日本地球惑星科学連合2015年大会

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口頭発表

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[U-06] 宇宙・太陽から地球表層までのシームレスな科学の新展開

2015年5月24日(日) 09:00 〜 10:45 105 (1F)

コンビーナ:*松見 豊(名古屋大学太陽地球環境研究所)、草野 完也(名古屋大学太陽地球環境研究所)、石坂 丞二(名古屋大学地球水循環研究センター)、坪木 和久(名古屋大学・地球水循環研究センター)、榎並 正樹(名古屋大学 年代測定総合研究センター)、座長:石坂 丞二(名古屋大学地球水循環研究センター)

10:30 〜 10:45

[U06-06] 太陽活動の気候変動影響を探る分野連携研究の展望

*草野 完也1 (1.名古屋大学太陽地球環境研究所)

キーワード:気候変動, 太陽活動, ダイナモ, 分野連携, 小氷期

地球の気候を変動させる要因の一つに、太陽の磁気活動(黒点活動)がある。太陽磁気活動の変動は、約11年周期の変動(太陽周期変動)に加えて、より長期の変動の存在が黒点観測や、樹木年輪、南極およびグリーンランドの氷床に含まれる宇宙線生成核種(14C及び10Be)の変動からも知られている。こうした太陽の長期変動は、太陽周期毎に極域や黒点の磁気極性を反転させるダイナモ機構があわせ持つ性質であると考えられている。一方、太陽磁場(黒点)の長期変動と地球気候変動の間に一定の相関関係があることも認められている。特に、およそ10世紀から14世紀にかけて続いた中世温暖期、14世紀から19世紀半ばまで続いた小氷期は太陽活動の活発な時代と静穏な時代(グランド・ミニマム)にそれぞれ対応しており、地球の気候は何らかの影響を太陽から受けている可能性が高い。そのメカニズムについては太陽放射影響、銀河宇宙線の雲への影響、太陽高エネルギー粒子の大気降り込みによる高層大気化学変化等の仮説が提案されているが、未だに明確ではない。現在の太陽周期(サイクル24)は過去100年間で最も活動度の低い周期になる可能性が高い。今後、太陽活動がさらに低下し、21世紀中に新たなグランド・ミニマムを迎える可能性も指摘されている。このため、太陽活動の気候影響を解明することは将来の地球気候変動の予測信頼性を高めるためにも極めて重要な課題となっている。この重要課題の解決のためには、宇宙・太陽・地球を一つのシステムとして探るシームレス科学の視点が不可欠である。そのためには、宇宙物理学、太陽物理学、宇宙空間物理学、地球電磁気学、気象・気候学、古環境学などの分野横断的な連携研究を推進する必要がある。本講演では、太陽活動の気候変動影響を探るための具体的な課題について議論すると共に、名古屋大学において太陽地球環境研究所、地球水循環研究センター、年代測定総合研究センターが協力して進めようとしている新たな太陽気候影響研究プロジェクトの内容と計画を説明する。