18:15 〜 19:30
[SCG57-P33] 室戸岬での野外調査にもとづく中新統岬アセンブレッジの形成過程の考察
キーワード:付加体, 四万十帯, 室戸, 断層
高知県室戸岬に露出する付加体とされる上部漸新統?中新統菜生(なばえ)コンプレックスの構造・形成過程を理解するために,その一部である岬アセンブレッジの地質構造を調べた.付加体ができていく過程には多様性があり,その意味で現在形成中の南海付加体と四国に露出する最も若い付加体である菜生コンプレックスとの形成過程を比べるのは興味深い.そこで,高知県室戸岬先端部から北東へ約2200 mの範囲の海岸で野外地質調査を行い,肉眼と顕微鏡観察にもとづき,調査地域で見られる岩石を10の岩相(石灰質泥岩層・石灰質砂岩層・頁岩層・砂岩層・砂岩優勢砂岩頁岩互層・変形砂岩頁岩互層・等量砂岩頁岩互層・礫岩層・火成岩脈・粗粒玄武岩)にわけた.さらに作った岩相分布図をもとに,調査範囲の地質断面図を描いた.
調査範囲は,室戸岬先端部に露出している斑れい岩の貫入岩体の北西側と南東側とで岩相が異なる.北西側は半遠洋性の堆積物や強い変形を受けたタービダイト層を主体とする.一方で南東側は,砂岩優勢なタービダイト層と礫岩層からなり一部で褶曲している.これらの地層は南北から北北西?南南東走向で,高角度で西に傾いている.そして,調査範囲は大局的に西側ほど若い地層が出ている.また,調査地域全体に小規模な断層がみられ,貫入岩体を切っているものがあることや,層平行短縮を示すものが層平行伸張を示すものに切られているという関係が見られた.
これらの結果をまとめて,岬アセンブレッジの形成過程を次のように考察した.前期中新世に海洋プレート上に堆積した岬アセンブレッジは,その後剥ぎ取り作用によって陸側のプレートに付加された.その際,陸側に傾斜した前縁衝上断層の活動により,陸側の地層がのし上がった.そして斑れい岩体の貫入がその断層に沿うように入り込み,その後の傾動で現在の地層構造が出来上がった.菜生コンプレックスに発達する衝上断層帯は,海側傾斜が卓越すると考える説と陸側傾斜が卓越すると考える説とがあり,今回の結果は後者を支持する.
調査範囲は,室戸岬先端部に露出している斑れい岩の貫入岩体の北西側と南東側とで岩相が異なる.北西側は半遠洋性の堆積物や強い変形を受けたタービダイト層を主体とする.一方で南東側は,砂岩優勢なタービダイト層と礫岩層からなり一部で褶曲している.これらの地層は南北から北北西?南南東走向で,高角度で西に傾いている.そして,調査範囲は大局的に西側ほど若い地層が出ている.また,調査地域全体に小規模な断層がみられ,貫入岩体を切っているものがあることや,層平行短縮を示すものが層平行伸張を示すものに切られているという関係が見られた.
これらの結果をまとめて,岬アセンブレッジの形成過程を次のように考察した.前期中新世に海洋プレート上に堆積した岬アセンブレッジは,その後剥ぎ取り作用によって陸側のプレートに付加された.その際,陸側に傾斜した前縁衝上断層の活動により,陸側の地層がのし上がった.そして斑れい岩体の貫入がその断層に沿うように入り込み,その後の傾動で現在の地層構造が出来上がった.菜生コンプレックスに発達する衝上断層帯は,海側傾斜が卓越すると考える説と陸側傾斜が卓越すると考える説とがあり,今回の結果は後者を支持する.