来のメルトにおいてリンがカーボナタイトメルトに濃集するような液相不混和現象が起こる可能性を検討した。出発組成として、始原的マントル組成に近いKLB-1組成にシュウ酸二水和物を~10wt.%加えたものを用い、ピストンシリンダー装置で2.5GPa・1100℃の条件下で26時間保持し部分融解を起こさせたところ、非常にMgOに富みSiO2に乏しいメルトが得られた。
このメルト組成は、Brooker (1998)が実験で決定した(SiO2+Al2O3+TiO2)-(Na2O+K2O)-(CaO+MgO+FeO)疑似三成分系における珪酸塩メルト‐カーボナタイトメルト不混和領域にはプロットされない。従って、このメルトがそのままマントルを上昇しても、そこからカーボナタイトメルトが離溶する可能性は小さい。しかし、このメルトの中でカンラン石等が結晶分化することによってメルト中のアルカリ濃度が上昇すれば、メルト組成は不混和領域に近づいていく可能性がある。
以上のように、マントル由来のメルトからカーボナタイトメルトが生成される可能性はあると言える。こうしたカーボナタイトメルトを離溶する液相不混和現象が、初期地球において起こるためにはどのような条件が必要か、今後の検討が必要である。