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[SMP43-P15] 別子地域三波川帯瀬場エクロジャイト質塩基性片岩中の泥質片岩の変成P-T経路
キーワード:三波川帯, エクロジャイト, P-Tシュードセクション, ざくろ石, 別子, 瀬場
別子地域三波川変成帯に分布する瀬場エクロジャイト質塩基性片岩は大部分は塩基性片岩であるが,一部に泥質片岩及び珪質片岩の薄層を挟在する.塩基性片岩緑れん石角閃岩相の鉱物組み合わせを示すが,まれにエクロジャイト相の鉱物組み合わせが認められる.エクロジャイトの変成作用については,これまでに詳しく研究されてきた(例えば,Aoya, 2001; Kabir and Takasu, 2010).Kabir and Takasu (2010)は, これらのうち大野谷地域に分布するエクロジャイトについて, 第1高圧変成作用(低温エクロジャイト相),第2高圧変成作用(高温エクロジャイト相), 狭義の三波川変成作用の3回の高圧変成作用を識別した.ECL相のピーク温度圧力は,第1高圧変成作用がT:530‐590℃,P:19-21 kbar,第2高圧変成作用がT:630‐680℃,P:20-22 kbarである.
今回の研究では瀬場エクロジャイト質塩基性片岩中のエクロジャイトと互層する泥質片岩の変成作用を明らかにした.組織と構成鉱物の化学組成より,この泥質片岩の変成作用は,1)先駆的変成作用,2)第1高圧変成作用,そして3)第2高圧変成作用の3回の変成イベントに区分できる.1)先駆的変成作用イベントは斑状変晶ざくろ石のコアに含まれる包有物であるNa-Ca~Ca角閃石(タラマ閃石,パーガス閃石,Mgホルンブレンドなど),白雲母(Si: 6.05-6.13)で特徴づけられる.変成条件は緑れん石角閃岩相から角閃岩相が推定される.2)第1高圧変成作用イベントの昇温期変成作用は緑れん石青色片岩相から緑れん石角閃岩相を経てエクロジャイトに至る変成作用を示す.昇温~ピークの変成条件を明らかにするため,MnNCKFMASHOモデルシステムにおいてシュードセクションと組成等値線(Connolly, 1990, 2009)を計算し,昇温期の460 ℃,8 kbarからピークの600-640 ℃,19.5-21.5 kbar(エクロジャイト相)の変成条件を明らかにした.ピークの後の降温期変成作用はNCKFMASHOモデルシステムを用い,角閃石と曹長石の等値線の交点より510-520 ℃,9.5-10 kbarの条件が得られた.降温期変成作用はほぼ等温減圧の変成経路を示し,Aoya (2001)が示したような,圧力ピークの後,減圧しながらの温度上昇(温度ピーク)という変成経路は認められなかった.3)第2高圧変成作用イベントは,コアが藍閃石,マントルがバロワ閃石,リムがエデン閃石である顕著な累帯構造を示す角閃石によって昇温,ピーク,降温の変成作用が特徴づけられる.また,コアの藍閃石がバロワ閃石と曹長石からなるシンプレクタイトを包有することは,藍閃石の晶出の前にエクロジャイト変成イベントのオンファス輝石が降温変成によってシンプレクタイトを形成した後,藍閃石が形成されたと考えられる.
エクロジャイト相変成作用の前の緑れん石角閃岩相から角閃岩相の先駆的変成作用は,サブダクションの開始時にまだ冷却されていないハンギング・ウォール側からの熱の供給によりおこったと考えられる.その後,サブダクションの継続に伴うハンギング・ウォールの冷却によるエクロジャイト相に至る高圧型変成作用(大野谷のエクロジャイトには2回のエクロジャイト相変成作用が認められる)がおこった.最後に,エクロジャイト岩体が一度地表近くにまで上昇した後,岩体周囲の岩石とともに狭義の三波川変成作用を受けたと考えられる.
今回の研究では瀬場エクロジャイト質塩基性片岩中のエクロジャイトと互層する泥質片岩の変成作用を明らかにした.組織と構成鉱物の化学組成より,この泥質片岩の変成作用は,1)先駆的変成作用,2)第1高圧変成作用,そして3)第2高圧変成作用の3回の変成イベントに区分できる.1)先駆的変成作用イベントは斑状変晶ざくろ石のコアに含まれる包有物であるNa-Ca~Ca角閃石(タラマ閃石,パーガス閃石,Mgホルンブレンドなど),白雲母(Si: 6.05-6.13)で特徴づけられる.変成条件は緑れん石角閃岩相から角閃岩相が推定される.2)第1高圧変成作用イベントの昇温期変成作用は緑れん石青色片岩相から緑れん石角閃岩相を経てエクロジャイトに至る変成作用を示す.昇温~ピークの変成条件を明らかにするため,MnNCKFMASHOモデルシステムにおいてシュードセクションと組成等値線(Connolly, 1990, 2009)を計算し,昇温期の460 ℃,8 kbarからピークの600-640 ℃,19.5-21.5 kbar(エクロジャイト相)の変成条件を明らかにした.ピークの後の降温期変成作用はNCKFMASHOモデルシステムを用い,角閃石と曹長石の等値線の交点より510-520 ℃,9.5-10 kbarの条件が得られた.降温期変成作用はほぼ等温減圧の変成経路を示し,Aoya (2001)が示したような,圧力ピークの後,減圧しながらの温度上昇(温度ピーク)という変成経路は認められなかった.3)第2高圧変成作用イベントは,コアが藍閃石,マントルがバロワ閃石,リムがエデン閃石である顕著な累帯構造を示す角閃石によって昇温,ピーク,降温の変成作用が特徴づけられる.また,コアの藍閃石がバロワ閃石と曹長石からなるシンプレクタイトを包有することは,藍閃石の晶出の前にエクロジャイト変成イベントのオンファス輝石が降温変成によってシンプレクタイトを形成した後,藍閃石が形成されたと考えられる.
エクロジャイト相変成作用の前の緑れん石角閃岩相から角閃岩相の先駆的変成作用は,サブダクションの開始時にまだ冷却されていないハンギング・ウォール側からの熱の供給によりおこったと考えられる.その後,サブダクションの継続に伴うハンギング・ウォールの冷却によるエクロジャイト相に至る高圧型変成作用(大野谷のエクロジャイトには2回のエクロジャイト相変成作用が認められる)がおこった.最後に,エクロジャイト岩体が一度地表近くにまで上昇した後,岩体周囲の岩石とともに狭義の三波川変成作用を受けたと考えられる.