14:30 〜 14:45
[ACG30-14] 衛星観測によるナミビア季節湿地における高時空間分解能の貯水量・蒸発量推定
キーワード:半乾燥地, 季節湿地, database unmixing, レーザー測量
半乾燥地帯に分類される, アフリカ・ナミビア共和国北部においては, 雨季になると広範な季節湿地帯が形成される. なかでも, 農家に隣接した窪地に現れる半径数十から100 m 程度の季節性の小湿地 (ondombe) は, 重要な水資源として認識されてきた. 現在のところ, 現地ではトウジンビエの天水栽培が一般的な営農の形式であるが, 食料問題緩和のために, 当該小湿地に稲作を導入することが近年期待されてきている.
稲作を持続可能に導入するためには, 小湿地における水資源・水収支の把握がひとつの重要な課題となっている. しかし, 小湿地は広域に分布しており, なおかつ湛水状態が数日スケールで変動するため, モニタリングが困難とされてきた. そこで本研究では, 現地の小湿地における水資源・水収支の把握に向けて, 衛星リモートセンシングと地上測量を統合利用することで, 小湿地の時系列の貯水量と蒸発量の推定を行った.
季節湿地の現れる, ナミビア北部からアンゴラ南部にまたがる地域 (南緯16°29’43”から19°05’20”,東経14°24’59”から17°00’53”) を衛星解析の対象地域とした. また, その中でテストサイトとして5.4 km × 5.4 km の範囲を3箇所を設けて, 重点的に衛星解析と現地調査を行った. まず3つの異なる種類の衛星データ (AMSR-E及びAMSR2, MODIS, Landsat ETM+) を2002年から2013年まで用意し, 独自開発した「データベースミクセル分解法 (database unmixing; Mizuochi et al., 2014, Remote Sensing)」で組み合わせることにより, 高時空間分解能でテストサイトにおける時系列の湛水面積を把握した. 続いて, 現地の代表的な小湿地を11地点設定し, レーザー測距器による地形測量を行うことで, 小湿地の湛水面積と貯水量の関係を表す回帰モデルを作成した. これを衛星解析の結果と組み合わせ, テストサイトにおける時系列の貯水量推定を行った. 更に, 衛星データから得られた日射量の情報をもとに, テストサイトにおける小湿地からの蒸発量を推定した. 最後に, これらをテストサイトで取得された降水量データとあわせて比較することで, 現地の水文学的特性を議論した.
湛水面積の把握においては, データベースミクセル分解法により, AMSR-E及びAMSR2 の25 km分解能から, Landsat ETM+の30 m 分解能まで空間分解能が向上した. また, 解析対象期間のうち, 用いたもとの Landsat ETM+の欠測・欠損を除く有効データの割合は1.8% 程度であったが , 本手法により88.5%まで向上し, 時間分解能においても大きな改善が見られた. 現地の地形測量の結果から, 湛水面積と貯水量の関係を表す110点のサンプルを得て, これに基づき回帰モデルを作成することができた. 衛星解析から得られた湛水面積と回帰モデルを組み合わせて, 小湿地の時系列の貯水量の推定値を2002年から2013年まで得ることができた. 貯水量の最大値や積算値は, その年の降水の規模を反映していた. 例えば「30 年に1 度の旱魃年」と言われた2012-2013 年の雨季は, 他の年の雨季に比べ貯水量が少なく, 逆に周辺河川の水位が過去最高を記録する大洪水が発生した2008 ? 2009 年の雨季には, テストサイトの最大貯水量・積算貯水量ともに大きくなっている様子が確認できた. また, 衛星データから得られた日射量をもとに計算した小湿地からの蒸発量と, テストサイトへの降水量のインプットを年積算値で比較した結果, 小湿地からの蒸発量はどのサイトでも, 降水としてサイトに流入する水量のうちおおむね数%から10%程度であった. このことから, 現地の水収支の把握には, 地下への水の浸透・及び小湿地以外の土壌からの蒸発を考慮する必要が大きいことがわかった.
本研究は, 広域にわたる季節湿地の貯水量や蒸発量を, 高時空間分解能で捉えるための一つの水文学的アプローチの提案でもある. 今後は, 現地における水資源・水収支を詳細に把握するため, 用いたアルゴリズムの改良や, 結果の検証についての更なる研究が望まれる.
稲作を持続可能に導入するためには, 小湿地における水資源・水収支の把握がひとつの重要な課題となっている. しかし, 小湿地は広域に分布しており, なおかつ湛水状態が数日スケールで変動するため, モニタリングが困難とされてきた. そこで本研究では, 現地の小湿地における水資源・水収支の把握に向けて, 衛星リモートセンシングと地上測量を統合利用することで, 小湿地の時系列の貯水量と蒸発量の推定を行った.
季節湿地の現れる, ナミビア北部からアンゴラ南部にまたがる地域 (南緯16°29’43”から19°05’20”,東経14°24’59”から17°00’53”) を衛星解析の対象地域とした. また, その中でテストサイトとして5.4 km × 5.4 km の範囲を3箇所を設けて, 重点的に衛星解析と現地調査を行った. まず3つの異なる種類の衛星データ (AMSR-E及びAMSR2, MODIS, Landsat ETM+) を2002年から2013年まで用意し, 独自開発した「データベースミクセル分解法 (database unmixing; Mizuochi et al., 2014, Remote Sensing)」で組み合わせることにより, 高時空間分解能でテストサイトにおける時系列の湛水面積を把握した. 続いて, 現地の代表的な小湿地を11地点設定し, レーザー測距器による地形測量を行うことで, 小湿地の湛水面積と貯水量の関係を表す回帰モデルを作成した. これを衛星解析の結果と組み合わせ, テストサイトにおける時系列の貯水量推定を行った. 更に, 衛星データから得られた日射量の情報をもとに, テストサイトにおける小湿地からの蒸発量を推定した. 最後に, これらをテストサイトで取得された降水量データとあわせて比較することで, 現地の水文学的特性を議論した.
湛水面積の把握においては, データベースミクセル分解法により, AMSR-E及びAMSR2 の25 km分解能から, Landsat ETM+の30 m 分解能まで空間分解能が向上した. また, 解析対象期間のうち, 用いたもとの Landsat ETM+の欠測・欠損を除く有効データの割合は1.8% 程度であったが , 本手法により88.5%まで向上し, 時間分解能においても大きな改善が見られた. 現地の地形測量の結果から, 湛水面積と貯水量の関係を表す110点のサンプルを得て, これに基づき回帰モデルを作成することができた. 衛星解析から得られた湛水面積と回帰モデルを組み合わせて, 小湿地の時系列の貯水量の推定値を2002年から2013年まで得ることができた. 貯水量の最大値や積算値は, その年の降水の規模を反映していた. 例えば「30 年に1 度の旱魃年」と言われた2012-2013 年の雨季は, 他の年の雨季に比べ貯水量が少なく, 逆に周辺河川の水位が過去最高を記録する大洪水が発生した2008 ? 2009 年の雨季には, テストサイトの最大貯水量・積算貯水量ともに大きくなっている様子が確認できた. また, 衛星データから得られた日射量をもとに計算した小湿地からの蒸発量と, テストサイトへの降水量のインプットを年積算値で比較した結果, 小湿地からの蒸発量はどのサイトでも, 降水としてサイトに流入する水量のうちおおむね数%から10%程度であった. このことから, 現地の水収支の把握には, 地下への水の浸透・及び小湿地以外の土壌からの蒸発を考慮する必要が大きいことがわかった.
本研究は, 広域にわたる季節湿地の貯水量や蒸発量を, 高時空間分解能で捉えるための一つの水文学的アプローチの提案でもある. 今後は, 現地における水資源・水収支を詳細に把握するため, 用いたアルゴリズムの改良や, 結果の検証についての更なる研究が望まれる.