日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT53] 地震観測・処理システム

2015年5月24日(日) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*中村 洋光(防災科学技術研究所)

18:15 〜 19:30

[STT53-P07] 海底地形変化を検出するための最適な地震探査アレイの特性評価

*立花 冬威1鶴我 佳代子2 (1.東京海洋大学海洋科学技術研究科海洋管理政策学専攻、2.東京海洋大学)

キーワード:物理探査, 海底地形変化, 探査アレイ評価

深海域での一般的な反射法地震探査は大規模なものが多く、局地的で小規模な探査にはコストや解像度の面から必ずしも適当でない場合がある。しかし今後はAUVを用いた海底付近での地震探査など、探査のための発震源のタイプが多様化してくることから、受振アレイも様々なアレイを検討する必要がある。そこで本研究では、海域での効率的な探査を実現するため、その前段階として、弾性波有限差分法(Larsen,2000)を用いた波動場シミュレーションを使用し海域での地震探査アレイの配置および形状についての特性評価を行った。一般的な海面発振-海面受振の地震探査アレイではだけではなく、海底に設置した場合や鉛直方向の受振アレイ、海底下(鉛直・水平ボアホール)の受振アレイについても検討した。探査対象は、水深150mにある落差6mの階段状の海底地形およびその地下構造の変化とした。海底地形変化のモデルは、北海のEkofisk fieldにおいて観測された地盤沈下(N. B. Nagel, et al 2001)を参照して作成した。海底地形変化を想定した2次元構造モデルのサイズは、水平方向1000m、鉛直方向300mで、水深150mの海底である。正方グリッドの分割間隔は0.2m、速度構造(Vp, Vs)、減衰構造(Qp, Qs)密度構造(ρ)のパラメータを設定した。次に複数の探査アレイを構成した。震源には、中心周波数100Hz、P波等方放射型の震源を設定し、送信波形はリッカーウェーブレットを使用した。受振器は、測線上に各50個設置した。このモデルにおいて弾性波有限差分法(Larsen,2000)を用いた波動場シミュレーションを行なった。得られた探査アレイごとの地震波形記録を比較し、受振アレイによる観測波動場の特徴を調べた。
波動場シミュレーションでは、震源位置6パターン、受振器位置9パターンの全54通りの地震波形記録をまとめた。その結果、ターゲットを二次波源としたP波(以降X相とよぶ)とS波・境界波(以降Y相とよぶ)が、海底地形変化を検出するための注目すべき波相であることがわかった。X相は、すべての地震探査アレイで観測されたが、振幅が小さくノイズにまぎれてしまう可能性がある。Y相は、海水中の受振器では観測されないことがわかった。次に、X相とY相の振幅についてまとめる。X相では、震源の位置が海底地形上段側よりも海底地形変化下段側で起振した場合の方が、大きな振幅をもつ。最大振幅は、海底発振で発生した境界波によるX相が、他の場合のX相と比べ約4~20倍の振幅をもっていた。Y相は全体的に、X相にくらべ大きな振幅をもっていた。海底面に設置している受振器で最大振幅が観測された。しかし、海底発振の場合、最大振幅をもつと考えられるが、時間領域の観測記録上では波群が重なり、波相の分離ができなかった。これはターゲットと震源の距離が近すぎたためと考えられ、観測においては収録時間を考慮しつつも、震源位置とターゲットの距離をある程度離す必要があることがわかった。
水平方向の受振アレイでは、ターゲットを二次波源としているX相、Y相の中心から、海底地形変化部分の水平位置を推定することができることがわかった。ただ観測されるX相とY相の振幅が小さい場合が多いため、S/N比が小さくなる可能性がある。鉛直方向の受振アレイは、海中部分と地下部分にわかれるため、比較的大きい振幅をもつX相とY相を1つのアレイで観測することができた。また、海底地形変化の鉛直位置を推定することができた。S波や境界波の大きい振幅をもつ波群も観測できるため、S/N比も高くなると考えられる。ただ設置コストが高いことがあげられ、容易に移動させることができないこともあり、将来的な課題として挙げる。
以上の評価から、水平方向の地震探査アレイと鉛直方向地震探査アレイを1つずつ使用した探査アレイを提案する。水平方向の地震探査アレイを海面で曳航しながら広範囲からターゲットのあたりをつけ、より詳細な探査のために鉛直方向の受振アレイを用いる。鉛直方向の受振アレイを設置する前には、AUVを用いて海底面での発振を行う。大きな振幅をもつ境界波を用いることができるためより明確なX相が得られると考えられる。鉛直方向の受振アレイは、段差の上段側でターゲットから100m離れた位置に設置するが望ましい。鉛直方向の受振アレイによりS/N比の高い観測データを取得でき、海底地形の変化位置を鉛直方向に限定できるようになる。今後の課題としては、地形変化部分の形状や大きさを推定することがあげられ、周波数依存性を利用したターゲットの大きさ推定が有用と考えている。