日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG64] 海洋底地球科学

2015年5月28日(木) 09:00 〜 10:45 A05 (アパホテル&リゾート 東京ベイ幕張)

コンビーナ:*沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)、田所 敬一(名古屋大学地震火山研究センター)、石塚 治(産業技術総合研究所活断層火山研究部門)、土岐 知弘(琉球大学理学部)、高橋 成実(海洋研究開発機構地震津波海域観測研究開発センター)、座長:佐藤 暢(専修大学経営学部)、一瀬 建日(東京大学地震研究所)

09:00 〜 09:15

[SCG64-16] GPSデータを用いた南極大陸とオーストラリア大陸の形状の復元

田上 佑介1、*原田 靖1 (1.東海大学 海洋学部 海洋地球科学科)

キーワード:GPS, オーストラリア大陸, 南極大陸, 変形の復元

加藤ら(2012)では、国土地理院のF3解のデータを使い日本列島の地殻変動の精密
な可視化を行いその有用性を示し、次への課題として日本列島だけでなく世界中に設置さ
れているGPS設置点を活用することで、大陸の内部変動の可視化への可能性を示した。これを受け
て河合ら(2014)では、アフリカ大陸と南米大陸のGPS観測データを用いた大陸変形運動の可
視化を行い、その変動を過去に外挿することで大陸形状の復元を約1億5000万年前まで行った。
GPSで復元したデータと、GPSとは独立な古地磁気データにより推定された過去の大陸の形状を
比較する事で、約-5000万倍まではGPSの観測データを外挿しても大局的な大陸の変形運動と調
和的であると分かった。
 南極大陸の北側大陸棚と、それに対応するオーストラリア大陸南端大陸棚の現在の形状は、大陸
を過去の位置へ戻しても約600km程の大きな間隙があり、GPSの変動を考慮するとこの間隙が少
なくなるかどうかが重要である。そこで、本研究では南極大陸とオーストラリア大陸で-5000万倍の
大陸形状の復元を試みることとした。

 本解析の結果、オーストラリア大陸の約5000万年前の形状は大陸の南部の海岸が現在の形状
より東西に約300kmほど広がり、大陸全体が南北に約300kmほど収縮した。
 南極大陸の約5000万倍の復元では、東経90度側の海岸線が大きく膨らむような変動を見せ
南極大陸の直径が約400km程伸展した。そして、プレートの相対運動のデータを用いてオイラー回
転を行い南極大陸とオーストラリア大陸の大陸棚の形状の一致度を確認した結果、現在の形状より
-5000万倍で復元した大陸棚の形状の方が間隙が狭くなり一致度が良くなることが分かった。
 以上の事からGPSデータを過去に外挿し大陸の形状の復元を行う手法は、海岸線(正確には大
陸棚の等深線)の一致度の解析の結果、南極大陸とオーストラリア大陸においても5000万倍まで
は有効であるという事が強く示唆される。このためGPSデータは5000万年スケールの大局的な大
陸の変形運動を含包していると考えられる。

下図は変形を考慮した各大陸の形(左)と変形を考慮しない各大陸の形(右)
黒線が海岸線、赤線と緑線はそれぞれの大陸の3000mの等深線