日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS23] 月の科学と探査

2015年5月25日(月) 16:15 〜 18:00 A02 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*長岡 央(早稲田大学先進理工学部)、諸田 智克(名古屋大学大学院環境学研究科)、Masaki N Nishino(Solar-Terrestrial Environment Laboratory, Nagoya University)、本田 親寿(会津大学)、長 勇一郎(立教大学理学部)、座長:晴山 慎(聖マリアンナ医科大学生理学教室(物理学分野))、山田 竜平(国立天文台 RISE月惑星探査検討室)

16:15 〜 16:30

[PPS23-08] 太陽風-レゴリス相互作用:月とフォボスにおける観測の比較

*二穴 喜文1 (1.スウェーデン国立宇宙物理研究所)

キーワード:太陽風, プロトン反射, レゴリス, 月, フォボス

「太陽風陽子がレゴリスに衝突する際に反射される現象は、どの天体でも見られる一般的なものなのか」という疑問に答えるべく、月探査衛星および火星探査衛星搭載イオン質量分析器のデータ解析結果を用い、月とフォボスの比較天体学的見地から議論を行なう。

太陽風陽子のレゴリスからの反射という現象は、日本の月探査衛星Kaguya搭載のプラズマ粒子計測器MAP/PACEによって始めて報告された。その後、いくつかの独立な観測(例えば月探査衛星Chandrayaan-1搭載の高速中性粒子・プラズマ粒子計測器SARA)によっても確認されている。本講演ではまずはじめにこれまでに報告されている月表面からの反射プラズマの特徴についてレビューを行なう。

続いて、冒頭の疑問を詳細に議論するため、火星の月、フォボス近傍でのイオン分布関数を調べた結果について報告する。欧州の火星探査機Mars Expressがフォボスに接近した際に取得した、同機搭載イオン質量分析器ASPERA-3/IMAのデータをサーベイしたところ、あるフライバイ時(最接近距離は約60km)に太陽風や衝撃波近傍の陽子では説明できない分布関数を持った陽子成分を検出した。これが月近傍で報告されている反射陽子と非常近い特徴を持っていることや、軌道追跡の結果などを総合して、我々はこれをフォボス表面における太陽風の反射陽子である可能性が高いと結論づけた。本研究は、月以外のレゴリス表面からも反射イオンが観測されたという最初の例を提示したもので、レゴリスからの太陽風反射という現象はどの天体においても起こりうる一般的現象であることを示唆する。