14:30 〜 14:45
[SIT35-02] Fcc FeHx at core pressure
キーワード:地球核, 水素, fcc構造
水素は、地球の中心核に含まれる軽元素の候補として最も重要な元素のひとつである。地球形成初期の核形成時に、水素は選択的に金属コアに分配されたと考えられている(e.g. Fukai, 1984; Okuchi et al., 1997)。しかし、鉄―水素系の相関係に関する研究は比較的低圧力の領域に限られており(Sakamaki et al., 2009)、実際の地球核において鉄―水素合金がとりうる安定な結晶構造は明らかにされていない。これまで、自由エネルギーの計算から、鉄―水素合金の構造は圧力の増加に伴って二重六方細密充填構造(dhcp構造)から六方細密充填構造(hcp構造)、さらに面心立方構造(fcc構造)へと変化することが予測されているが(Isaev et al., 2007)、未だ実験によって実証されたことはない。そこで本研究では、レーザー加熱式ダイヤモンドアンビルセルによる高温高圧発生と高輝度放射光施設SPring-8におけるX線回折測定により、鉄―水素合金のdhcpもしくはhcp構造からfcc構造への相転移を確認した。実験の結果、約60 GPaにおいてdhcp構造からhcp構造に変化し、約70 GPaにおいてhcp構造からfcc構造に変化することが確かめられた。さらに、我々はfcc構造の鉄―水素合金について26 -137 GPaで格子体積を取得した。その結果、約70 GPaにおいて圧力と格子体積の関係および非圧縮率に不連続な変化がみられた。これは、理論計算から予測されている鉄―水素合金の磁気的性質の変化で説明できる可能性がある。今回得られた結果から、地球核の温度圧力条件における鉄―水素合金の結晶構造は従来提唱されてきたdhcp構造ではなく、fcc構造である可能性がある。