日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT30] UAVが拓く新しい世界

2015年5月25日(月) 16:15 〜 18:00 101A (1F)

コンビーナ:*近藤 昭彦(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、井上 公(防災科学技術研究所)、長谷川 均(国士舘大学文学部地理学教室)、齋藤 修(茨城大学)、座長:近藤 昭彦(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)

16:45 〜 17:00

[HTT30-02] 自然災害調査・研究のための小型固定翼UAV:その必要性と課題

*井上 公1福井 弘道2杉田 暁2 (1.防災科学技術研究所、2.中部大学国際GISセンター)

キーワード:自然災害, 無人機, 固定翼, 安全性

現在、各種災害の調査・研究を始め、環境・農業調査、土木・建設調査、報道等にマルチコプターが多用されはじめており、今後数年で更に普及が進むことが予想される。一方マルチコプターは、不慣れな運用者による飛行ルートの設定ミスや状況判断の誤り、GPS信号強度の低下、バッテリーや機体の不具合など、様々な要因によって、意図せず墜落する可能性が常にある。我々がこれまでマルチコプターを調査研究に活用してきた経験では、墜落の可能性を100フライトに1回以下に減らすことは、少なくとも新規のユーザーにとっては容易ではない。したがって今後、数多くのユーザーがマルチコプターを利用するようになれば、毎年少なからぬ数の機体が墜落し、その一部は人や車や住宅に衝突し、さらにその一部は相手に大きな怪我や損害を負わせることになる。飛行させる場所が人の殆ど居住していない山間地等であれば事故になる可能性は低いが、居住地の場合は危険性を無視することはできない。我々の今後のUAVの主な利用目的のひとつは災害リスク評価・災害監視・災害対応であり、災害を対象とする以上、対象地域には人が住んでいる。したがって事故の軽減策は最優先課題である。
 安全対策には、法令による無秩序な利用の抑制、機体メーカーによる飛行制御装置の改良や安全装置の開発と商品化、ユーザーによる機材や電池の管理、正しい飛行プランの作成、現場での適確な状況判断などがある。我々が今回それらに加えて提案する対策は、マルチコプターではなく小型固定翼機を使うことである。ここでいう小型固定翼機とは、翼長1~2メートルの発泡スチロール製の電動機体である。我々は現在、いろいろな半完成品の機体にAPMを組み込んだものや、完成品の3DR社製Aeroなど、複数の機体を購入・製作し飛行試験を行っている。またsenseFly社eBeeを海外で使用して実績を積んでいる。固定翼機もマルチコプター同様に、機材の不具合や人為的ミスによって墜落することに変わりはない。しかし機体が柔らかな発泡スチロールでできており、バッテリーやカメラのような重く固い部品は機体内部に装着でき、モーターとプロペラは後ろ向きに取り付けられているため、墜落して人や物に衝突しても、相手に大きな傷を負わせる可能性が小さい。機体全体が衝撃吸収材でできているという、この単純なメカニズムによる安全性が、固定翼機の最大の利点である。また、固定翼機は飛行速度が大きく、翼の揚力で浮上しているため、マルチコプターに比べると同じ容量のバッテリーで数倍の時間と距離を飛行できる。山間地など、墜落時の危険性が大きな問題とはならない調査においては、むしろこちらが最大の利点となる。
 一方、固定翼機にはデメリットもある。一番のそれは着陸の難しさである。離陸は手投げ発進ができ、技術的な難しさも場所の制約もあまりない。離陸後、手早く自動操縦に切り替えれば、飛行にも困難はない。しかし着陸は、自動であれ手動であれ、機体を減速してピンポイントに導くことが難しく、広い平地も必要となる。手動操縦も、手を離せば静止してくれるマルチコプターよりは難しい。これらは常に前進していなければ失速・墜落してしまう固定翼機の宿命である。しかし、固定翼機も自動着陸機能の性能が向上しつつある。大きなネットを用いることにより、離着陸場所の制約を減ずることもできる。また手動操縦もフライトコントローラーの高性能化で、手を離せば一定高度で安定して直進し、スイッチひとつで同じ場所を旋回させることもできる。したがって、固定翼機のいつくかの課題は徐々に解決される方向にあり、墜落時の安全性と、10キロメートルを超える遠距離・広域調査を可能とする飛行性能のメリットは、デメリットを補って十分に余りある。特に居住地においては安全性が最優先課題であり、墜落しないマルチコプター、または墜落して人に当たっても怪我をさせないマルチコプターが手に入らない限り、発泡材でできた固定翼機を使用すべきである。