日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS24] 宇宙における物質の形成と進化

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*橘 省吾(北海道大学大学院理学研究院自然史科学専攻地球惑星システム科学分野)、三浦 均(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)、大坪 貴文(東京大学大学院総合文化研究科)、本田 充彦(神奈川大学理学部数理物理学科)

18:15 〜 19:30

[PPS24-P01] 投影型イメージング質量分析装置を用いたマーチソン隕石の測定

*青木 順1河井 洋輔1寺田 健太郎1豊田 岐聡1 (1.大阪大学理学研究科)

キーワード:イメージング質量分析, アストロバイオロジー, マーチソン隕石

地球に存在する生命の起源に関して、これまで様々な議論がなされてきている。近年、可能性が高いとされているのは、宇宙空間において生成した有機物が太陽系形成の初期段階において地球にもたらされ、その有機物をもとにして生命へと至ったとする説である。このような太陽系の初期段階に関する始原的な情報は現在も特定の小惑星や惑星間塵(宇宙塵)などに残っており、それらを調べることでどのような有機物がかつて地球にもたらされたのかを知ることができる。
このような研究では、始原的小惑星に由来して地球に飛来した炭素質コンドライト隕石を主な測定対象としている。その中でも有機物を多く含有するマーチソン隕石は、これまでに多くの研究がなされている。含有されている有機物は、アミノ酸、炭化水素、カルボン酸など多岐にわたり、クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせた手法により物質が同定されてきた。このように隕石中の有機物を分析する場合には、全体を溶媒で抽出する大域的な測定がもっぱら行われてきた。しかし、より局所的な観点から、隕石中の有機物の分布構造や隣接する鉱物との因果関係を知ることができれば有機物の生成過程についての重要な情報を得ることができる。これまで、隕石中の有機物の空間分布はラマン分光や放射光などを用いた測定による化学結合に着目したものがあったが、この手法では詳細な分子組成はわからない。質量分析により分子の質量を高精度で測定できれば分子組成などより多くの情報を得ることができる。表面分析の手法では、イオンビーム照射によるイオン化を用いた質量分析イメージングがあるが、イオン化時にフラグメント化が起こるため有機物の分析には適していなかった。大阪大学で開発したMALDIイメージング質量分析装置は高分子のイオン化が可能で、高質量分解能かつ高空間分解能での有機物の分布情報を測定することができる。レーザーによるソフトなイオン化であるため、有機物分子を壊すことなくイオン化できる。さらに、これまでの走査型では空間分解能は10-100 μm程度が限界であったが、投影型では1 μmの空間分解能を実現している。この装置を用いてマーチソン隕石における構成成分の分布を測定した。