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[SCG15-02] 岩石破壊に伴う電波放射実験における金属接触雑音の排除
キーワード:岩石破壊, 電波放射, 金属接触, 雑音排除, 構成部品, 短絡
1.まえがき
以前、岩石破壊に伴って300MHzから22GHzの電波が、放射されることが観測された[1]。これは自然界で岩石が破壊する現象(地震や火山噴火)を、観測あるいは予知する手段として使える可能性があるので、注目を集めた[2][3]。
それに対し、実験系を構成する金属部が互いに当たって、電波が発生することが確認された[4] [5]。 これは金属が衝突・接触により帯電し、放電するためと思われる。従って、この信号は岩石破壊による電気現象と本質的に関係ないので、識別が必要である。
最近我々は、実験系の中で衝突・接触する構成要素を、電気的に短絡して再構築した、岩石破壊の過程で、要素が帯電し放電することを防ぐためである。本稿では、実験系の構成と実験結果について、報告する。
2.実験系
実験系は、岩石破壊するための破壊系と電気信号測定系より成る。破壊系は油圧プレス機の他、土台や天板、それらを接続する支柱、ボルト、ナットなどで構成される。これらすべての部品に、太さxx mm の撚り導線をねじ止めあるいははんだ付けして、結んだ。導線は撚り線で、その数は幅5mm厚さ1mmが24本、幅2mm厚さ0.5mmが9本である。
電気信号の測定系は、以前と同じである。1MHzと300MHz、2GHz、18GHzを扱う。各周波数帯に対応して、アンテナと低雑音増幅器およびフィルタを設ける。データ量はデジタル化して、データ格納する。その際、メモリを駆動始めるためのトリガ信号が、測定上重要である。
岩石試料は以前と同じく、硅岩と花崗岩、斑レイ岩、玄武岩を用いた。
3.測定結果
次のような結果を得られた。
(1)すべての岩石で、破壊と同時に、300MHzにおいて電波の放射が観測された。
(2)特に硅岩では、300MHzの他に18GHz成分も検出できた。これらは同期している。
(3)モルタルの円柱試料でも実験を行ったが、信号検出できなかった。
(4)岩石残滓あるいはブルーシート、ビニール被いなどが触れると、放射が観られた。それらの周波数帯は、300MHzが主で、次に2GHz、そして18GHzと続き、岩石破壊の場合と異なる。原因としては、互いに帯電・放電するためと推測される。
(5)時間を外すと外来雑音も入るが、それらは2GHzや18GHzの高い周波数成分は無い。
4.まとめ
破壊系の金属をすべて短絡して、不要放射を防いだ。それに対しすべての場合で観測されたので、岩石破壊から電波が放射することが確認された。
参考文献
[1] 牧謙一郎,相馬央令子,石井健太郎,高野忠,吉田真吾,中谷正生,“岩石圧縮破壊に伴うマイクロ波放射の観測”,日本地震学会・地震,第58巻,2号,pp.375-384, 2006.
[2] Tadashi Takano, Takashi Maeda and Shingo Yoshida,“Experiment and Theoretical Study of Earthquake Detection Capability by Means of Microwave Passive Sensors on a Satellite”, IEEE Trans. Geoscience And Remote Sensing, Vol.6, No.1, pp.107-111, 2009.
[3] 藤縄幸雄、野田洋一、高橋耕三、“自然地震に伴うマイクロクラックについて”、日本地震学会秋季大会講演予稿集、vol.2013, p.81, October 2013.
[4] 塙 陸也、川田 裕貴、柴田 国明、三枝 健二、高野 忠、“岩石破壊実験システムを用いた金属接触による電波放射実験”、電子情報通信学会ソサエティ大会、B-1-22,徳島、9月 2014.
[5] Tadashi Takano, Rikuya Hanawa, Kenji Saegusa, and Hirokazu Ikeda, “Radio Wave Generation by a Collision or Contact between Various Materials”, AGU Fall Meeting, MR23B-4354, San Francisco, Dec. 17, 2010.
以前、岩石破壊に伴って300MHzから22GHzの電波が、放射されることが観測された[1]。これは自然界で岩石が破壊する現象(地震や火山噴火)を、観測あるいは予知する手段として使える可能性があるので、注目を集めた[2][3]。
それに対し、実験系を構成する金属部が互いに当たって、電波が発生することが確認された[4] [5]。 これは金属が衝突・接触により帯電し、放電するためと思われる。従って、この信号は岩石破壊による電気現象と本質的に関係ないので、識別が必要である。
最近我々は、実験系の中で衝突・接触する構成要素を、電気的に短絡して再構築した、岩石破壊の過程で、要素が帯電し放電することを防ぐためである。本稿では、実験系の構成と実験結果について、報告する。
2.実験系
実験系は、岩石破壊するための破壊系と電気信号測定系より成る。破壊系は油圧プレス機の他、土台や天板、それらを接続する支柱、ボルト、ナットなどで構成される。これらすべての部品に、太さxx mm の撚り導線をねじ止めあるいははんだ付けして、結んだ。導線は撚り線で、その数は幅5mm厚さ1mmが24本、幅2mm厚さ0.5mmが9本である。
電気信号の測定系は、以前と同じである。1MHzと300MHz、2GHz、18GHzを扱う。各周波数帯に対応して、アンテナと低雑音増幅器およびフィルタを設ける。データ量はデジタル化して、データ格納する。その際、メモリを駆動始めるためのトリガ信号が、測定上重要である。
岩石試料は以前と同じく、硅岩と花崗岩、斑レイ岩、玄武岩を用いた。
3.測定結果
次のような結果を得られた。
(1)すべての岩石で、破壊と同時に、300MHzにおいて電波の放射が観測された。
(2)特に硅岩では、300MHzの他に18GHz成分も検出できた。これらは同期している。
(3)モルタルの円柱試料でも実験を行ったが、信号検出できなかった。
(4)岩石残滓あるいはブルーシート、ビニール被いなどが触れると、放射が観られた。それらの周波数帯は、300MHzが主で、次に2GHz、そして18GHzと続き、岩石破壊の場合と異なる。原因としては、互いに帯電・放電するためと推測される。
(5)時間を外すと外来雑音も入るが、それらは2GHzや18GHzの高い周波数成分は無い。
4.まとめ
破壊系の金属をすべて短絡して、不要放射を防いだ。それに対しすべての場合で観測されたので、岩石破壊から電波が放射することが確認された。
参考文献
[1] 牧謙一郎,相馬央令子,石井健太郎,高野忠,吉田真吾,中谷正生,“岩石圧縮破壊に伴うマイクロ波放射の観測”,日本地震学会・地震,第58巻,2号,pp.375-384, 2006.
[2] Tadashi Takano, Takashi Maeda and Shingo Yoshida,“Experiment and Theoretical Study of Earthquake Detection Capability by Means of Microwave Passive Sensors on a Satellite”, IEEE Trans. Geoscience And Remote Sensing, Vol.6, No.1, pp.107-111, 2009.
[3] 藤縄幸雄、野田洋一、高橋耕三、“自然地震に伴うマイクロクラックについて”、日本地震学会秋季大会講演予稿集、vol.2013, p.81, October 2013.
[4] 塙 陸也、川田 裕貴、柴田 国明、三枝 健二、高野 忠、“岩石破壊実験システムを用いた金属接触による電波放射実験”、電子情報通信学会ソサエティ大会、B-1-22,徳島、9月 2014.
[5] Tadashi Takano, Rikuya Hanawa, Kenji Saegusa, and Hirokazu Ikeda, “Radio Wave Generation by a Collision or Contact between Various Materials”, AGU Fall Meeting, MR23B-4354, San Francisco, Dec. 17, 2010.