日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC12] Multidisciplinary volcano monitoring

2015年5月26日(火) 16:15 〜 18:00 304 (3F)

コンビーナ:*青木 陽介(東京大学地震研究所)、マウリツィオ リペペ(フィレンツェ大学地球科学科)、市原 美恵(東京大学地震研究所)、座長:青木 陽介(東京大学地震研究所)、市原 美恵(東京大学地震研究所)

17:51 〜 17:54

[SVC12-P05] クラック分布に基づいた富士山周辺における応力場の時空間分布の推定

ポスター講演3分口頭発表枠

*蘭 幸太郎1サベジ マーサ2ブランギエ フローレント3大湊 隆雄1青木 陽介1 (1.東京大学地震学研究所、2.ウェリントン・ヴィクトリア大学地球物理学科、3.ジョゼフフーリエ大学地球科学研究所)

キーワード:富士山, S波スプリッティング, 地震波干渉法, 微小亀裂, 東北地方太平洋沖地震, 異方性

火山地域において応力は噴火の性状や地質の形成に大きな影響を与えることが知られている。富士山周辺では東北地方太平洋沖地震直後にMw5.9の余震が発生しており、定常的あるいは非定常的な応力下にあると考えられる。本研究ではHi-netの観測点に加え、東大地震研、気象庁、および防災科研が富士山周辺に展開している地震観測網を用いてS波スプリッティングおよび地震波干渉法による解析を行い、富士山周辺のクラックの時空間分布による応力場の定量化を目指した。
 S波スプリッティング解析を行った結果、富士山周辺におけるS波の偏向方向についてa)山体周辺では放射状b)山体から離れた場所では北西-南東方向の二つのパターンが認められた。また、深さとS波の到達時間差の関係より、異方性は地表から4kmより浅い部分に分布していることが示唆された。こうした異方性はダイクやクラックによるものと考えられるが、火山周辺におけるこれらの空間分布について、先行研究(e.g. Nakamura, 1977; Acocella and Neri, 2009)より山体荷重および広域の応力場との関連が示唆されていた。本研究ではこれらの考えに基づいて富士山周辺の2タイプの異方性を説明するため、応力モデリングを行った結果、実際の異方性の分布と調和的な結果が得られたため本地域の地下のクラックの分布は二つの異なる応力の影響下にあると考えた。
 S波スプリッティング解析は精度の限界のため、微小な時間変化をとらえることは難しい。一方で地震波干渉法は固定された観測点間での微小な地震波速度変化をとらえることができる。Brenguier et al. (2014)において、本地域では東北地方太平洋沖地震後に地震波速度が低下したことが指摘されている。本研究ではBrenguier et al. (2014)では使用されていない富士山山体近傍のデータを用い、地震波干渉法を行った。上下動のみ使用した予備解析において、先行研究と調和的な結果が得られた。今後は、より時間的、空間的に精度を上げた解析を試み、東北地方太平洋沖地震およびMw5.9の影響についても検討を行う予定である。