日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD23] 重力・ジオイド

2015年5月27日(水) 16:15 〜 18:00 102A (1F)

コンビーナ:*西島 潤(九州大学大学院 工学研究院 地球資源システム工学部門)、青山 雄一(国立極地研究所)、座長:西島 潤(九州大学大学院)、宮崎 隆幸(国土交通省国土地理院)

17:51 〜 17:54

[SGD22-P01] 同一ビーム内の複数静止衛星のVLBI観測について(その2)

ポスター講演3分口頭発表枠

*近藤 哲朗1市江 泰英2佐藤 英治2 (1.情報通信研究機構、2.スカパーJSAT株式会社)

キーワード:ブイエルビーアイ, 静止衛星

1.はじめに
VLBIによる静止衛星観測において同一ビーム内に複数の静止衛星が入った場合、今までの処理システムでは個々の衛星を分離することができなかった。そこで、こうした場合においても個々の衛星ごとの遅延データが得られるよう相関処理ソフトウェアおよび遅延決定ソフトウェアを改修した。室内実験および実観測データを用いて改修結果の検証を行い期待通りの結果が得られることを確認した。

2.ソフトウェアの改修
NICT開発のソフトウェア相関器(K5相関処理ソフトウェア)は測地VLBIシステム用に開発されたソフトウェア相関器であり、測地VLBIにおいて受信する準星などのような白色雑音電波の処理を前提としたものであり、静止衛星からの電波のような複数の狭帯域信号を受信した場合には広帯域白色雑音信号を受信した場合の相関関数とは異なる性質を有した相関関数となる。遅延時間を決定する際の「遅延分解関数」と呼ばれる関数は櫛の歯状となり、単一の静止衛星の場合は得られる遅延は測地VLBIにおけるいわゆる「バンド幅合成」の場合と同様なアンビギュィティを伴った遅延となる。複数の静止衛星からの信号を受信した場合は遅延分解関数は複数の衛星に対する関数が合成されたものとなり分離が不可能である。しかしながら、衛星ごとに信号の周波数が異なっていれば相関処理時または遅延分解関数計算時にフィルタリングにより単一の静止衛星からの信号だけを抜き出すことにより衛星ごとに分離することが可能となる。そこで相関処理ソフトウェアおよび遅延決定ソフトウェアにフィルタリング処理機能を実装し、更に遅延決定ソフトウェアには櫛の歯状となった遅延分解関数の包絡線補間による遅延決定機能も実装した。
 相関処理時のフィルタリングの実装法として時系列上でのフィルタリングと周波数領域でのフィルタリングの2種が可能である。ここでは実装が容易で簡単に特性を変更できる周波数領域でのフィルタリングを採用した。遅延決定ソフトウェアにおけるフィルタリングも周波数領域において行なっている。

3.機能の検証
 改修されたソフトウェアが期待通りの機能を有しているかどうかの検証を行うために室内実験データおよび実観測データを使用して処理を行なった。室内実験は4台の信号発生器(SG)を2台ずつペアで用いて2つの静止衛星(それぞれから2周波数で送信)を模した。SG4台からの信号を混合してサンプラーの4ch入力の内の2つのチャンネルに入力するがそれぞれのチャンネル間のケーブル長を2つの静止衛星を模したSGペアの間で差を持たすことにより衛星間の遅延を与えた。こうして得られたサンプリングデータを相関処理時にフィルタリング処理を行う方法と遅延決定時にフィルタリング処理を行う方法で処理した。その結果どちらの方法でもケーブル長差から期待される衛星ごとの遅延が求められた。実観測データにも適用した結果良好な結果が得られることが確認された。更に実データを用いて包絡線補間法による遅延決定結果と補間なしの場合とを比較した。その結果、両者の差に数100nsecにおよぶ日変動が見られたが、補間なしとありの場合でどちらの方法が良いのかを評価するためには実際に軌道決定まで行う必要がある。

4.まとめ
複数の静止衛星からの信号が受信されたデータからそれぞれの衛星ごとの遅延を決定するために、相関処理ソフトウェアおよび遅延決定ソフトウェアにフィルタリング機能を実装した。更に遅延決定ソフトウェアには櫛の歯状となった遅延分解関数の包絡線補間から遅延を決定するオプションも実装した。改修したソフトウェアを室内実験および実観測データに適用した結果、期待通りの結果が得られることが確認された。遅延決定ソフトウェアに実装した包絡線補間法に関してはその結果が妥当かどうかは今後の軌道決定成果に委ねられる。