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[SVC45-P29] 阿蘇火山2014年噴火前後の地殻変動について
キーワード:阿蘇火山, 2014噴火, 地殻変動
阿蘇火山では、1989年-1993年の噴火以来、約20年ぶりとなるマグマ噴火が2014年11月下旬に発生した。京都大学火山研究センターでは、1987年以降、中岳第一火口から南西に約1km離れた地点の地下30mにある観測坑道で地震観測や地殻変動観測などを実施してきた。本発表では、伸縮計および水管傾斜計によってとらえられた噴火前後の地殻変動について報告する。
阿蘇火山では、1993年から2012年までの水準測量により、中岳火口の西約4kmの草千里を中心とする沈降が検出されていた。この沈降量から推定されるマグマだまりの収縮量は、火口からの火山ガス放出によるマグマの消費量とオーダーでは一致する。2008?2012年の沈降量は2004-2008年の沈降量の6割程度であり、このことは、草千里下のマグマだまりに注入するマグマ量の増加を示唆する。2004年から開始されたGPS観測でも同様な変動が捉えられていた。
このような状況のもと、2013年4月より中岳第一火口の湯だまり(火口湖)の湯量が減少しはじめ、2013年9月には、地震活動の活発化とガス放出量の急増が観測された。 9月23日より活発化した地震活動は、24および25日に2000回を超える火山性地震が観測されるに至り、噴火警戒レベルが2に引き上げられた(気象庁、2013)。この地震活動に先立ち、23日の15:00頃より歪み変化が観測されはじめた。この直前に、長周期地震活動の活発化をともなう明瞭な歪み変化と傾斜変化を火口近傍でとらえた。火口方向に設置された伸縮計で観測された変動は当初伸びを示していたが、24日00:00頃に縮みへと逆転し、26日06:00頃にピークとなった(1マイクロstrain)。同時に火口方向が沈降する傾斜変化が観測されており、これらの変動は中岳火口直下のクラック状火道(Yamamoto et al., 1999)の開口が深部から浅部へ進行したことで引き起こされたものであると解釈される。
同じような歪変化と傾斜変化が2014年1月と7月に観測された。これら3回の変動はいずれも長周期微動の活発化と二酸化硫黄放出量の一時的な増加を伴っており、増加した火山ガスがクラックを開口させ、クラック周辺部の状態変化を引き起こしたと考えることができる。
その後、2014年7月以降には草千里をはさむ複数のGPS基線で伸びが観測され始めた。10月下旬から活発化した長周期微動は、周期2秒の連続微動の活発化をともなった。この連続微動は伸縮計にも記録されるほどの振幅をもつ。
2014年11月25日の午前6時台に火口方向の伸縮計で急激な伸びが観測されはじめた。降灰の報告は同日の7時台であり、この変動が噴火直前あるいは噴火中のものである可能性が高い。
阿蘇火山2014年噴火は、マグマ噴出の消長をともない2015年2月現在も継続している。1月5日から7日にかけては火口方向上がりの傾斜と伸びが観測され、その直後にマグマ噴出が活発化した。観測された面積歪と傾斜量の比を用い、茂木ソースの水平位置をクラック上に仮定し、その深さを求めるとおよそ1.3kmとなり、1994年に頻発した水蒸気爆発直前の膨張源(Kaneshima et al., 1996, Kawakatsu et al., 2000)とほぼ一致していることが分かった。
阿蘇火山では多雨の時期に、雨水の流入により火口が閉塞し水蒸気爆発が発生する、という事例が多発してきた。今後も地殻変動の観測を継続し、これらの水蒸気爆発にいたる過程の解明につなげていきたい。
阿蘇火山では、1993年から2012年までの水準測量により、中岳火口の西約4kmの草千里を中心とする沈降が検出されていた。この沈降量から推定されるマグマだまりの収縮量は、火口からの火山ガス放出によるマグマの消費量とオーダーでは一致する。2008?2012年の沈降量は2004-2008年の沈降量の6割程度であり、このことは、草千里下のマグマだまりに注入するマグマ量の増加を示唆する。2004年から開始されたGPS観測でも同様な変動が捉えられていた。
このような状況のもと、2013年4月より中岳第一火口の湯だまり(火口湖)の湯量が減少しはじめ、2013年9月には、地震活動の活発化とガス放出量の急増が観測された。 9月23日より活発化した地震活動は、24および25日に2000回を超える火山性地震が観測されるに至り、噴火警戒レベルが2に引き上げられた(気象庁、2013)。この地震活動に先立ち、23日の15:00頃より歪み変化が観測されはじめた。この直前に、長周期地震活動の活発化をともなう明瞭な歪み変化と傾斜変化を火口近傍でとらえた。火口方向に設置された伸縮計で観測された変動は当初伸びを示していたが、24日00:00頃に縮みへと逆転し、26日06:00頃にピークとなった(1マイクロstrain)。同時に火口方向が沈降する傾斜変化が観測されており、これらの変動は中岳火口直下のクラック状火道(Yamamoto et al., 1999)の開口が深部から浅部へ進行したことで引き起こされたものであると解釈される。
同じような歪変化と傾斜変化が2014年1月と7月に観測された。これら3回の変動はいずれも長周期微動の活発化と二酸化硫黄放出量の一時的な増加を伴っており、増加した火山ガスがクラックを開口させ、クラック周辺部の状態変化を引き起こしたと考えることができる。
その後、2014年7月以降には草千里をはさむ複数のGPS基線で伸びが観測され始めた。10月下旬から活発化した長周期微動は、周期2秒の連続微動の活発化をともなった。この連続微動は伸縮計にも記録されるほどの振幅をもつ。
2014年11月25日の午前6時台に火口方向の伸縮計で急激な伸びが観測されはじめた。降灰の報告は同日の7時台であり、この変動が噴火直前あるいは噴火中のものである可能性が高い。
阿蘇火山2014年噴火は、マグマ噴出の消長をともない2015年2月現在も継続している。1月5日から7日にかけては火口方向上がりの傾斜と伸びが観測され、その直後にマグマ噴出が活発化した。観測された面積歪と傾斜量の比を用い、茂木ソースの水平位置をクラック上に仮定し、その深さを求めるとおよそ1.3kmとなり、1994年に頻発した水蒸気爆発直前の膨張源(Kaneshima et al., 1996, Kawakatsu et al., 2000)とほぼ一致していることが分かった。
阿蘇火山では多雨の時期に、雨水の流入により火口が閉塞し水蒸気爆発が発生する、という事例が多発してきた。今後も地殻変動の観測を継続し、これらの水蒸気爆発にいたる過程の解明につなげていきたい。