日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM07] Space Weather, Space Climate, and VarSITI

2015年5月25日(月) 09:00 〜 10:45 302 (3F)

コンビーナ:*片岡 龍峰(国立極地研究所)、海老原 祐輔(京都大学生存圏研究所)、三好 由純(名古屋大学太陽地球環境研究所)、清水 敏文(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、浅井 歩(京都大学宇宙総合学研究ユニット)、陣 英克(情報通信研究機構)、佐藤 達彦(日本原子力研究開発機構)、草野 完也(名古屋大学太陽地球環境研究所)、宮原 ひろ子(武蔵野美術大学造形学部)、中村 卓司(国立極地研究所)、塩川 和夫(名古屋大学太陽地球環境研究所)、伊藤 公紀(横浜国立大学大学院工学研究院)、座長:塩川 和夫(名古屋大学太陽地球環境研究所)

09:45 〜 10:00

[PEM07-09] 2012年3月7日X5.4/X1.3フレア: エネルギーの蓄積・トリガー・解放を探る

*清水 敏文1井上 諭2 (1.宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所、2.名古屋大学太陽地球環境研究所)

キーワード:太陽フレア, ひので, 光球磁場, コロナ, コロナ磁場, 宇宙天気

太陽フレアは、磁力線の捻れとしてコロナに蓄積された自由エネルギーが突発的に解放され、場合によっては宇宙空間へコロナプラズマの噴出を伴う。本講演では、2012年3月に太陽面に存在した活動領域11429に注目する。2012年3月7日にはX5.4およびX1.3フレアを起こし、これらのフレアはVarSITI/ISESTのスタディケースの一候補でもある。このフレアに伴うコロナ質量放出(CME)は惑星間空間に伝播して、地球では3月9日に大きな磁気嵐を発生させている。この活動領域はδ型黒点を含み、領域全体が強くシアしている。理解に乏しいフレアのトリガー機構を学術的に理解することは、宇宙天気のフレア発生予測にとって重要である。シアした磁場構造に対して、その磁気中性線上に小さなトリガ磁場が「反シア型」に成長することが、フレア発現の一つの磁場形態であると指摘されている。「ひので」可視光磁場望遠鏡(SOT)の高精度磁場観測によって、X5.4フレアに対する「反シア型」のトリガ磁場が磁気中性線上に特定されている。さらに、「ひので」の磁場および速度場観測から、1) トリガ磁場の横に、小さな双極の磁場が磁気中性線に沿って形成され、フレア発生の少なくとも6時間以上前から激しい音速ガス流がその磁場に沿って励起されていること、2) 激しいガス流が徐々に双極の磁場を成長させ、その先に存在したトリガ磁場を徐々に押して、トリガ条件の磁場構造に向けて磁場配置を変化させていること、等を発見した。この観測結果は、光球ガスのダイナミクスがフレア発現のトリガに至らしめる上で重要な役割を果たしていることを示唆している。一方、その約1時間後に、同じ磁気中性線に沿った西側の領域で、X1.3フレアが発生し、アーケード状のX線構造が発達する。なぜ、一度に系全体の磁場が噴出せずに、2段階になったのだろうか? X5.4フレアに対して激しい光球ガスのダイナミクスが特定されたが、X1.3フレアの発現には光球ガスのダイナミックスがどのように関わっているのだろうか?光球ベクトル磁場に基づいたNLFFFモデリングによってコロナ磁場の形状を推定し、ねじれ磁場の空間分布を導出した。各フレアの足下に現れるフレアリボン構造から、エネルギー解放が起きた磁力線を時間的にトレースして、ねじれコロナ磁場のどの部分が噴出したのかを評価した。この活動領域の磁場特徴やダイナミックスを示して、フレア蓄積と発現について議論する。