日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GL 地質学

[S-GL37] プレート収束境界における堆積盆形成テクトニクスの新たな展望

2015年5月24日(日) 14:15 〜 16:00 103 (1F)

コンビーナ:*伊藤 康人(大阪府立大学大学院理学系研究科物理科学専攻)、高野 修(石油資源開発株式会社技術研究所)、座長:伊藤 康人(大阪府立大学大学院理学系研究科物理科学専攻)、高野 修(石油資源開発株式会社技術研究所)

14:15 〜 14:30

[SGL37-01] 宮城県~福島県沖阿武隈リッジと周辺海域の地質構造および東北日本弧の地体構造との関連性

*荒戸 裕之1千代延 俊1 (1.秋田大学 国際資源学部)

キーワード:阿武隈リッジ, 宮城県沖, 福島県沖, 東北日本弧

阿武隈リッジは,北海道中軸部から下北・北上沖を経て常磐沖へとつづく前弧堆積盆地の最南部において,その東縁を画する隆起帯である.その構造地質学的な特徴や形成機構は,東北日本弧の地体構造および日本海北部の形成過程を議論するうえで重要な情報となるであろう.その議論を進めるために,阿武隈リッジならびに周辺海域に伏在する断層群や褶曲構造,削剥面の分布の特徴を理解するとともに,地表で認められた東北日本弧の地体構造が大陸棚~陸棚斜面にどのように延長・連続するかを明らかにする必要がある.
そこで発表者等は,基礎物理探査「阿武隈リッジ南部3D」,基礎物理探査「南三陸~鹿島沖」の再解釈を進めている.基礎物理探査「阿武隈リッジ南部3D」は,2009年,福島県沖海域における石油および天然ガスの探査を目的として経済産業省によって収録・処理された約2,000km2の三次元地震探査である.基礎物理探査「南三陸~鹿島沖」は,1986年,当時の通商産業省によって収録・処理された測線長約2,500kmの二次元地震探査である.
さらに当該海域には,通商産業省によって掘削された基礎試錐「気仙沼沖」,「相馬沖」および「常磐沖」のほか,民間企業による試掘井も掘削されている.1984年に掘削された基礎試錐「気仙沼沖」では厚い上部白亜系が掘り抜かれ, 2,027mの掘止深度で前期白亜紀の花崗岩を確認した.1990年に掘削された基礎試錐「相馬沖」では新第三系,古第三系を掘り抜き,2,450m以深掘止3,500mの区間で上部白亜系を確認した.1991年に掘削された基礎試錐「常磐沖」では掘止深度3,170mまでの区間で,厚い下部中新統と上部白亜系を掘進した.これらの坑井の地質学的な情報は,地震探査データ解釈における年代層序学的および岩相層序学的なコントロールとなる.
これまでの検討の結果,i) 当該前弧堆積盆地は横ずれ成分を有する幾筋かの構造線によって分断されたこと,ii) したがって,南北性の伸長方向を有する単純な形態をもつわけではないこと,iii) その構造線の性格には不明の点も多いが,その発達位置および方向性からみて,東北日本の陸域で確認されている構造線や地質学的なギャップに連続する可能性があること,ならびにiv) 阿武隈リッジでは複数のグループに分類可能な多数の断層群が認められており,それらは各地質時代における応力場の変遷を記録している可能性があることが明らかになってきた.