日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM07] Space Weather, Space Climate, and VarSITI

2015年5月25日(月) 11:00 〜 12:45 302 (3F)

コンビーナ:*片岡 龍峰(国立極地研究所)、海老原 祐輔(京都大学生存圏研究所)、三好 由純(名古屋大学太陽地球環境研究所)、清水 敏文(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、浅井 歩(京都大学宇宙総合学研究ユニット)、陣 英克(情報通信研究機構)、佐藤 達彦(日本原子力研究開発機構)、草野 完也(名古屋大学太陽地球環境研究所)、宮原 ひろ子(武蔵野美術大学造形学部)、中村 卓司(国立極地研究所)、塩川 和夫(名古屋大学太陽地球環境研究所)、伊藤 公紀(横浜国立大学大学院工学研究院)、座長:清水 敏文(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)

11:45 〜 12:00

[PEM07-15] 太陽風予測モデルSUSANOO-SWの衛星観測との比較による定量的評価

*山野内 雄哉1塩田 大幸1草野 完也1 (1.名古屋大学 太陽地球環境研究所)

キーワード:太陽風, 宇宙天気, MHD

太陽風の擾乱は、宇宙天気において最も重要な要素の一つである。宇宙天気予報は、地球に到達する前にその擾乱を予測する試みである。現在、最も信頼できる予報では、地球前方に位置するACEなどの探査機の太陽風in situ観測が予報に利用されている。しかし、この方法のみではACEに到達する前の太陽風の情報は知り得ないため、ACE-地球間を太陽風が伝搬する1時間程度のリーディングタイムしか取ることができない。そこで、MHDシミュレーションを用いることで、さらに未来の予測を行うことができる。
 近年我々のグループでは、太陽表面磁場のリアルタイム観測データのみを入力として放射線帯の高エネルギー電子の変動を予測する宇宙天気予測モデルSUSANOO (Space-weather-forecast-Usable System Anchored by Numerical Operations and Observations)を開発した。SUSANOOの太陽風モデル(SUSANOO-SW) [Shiota et al. (2014)]は、太陽表面磁場観測データに磁場モデル・経験モデルを適用し、内部太陽圏の太陽風の三次元構造を再現するMHDシミュレーションである。SUSANOO-SWで再現した太陽極小期(2007~2009年)の太陽風の惑星の位置での時間変動は、磁場の相関係数が0.54~0.73、速度の相関係数が0.40~0.58と太陽風のin situ観測をよく再現した[Shiota et al. (2014)]。これは、1年単位の比較で評価を行ったため、グローバルな太陽風構造の再現性の良さが数字として現れたと理解できる。しかし、より短い時間スケールの詳細な比較を行うと、一部の再現結果が外れていることが確認される。不一致が起きる原因は、SUSANOO-SWの内側境界条件を設定するモデルにあると考えられる。実際の予報に使うためには、さらに精度を高める必要がある。そこで本研究では、SUSANOO-SWモデルとin situ観測とを詳細に比較し、再現性が悪くなる原因を究明した。
 本研究ではまず、SUSANOO-SWモデルを用いて、太陽活動極小期から極大期まで(2007~2014年) の太陽風変動を計算した。以下の4つの基準で観測値との比較をし、モデルの精度を数値化した。(1)Carrington Rotation(CR)ごとの速度変動の相関係数。(2)速度・磁場変動の一致率:(2-a) 磁場の極性、(2-b) 速度差がしきい値よりも小さいか、(2-c) dv/dtの符号 。ここで、(2)は1時間ごとに判定を行い、一致する時間の割合を求めた。この結果、(1)については、 42.5%のCRで相関係数が0.5以上となり、(2)については、いずれも’YES’が’NO’を上回るとなった。この結果から、モデルと観測の不一致が現れるタイミングと内側境界条件設定過程との関係を考察し、SUSANOO-SWの境界条件設定モデル改良案についても議論する。