日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS23] ジオパーク

2015年5月25日(月) 14:15 〜 16:00 101B (1F)

コンビーナ:*尾方 隆幸(琉球大学教育学部)、渡辺 真人(産業技術総合研究所地質情報研究部門)、有馬 貴之(帝京大学 経済学部 観光経営学科)、平松 良浩(金沢大学理工研究域自然システム学系)、大野 希一(島原半島ジオパーク協議会)、藁谷 哲也(日本大学大学院理工学研究科)、植木 岳雪(千葉科学大学危機管理学部)、座長:尾方 隆幸(琉球大学教育学部)、平松 良浩(金沢大学理工研究域自然システム学系)

14:15 〜 14:30

[MIS23-01] 粗い粒子の多寡に応じたメガリップルの形成に関する風洞実験

*小玉 芳敬1廣田 静香2 (1.鳥取大学地域学部、2.鳥取銀行)

キーワード:メガリップル, 風洞実験, ポリプロピレン粒子, 砂面低下過程, 鳥取砂丘, 火山灰露出地

はじめに
砂丘や砂浜では,波長10cmほどの風紋(wind ripple)が観察される。風紋は風向きに直交する横列の微地形であり,風により時々刻々とその形を変える。風紋の中には,波長数10cm~数mに及ぶ「メガリップル(mega ripple)」の存在が知られている。Cornish(1897)やBagnold(1941)により,メガリップル形成には粗い粒子が不可欠であると指摘された。2013年以降,鳥取砂丘において波長が1mを超えるメガリップルが特定の場所で観察されるようになった。砂丘内の火山灰露出地では表流水による侵食が進み,ローム質の団粒状粗粒子が周辺の砂地に流出する。火山灰露出域の拡大に伴い砂地へ供給される粗粒子量が増え,このことがメガリップルを出現させた原因と考えられる。
メガリップルを風洞実験で再現した研究は,西山(2014)以外みあたらない。西山(2014)は,最大波長55cmのメガリップルを報告したが,その形態は野外のメガリップルには類似していなかった。西山(2014)が用いた粗い粒子は,実験装置の最大風速(15m/sec)では動きが悪い点が課題として指摘された。
本研究の目的は,幅が狭く深い風洞を新作することで最大風速を増し,また実験に用いる粗い粒子を選定し直すことで,野外に酷似したメガリップルを模擬することである。そしてメガリップルの形成条件や形成過程,形態・動態特性を解明することである。

実験装置・実験材料と実験方法
全長7.28 m,幅9 cm,深さ60 cmの透明アクリル製風洞実験装置を作製した。海岸飛砂を風洞床に一定の厚さで敷き,表面に粗い粒子を散布した。鳥取砂丘のローム質団粒状粒子は砂丘砂より大きくて軽いという特徴がある。そこで径4 mmの扁平なポリプロピレン楕円体粒子(比重0.9)を粗い粒子として選定した。この粒子の散布量を変えた一連の実験をふまえて,海岸飛砂を厚さ19 cmで敷き,粗い粒子の散布量を45 g/m,最大風速17.3 m/secの条件で40分間の実験を実施した。なお無給砂の実験であった。
5台のデジタルカメラを風洞全体の縦断面が写るよう設置し,1分おきに撮影して断面形態の変化を記録した。また,もう1台のデジカメで1分おきに上流から下流に向かって14枚の平面写真を撮影し,粗粒子の分級状態を記録した。これらの写真を張り合わせ,メガリップルへの形成過程を読み取り,砂床形の波長,波高などを計測した。

実験結果および考察
実験開始直後から形成が始まった砂床形の形態は,ポリプロピレン粗粒子の動き方の違いによりA型とB型の2種類に分けられた。A型は5 cm~10 cm間隔で粗粒子の帯状集積(幅5 cm~10 cm程)が出現し,この帯状集積区間は横列の縞模様をなし,その断面形態は風上側に急な侵食斜面を,粗粒子集積区間は風下側に緩く傾く斜面をなした。ちょうど風紋の線対称断面形に近かった。いっぽうB型は粗粒子が幅20 cm程で集積して,砂床形の峰とその下流側傾斜をなし,峰と峰の間は凹形の侵食形を示した。この波長は25 cm~1 mほどであった。いずれの型も粗粒子の集積区間が砂床形の峰部を形成した。
実験開始当初は波長の短いA型の砂床形が風洞全体に形成され,それらが互いに合体しながら波長を伸ばし,次第にB型へと変化した。 A型で最も速く移動した砂床形は,9 cm /minほどで流下した。実験開始から20分後にはA型の砂床形はほぼなくなり,その後B型の砂床形同士の合体が進行して波長を伸ばした。B型の平均流下速度は,4 cm/min前後とゆっくりであった。
40分間の実験で,最大波長115cm,波高7.4 cmのメガリップルが成長し,風洞全体にわたり平均波長74.5 cm,平均波高4.3 cmで凹形のメガリップルが模擬された。粗い粒子が集積することでその下位の細砂は風食を免れ,いっぽう粗粒子の通過する区間では砂の侵食が進み,下に凸形円弧状のメガリップルが形成された。

おわりに
粗い粒子として径4 mmの扁平なポリプロピレン楕円体粒子(比重0.9)を用いた40分間の風洞実験で,最大波長115 cm,波高7.4 cmのメガリップルが成長し,風洞全体にわたり平均波長74.5 cm,平均波高4.3 cmで凹形のメガリップルが模擬された。実験条件は風速17 m/sec,粗い粒子の散布量を45 g/mとした無給砂実験であった。メガリップルは風により砂が侵食され砂面が低下する過程において,粗い粒子の集積区間で侵食が妨げられた結果,出現する砂床形である。本実験条件下では,4 cm/min程の速度で下流に移動した。

文献
Cornish, V., (1897)On the formation of sand dunes, Geographical Journal, 9, 278-309
西山貴仁(2014)メガリップルの形成過程を探る風洞実験. 平成25年鳥取大学地域学部卒業論文,18pp.