日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS28] 東アジア‐北西太平洋域高解像度古気候観測網

2015年5月27日(水) 14:15 〜 15:00 202 (2F)

コンビーナ:*多田 隆治(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、中川 毅(立命館大学)、池原 研(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、山本 正伸(北海道大学大学院地球環境科学研究院)、座長:多田 隆治(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

14:15 〜 14:30

[MIS28-07] MD01-2407コアからみた過去60万年間の日本海堆積物の有機炭素量変動

*公文 富士夫1滝沢 侑子2 (1.信州大学理学部、2.信州大学大学院理工学系研究科)

キーワード:有機炭素量, 隠岐堆, 気候変動, 日本海, プロキシー, MD01-2407

2001年に隠岐堆で採取されたMD01-2407コアは堆積物の厚さで52.28 mあり,その下底の年代は60万年余まで遡る.このコアについて有機炭素(TOC)・全窒素(TN)量の測定を1cmおきに行い,60万年前までの測定を終えた.その後,とばしていた中間の試料の測定を継続しており,完了すれば平均125年ごとの平均濃度の資料となる.TOCの層序的・経年的な変動は,全体として海洋酸素同位体比曲線によく似た変動を示すが,海水準がもっとも高くなる間氷期の層準では不一致である.氷期のTOC変動は,海洋酸素同位体比に比べて顕著な増減を示し,10万年前までではグリーンランド氷床の酸素同位体比の変動と,それ以前については南極氷床の酸素同位体比変動とよく同調して変動する.この変動は,下北沖のC9002A, B, Cコアで測定されたTOC濃度の経年的変動とも良く似ている.
 同じ日本海で採取され,TOC・TN量が高時間分解能で測定されたコア試料には,上越沖の3コア(MD179-2996,3304,3312)と秋田沖の1コア(MD01-2408)がある.それらのコア試料がカバーする年代の下限は,10万年とか,20万年とかで,隠岐堆コアより短いが,同じような経年的変動をすることが確認できる.このことは日本海の主要部に共通した生物生産性の変動と,それを保存する高いポテンシャルあったことを示唆する.
 日本列島周辺の日本海および太平洋の堆積物試料は,中緯度で,かつ強いモンスーンの影響を受ける地域の優れた気候資料を提供できるものと結論づけられる.