日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 A (大気水圏科学) » A-CC 雪氷学・寒冷環境

[A-CC28] 雪氷学

2015年5月25日(月) 09:00 〜 10:45 201B (2F)

コンビーナ:*鈴木 啓助(信州大学理学部)、兒玉 裕二(国立極地研究所)、座長:鈴木 啓助(信州大学理学部)

09:00 〜 09:15

[ACC28-01] カーリング・ストーンのカールの大きさに対する自転角速度非依存性の問題

*対馬 勝年1森 克徳1 (1.富山大学)

カーリングストーンのカールの機構をめぐっては論議の絶えないところであるが,カールの大きさがストーンの初期自転角速度に依存しないようだという事実は衝撃的でその説明は難航を極めている。左回転を与えて滑らせれば左にカールし,右回転を与えて滑らせれば右へカールすることはよく知れていて,それを説明する学説も提案されている。問題は「カールの大きさと自転の速度の関係は少ないようだ」という事実をどう説明するのかである。たとえば,左右摩擦異方性に基づくカールの説明には,カールの説明はできても,カールの大きさは自転角速度に依存するはずだという疑問がつきつけられ,学説の信頼性が確立するにはいたっていない。カールの大きさが自転角速度に依存しないことを説明できる学説こそがカールの機構を説明する学説になるものと思われる。
 ストーン(外径0.3m,重さ200N) の湾曲した下面には幅6mm程度,直径120mm程度のリング状の平坦面があり,この部分(スリップバンド)がアイスシートのベブル(粒粒状の氷の突起)に接しながら滑っていく。ストーンには2m/s内外外の初速度と停止までに2~数回転する自転が与えられている。
本発表ではストーンを質点系とみなした運動解析やストーンをいくつかの素片に分解した素片運動解析などの結果から,ストーンに作用する拘束力を見出し,拘束力の方向が角速度を変えても変わらず,滑走時間を変えても変わらないことが見出された。つまり,自転によるストーンの傾き角度はある方向になるが,自転角速度を変えてもその方向は変わらないものと考えた。横ずれ(カールの大きさ)は傾いた方向に滑っていく並進運動から生ずる。傾くだけではカールを生じないが,傾きの方向に滑っていく(並進運動)によってカールが生ずる。傾いた方向に滑る(並進運動)ためにカールの大きさはあまり変わらないものと推測してみた。カールの大きさが自転の角速度に依存しないという事実については従来,納得のいく説明がなかったようであるから問題提起を兼ねて試論を紹介したい。