日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-VC 火山学

[S-VC46] 火山噴火のダイナミクスと素過程

2015年5月24日(日) 16:15 〜 18:00 304 (3F)

コンビーナ:*小園 誠史(東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻)、鈴木 雄治郎(東京大学地震研究所)、奥村 聡(東北大学大学院理学研究科地学専攻地球惑星物質科学講座)、座長:鈴木 雄治郎(東京大学地震研究所)

17:15 〜 17:30

[SVC46-05] ストロンボリ火山の火道内マグマ圧力の時空間分布の推定

*川口 亮平1西村 太志2青山 裕3山田 大志3三輪 学央1藤田 英輔1Riccardo Genco4Giorgio Lacanna4Maurizio Ripepe4 (1.防災科学技術研究所、2.東北大・理、3.北大・理、4.フィレンツェ大)

キーワード:傾斜変動, ストロンボリ式噴火, 圧力源

近年,爆発的噴火に伴う傾斜変動記録が火口極近傍で観測され,噴火直前に発現する山体の膨張といった現象が捉えられるようになってきた.これらのデータを解析することで,噴火直前のマグマ上昇過程を定量的に把握できるようになると期待されている.我々は2014年5月末よりイタリア・ストロンボリ火山の火口極近傍に傾斜計と広帯域地震計を設置し臨時観測を行った.この観測により得られた噴火に先行する傾斜変動記録から噴火直前の火道内マグマ圧力の時空間変化の推定を行ったので報告する.
 ストロンボリ火山の火口群から距離500 m 以内の3点(RFR,PZZ,CPL)に傾斜計と1点(RFR)に広帯域地震計を50cm程度の深さに設置した.これらの信号はサンプリング周波数100 Hzで連続収録した.3観測点全てで噴火に伴う傾斜変動が記録された7月中旬までの記録から,噴火発生の5分前から他の噴火によるシグナルが無く,噴火に伴う地震動に先行して加速的な傾斜変動が見られる26個のイベントを抽出してその特徴を調べた.その結果,噴火に伴う地震動発生の数分前から概ね火口方向の隆起を示す傾斜変動が始まり,地震動の発生までに100-400 nano radian 程度の傾斜変動の増加が全ての観測点で記録されることがわかった.また,噴火の5分前からの傾斜ベクトルは地震動の約5秒前からRFR観測点で反時計回り,CPL点で時計回りにベクトルの向きが変化していることがわかった.これらの特徴は解析した26個のイベント中22個のイベントで認められる.これら22個のデータを地震動の発生時刻を基準として重合し,傾斜ベクトルの方位角を調べると,RFR点は162.5°方向の隆起が地震動の発生時から5秒前に165.5°に,CPL点は87°から77°に変化した.また,PZZ点は常に113°方向の隆起を示した.
観測された傾斜ベクトルの特徴から,火道内部の圧力源の時空間分布を推定する.NE火口の直下に250 mの鉛直火道を設置し,境界要素法によってストロンボリ火山の地形を取り入れて山体変形を計算した.25 mの区間ごとに一定圧力を与えて計算した結果,圧力源の深さの違いによって地表に現れる傾斜ベクトルの方向と観測点間の振幅比が顕著に変化することがわかった.観測データと数値計算結果の比較によって,CPL点の約10°の方位角の変化を説明するためには,圧力源の重心が約50 mほど深くなる必要があることがわかった.また,RFR点とPZZ点の方位角を説明するためには,噴火に伴う地震動発生の5秒前より以前の圧力源の深さは火口下50-100 m程度であることがわかった.これらのことから,ストロンボリ式噴火の数分前から火口からの深さ50-100 m程度の場所で圧力の増加が始まり,噴火の直前に圧力源は火口下約150 m程度まで深くなっていると考えられる.このような火道内圧力源の時空間分布の特徴は今後ストロンボリ式噴火のメカニズムを理解する上で重要であると考えられる.