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★ [SSS29-12] 跡津川断層近傍における変形運動と応力蓄積過程
キーワード:跡津川断層, 応力場, GNSS, 干渉合成開口レーダー
跡津川断層は岐阜・富山県境付近を走る横ズレ型活断層で、明瞭な地震列や断層地形により古くから研究の対象となっている。私は近年跡津川断層で行われた(あるいは行われている)2つの大規模な観測プロジェクトに関わっている。一つは2004年から2008年まで行われた大学合同の微小地震観測である。私はこのデータからメカニズム解を決定し、それらを用いて応力場とその蓄積メカニズムを推定している。もう一つのプロジェクトは、GNSS観測とInSAR解析を併用することで、この地域の地震間地殻変動を面的に捉えることを目指すものである。これら2つのプロジェクトは同じ現象の異なる側面を見ているようでいて、実はその保障は無い。一般に、応力場は長い時間スケールの断層運動の蓄積によって形成されるのに対し、GNSSやInSARで捉えられる変位場はより短い時間スケールの断層すべりの不均質性を反映するからである。しかし、世界を見渡すと、こうした測地学的な変位速度パターンとより長い時間スケールの地形発達過程の間には強い相関があることが知られている。そこで、本発表では、まず応力蓄積過程を説明するような物理モデルを提示し、それとGNSSやInSARデータとの整合性と矛盾点を議論したい。私は跡津川断層の浅部や中央部がより深い部分、および断層両端の火山地域(白山・立山)に対してすべり遅れていると仮定し、粘弾性ディスロケーションモデルから応力を計算した。その結果、応力インバージョンから得られた応力軸の回転は数十メートルのすべり遅れで説明できることが明らかになった。一方、ALOS/PALSARを用いたInSAR時系列解析の結果をGNSSデータで補正した結果は、牛首断層近傍に歪速度が集中していることを示しており、局所的には断層モデルと整合的でない。しかし、これは平均速度場を直接GNSSデータで補正した結果であり、本来は個々の干渉画像を補正してから時系列解析を行った結果で置き換える必要がある。こうして得られた最新の成果について、モデルとの整合性を検討する。