日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG61] 地殻流体と地殻変動

2015年5月27日(水) 11:00 〜 12:45 102B (1F)

コンビーナ:*小泉 尚嗣(産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、梅田 浩司(独立行政法人 日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)、松本 則夫(産業技術総合研究所地質調査総合センター地震地下水研究グループ)、田中 秀実(東京大学大学院理学系研究科)、風早 康平(産業技術総合研究所活断層・火山研究部門)、角森 史昭(東京大学大学院理学系研究科地殻化学実験施設)、座長:小泉 尚嗣(産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、梅田 浩司(独立行政法人 日本原子力研究開発機構 東濃地科学センター)

12:33 〜 12:36

[SCG61-P04] 地殻変動に起因する大気中ラドン濃度変動

ポスター講演3分口頭発表枠

*岩田 大地1長濱 裕幸1武藤 潤1安岡 由美2三浦 哲3太田 雄策3 (1.東北大学大学院理学研究科地学専攻、2.神戸薬科大学薬学部放射線管理室、3.東北大学 地震・噴火予知研究観測センター)

キーワード:大気中ラドン濃度, 地殻変動, GPS, 面積歪

ラドンは,天然に存在する放射性元素である.ウラン系列に属するラドン(222Rn)はラジウム(226Ra)がアルファ崩壊することによって生成される.半減期は約3.8日である.岩石中に含まれるラジウムの崩壊によりラドンがもたらされ,地表から散逸し,大気中ラドン濃度として観測される.
大気中ラドン濃度は,地震発生に関連して,変動すると報告されてきた.例えば,1995年の兵庫県南部地震発生前に,神戸薬科大学で観測された大気中ラドン濃度は異常変動をし,高い値を示したと報告されている(Yasuoka et al., 2008).地震発生に関連した大気中ラドン濃度の異常変動は,地殻歪の変化によって地中より散逸するラドン濃度が変化するためと考えられている.上述の兵庫県南部地震の報告例では,地震発生前に神戸薬科大学の西方約10kmに位置する六甲高雄観測室で観測された局所的な地殻歪の変化と大気中ラドン濃度の変動が対応していることが報告されている.
大気中ラドン濃度が地殻歪の変化による地中からのラドン散逸を反映しているとすると,ラドン観測点周辺の面的な歪変化にも呼応していることが予想される.
本研究では,大気中ラドン濃度の変動とラドン観測点付近の面積歪の変動を比較した.大気中ラドン濃度として,札幌医科大学と福島県立医科大学の放射線管理施設で観測されたデータを使用した(畠中ほか,2013).面積歪の計算には,国土地理院のGEONET観測網のデータから推定された電子基準点の日座標値を用いた.
大気中ラドン濃度変動と面積歪変動との比較を行った結果,札幌医科大学で観測された2003年十勝沖地震(2003年9月26日, Mj 8.0)発生後の大気中ラドン濃度の異常変動と札幌医科大学周辺の面積歪の変動との間に相関があることがわかった.また,福島県立医科大学で観測された2008年茨城県沖地震(2008年5月8日,Mj 7.0),福島県沖地震(2008年7月19日,Mj 6.9),2010年福島県沖地震(2010年3月14日,Mj 6.7),発生前後に見られた大気中ラドン濃度変動と福島県立医科大学周辺の面積歪変動とに相関が見られた.いずれの結果も,大気中ラドン濃度変動が面積歪の10-7から10-8のオーダーの変化に対応しており,地殻歪変化が地中でのラドン移流環境変化をもたらしてラドン散逸を促し,大気中ラドン濃度の異常変動として観測されたと考えられる.