18:15 〜 19:30
[SCG58-P04] 福岡県長垂ペグマタイト岩体における希元素の濃集とH2O,F,B,Pの振る舞い
キーワード:Liペグマタイト, 長垂, 希元素, 電気石, フッ素, フラックス
福岡市西区に位置する長垂ペグマタイト岩体は,白亜紀後期に糸島花崗閃緑岩に貫入する早良花崗岩に伴って形成されたと考えられている(唐木田ら,1994)。長垂山周辺のペグマタイト岩脈は上記の花崗岩類に加え,三郡変成岩中にも確認できる。長垂ペグマタイト岩体の最大の特徴は,Li,Cs,Taなどの希元素が濃集し,多くの希元素鉱物を含む点にあり,現在,各鉱物に関する詳細な鉱物学的研究を行っている(e.g., Shirose and Uehara, 2014)。岩脈ごとに構成鉱物や組織などには差があり,Liが濃集しているのは山中の一脈のみで,多くは花崗岩組成に近い単純ペグマタイトである。本研究では,これらの単純ペグマタイトを含めた岩脈ごとの構成鉱物や副成分鉱物の組成変化を調べた。特に,花崗岩メルト中のフラックス成分であるH2O,F,B,Pに着目して比較を行い,Liペグマタイトの形成過程について議論を行った。
Li鉱物を含まないペグマタイトは,アプライトをよく伴い,いずれも脈状で,幅5-30m程度,おおよそN20oW方向に伸長しており,これは早良花崗岩の葉理構造に調和的である。主に石英,カリ長石,曹長石,白雲母などからなる花崗岩組成に近い単純ペグマタイトであった。しかし,緑柱石やコルンブ石等の希元素鉱物を含むものもあり,Li鉱物は確認されないが,Be,Nb,Taなどの希元素の濃集が確認された。また,柘榴石や亜鉛スピネルを含み,パーアルミナスな組成である。変成岩中に貫入しているペグマタイト岩脈からは,柘榴石や緑柱石に加え,ホウ珪酸塩鉱物である電気石を多く確認できた。Liペグマタイトは上記の鉱物に加え,含フッ素リン酸塩鉱物であるトリプル石,モンブラ石-アンブリゴ石や,Fに富む雲母であるリチア雲母を多く含む。
電気石の化学組成においては,変成岩中のペグマタイトのものはFを含まず,Fe,Mgに富む傾向が確認できた。一方,Liペグマタイトのものは,Fに富んでおり,Fe-Li組成からLi-Al組成への分化傾向も確認できた。Liペグマタイト中のモンブラ石-アンブリゴ石中のF濃度から,London et al. (2001)のメルトとの分配係数を用いて晶出時のメルト中のF濃度を見積もると,Liペグマタイト中心部では1.4-2.0 wt%程度と高濃度であったことが示唆される。長垂ペグマタイト岩体では,多くの岩脈でコルンブ石族鉱物[(Fe, Mn)(Nb, Ta)2O6]が副成分的に含まれる。その化学組成は,単純ペグマタイトではMn/(Mn+Fe) = 0.3-0.6,且つNbに富む組成であるのに対し,LiペグマタイトにおいてはMn/(Mn+Fe) = 0.4-1.0,且つMn端成分にてTaに富んでいくといった組成変化の傾向が確認でき,これらはWise et al. (2012)などの述べるメルト中のフッ素の量に応じた変化の傾向と対応している。
長垂のLiペグマタイトでは初生的に形成されたカリ長石,Li電気石が白雲母,クーク石などの粘土鉱物によって置換されており,モンブラ石-アンブリゴ石も多様な二次燐酸塩鉱物や白雲母により置換されている。これらは形成末期の,メルト中の水流体に富む残液による交代変質作用であり。H2Oに富んだLiペグマタイトに特徴的な反応であると考えられる。最終的な元素の挙動を考える上では,これらの変質作用を明らかにし,電気石の分解により放出されるBやLiの挙動を捉える必要がある。
ペグマタイトの組織,組成的な発展は,H2O,F,B,Pなどの花崗岩メルト中のフラックス成分により強く支配されていると推測される。特に長垂ペグマタイトにおいてはFに富むことで特徴づけられる。また,これらの元素は,ペグマタイトにおいては変堆積岩などを溶かし込んだと考えられるパーアルミナスな性質を持つ花崗岩が起源となっていることが多く,形成時の温度圧力条件に加え,周辺の花崗岩相の性質にも着目していく必要がある。
Li鉱物を含まないペグマタイトは,アプライトをよく伴い,いずれも脈状で,幅5-30m程度,おおよそN20oW方向に伸長しており,これは早良花崗岩の葉理構造に調和的である。主に石英,カリ長石,曹長石,白雲母などからなる花崗岩組成に近い単純ペグマタイトであった。しかし,緑柱石やコルンブ石等の希元素鉱物を含むものもあり,Li鉱物は確認されないが,Be,Nb,Taなどの希元素の濃集が確認された。また,柘榴石や亜鉛スピネルを含み,パーアルミナスな組成である。変成岩中に貫入しているペグマタイト岩脈からは,柘榴石や緑柱石に加え,ホウ珪酸塩鉱物である電気石を多く確認できた。Liペグマタイトは上記の鉱物に加え,含フッ素リン酸塩鉱物であるトリプル石,モンブラ石-アンブリゴ石や,Fに富む雲母であるリチア雲母を多く含む。
電気石の化学組成においては,変成岩中のペグマタイトのものはFを含まず,Fe,Mgに富む傾向が確認できた。一方,Liペグマタイトのものは,Fに富んでおり,Fe-Li組成からLi-Al組成への分化傾向も確認できた。Liペグマタイト中のモンブラ石-アンブリゴ石中のF濃度から,London et al. (2001)のメルトとの分配係数を用いて晶出時のメルト中のF濃度を見積もると,Liペグマタイト中心部では1.4-2.0 wt%程度と高濃度であったことが示唆される。長垂ペグマタイト岩体では,多くの岩脈でコルンブ石族鉱物[(Fe, Mn)(Nb, Ta)2O6]が副成分的に含まれる。その化学組成は,単純ペグマタイトではMn/(Mn+Fe) = 0.3-0.6,且つNbに富む組成であるのに対し,LiペグマタイトにおいてはMn/(Mn+Fe) = 0.4-1.0,且つMn端成分にてTaに富んでいくといった組成変化の傾向が確認でき,これらはWise et al. (2012)などの述べるメルト中のフッ素の量に応じた変化の傾向と対応している。
長垂のLiペグマタイトでは初生的に形成されたカリ長石,Li電気石が白雲母,クーク石などの粘土鉱物によって置換されており,モンブラ石-アンブリゴ石も多様な二次燐酸塩鉱物や白雲母により置換されている。これらは形成末期の,メルト中の水流体に富む残液による交代変質作用であり。H2Oに富んだLiペグマタイトに特徴的な反応であると考えられる。最終的な元素の挙動を考える上では,これらの変質作用を明らかにし,電気石の分解により放出されるBやLiの挙動を捉える必要がある。
ペグマタイトの組織,組成的な発展は,H2O,F,B,Pなどの花崗岩メルト中のフラックス成分により強く支配されていると推測される。特に長垂ペグマタイトにおいてはFに富むことで特徴づけられる。また,これらの元素は,ペグマタイトにおいては変堆積岩などを溶かし込んだと考えられるパーアルミナスな性質を持つ花崗岩が起源となっていることが多く,形成時の温度圧力条件に加え,周辺の花崗岩相の性質にも着目していく必要がある。