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[SSS25-20] 相模トラフの海溝型巨大地震を対象とした広帯域地震動計算手法の検討
キーワード:海溝型巨大地震, 長周期地震動, 広帯域地震動, 相模トラフ, 関東平野
将来起こりうる海溝型巨大地震に対する地震動評価において、周期1〜数秒程度以上の長周期地震動については、震源破壊過程と3次元波動伝播過程を適切にモデル化した上で理論的手法によって評価することができると考えられる。岩城・他(2014)では、相模トラフで発生しうるマグニチュード8程度以上の海溝型巨大地震を対象として、震源パラメータの不確実性を考慮した多数の震源モデル(シナリオ)について三次元差分法による地震動シミュレーションに基づく長周期地震動ハザード評価を行った。その際、震源モデルや地下構造モデルの精度を考慮して周期3秒以上の帯域を対象とした。
一方で、相模トラフの地震は震源域が首都圏直下まで広がることや、マグニチュード7程度の地震の発生も切迫しているとされていることから、これまでの長周期地震動ハザード評価を踏まえた上で、より短周期の地震動も含めた広帯域地震動ハザード評価を行うことが重要な課題となっている。そのためには、理論的手法による地震動計算を短周期側へ拡張するアプローチ(前田・他、本大会)と、統計的または経験的手法を取り入れた広帯域地震動計算手法の導入によるアプローチが考えられる。
本検討では、大正関東地震に相当する震源域を持つ数ケースの地震を対象として、広帯域地震動計算手法として従来広く用いられているハイブリッド法(先名・他, 2004)による計算を行う。また、岩城・藤原(2013)などで提案された広帯域地震動計算手法の適用を試み、結果について計算手法同士の比較や理論手法による地震動との比較を行う。後者の手法は周波数帯域間の加速度エンベロープの比の経験的特性を利用して、長周期地震動波形から短周期へ広げるものである。ここでは便宜上ERF (envelope ratio function) 法と呼ぶことにする。
どちらの手法についても、長周期側は全国一次地下構造モデル(暫定版;地震調査委員会, 2012)を基本としたモデル(以下mod-JIVSM)を用いて三次元差分法(GMS;青井・他, 2004)で計算する。その際、数値計算上は周期1秒まで有効となるように計算を行うが、mod-JIVSMが周期2秒以上を対象としていることから、波形合成における接続周期は2秒とする。短周期側は、ハイブリッド法では統計的グリーン関数法によって計算し、ERF法では経験的なERFと長周期側の波形を利用して短周期地震動波形を作成する。統計的グリーン関数法に用いる地下構造モデルは、周期0.5-2秒程度の地震動をより適切に評価することを目的として作成中の浅部深部統合地盤モデル(Senna et al., 2013)とする。
関東平野内の代表地点において、ハイブリッド法、ERF法、および差分法による波形やフーリエスペクトルをそれぞれ比較した。ハイブリッド法とERF法は接続周期である2秒から1秒の間で差分法に比べてスペクトル振幅が有意に大きい。ハイブリッド法とERF法の速度波形における最初に到達する主要動部分の振幅レベルは互いにおおむね一致するが、後続動ではハイブリッド法の短周期成分が小さくなる傾向が見られ、特に振幅の大きい後続波群を持つ場合にハイブリッド法とERF法の違いが顕著であった。現行のハイブリッド法では、長周期と短周期の波形を重ね合わせるタイミングに任意性があり、特に巨大地震では両者の波形の走時のずれが顕著に表れる可能性がある。
ここで検討した手法は、今後面的評価も含めた広帯域地震動ハザード評価に現実的な計算量で寄与できることが期待される。地震動予測式等との比較によってこれらの手法の適用性検証や手法同士の比較検討を行うことも重要である。
一方で、相模トラフの地震は震源域が首都圏直下まで広がることや、マグニチュード7程度の地震の発生も切迫しているとされていることから、これまでの長周期地震動ハザード評価を踏まえた上で、より短周期の地震動も含めた広帯域地震動ハザード評価を行うことが重要な課題となっている。そのためには、理論的手法による地震動計算を短周期側へ拡張するアプローチ(前田・他、本大会)と、統計的または経験的手法を取り入れた広帯域地震動計算手法の導入によるアプローチが考えられる。
本検討では、大正関東地震に相当する震源域を持つ数ケースの地震を対象として、広帯域地震動計算手法として従来広く用いられているハイブリッド法(先名・他, 2004)による計算を行う。また、岩城・藤原(2013)などで提案された広帯域地震動計算手法の適用を試み、結果について計算手法同士の比較や理論手法による地震動との比較を行う。後者の手法は周波数帯域間の加速度エンベロープの比の経験的特性を利用して、長周期地震動波形から短周期へ広げるものである。ここでは便宜上ERF (envelope ratio function) 法と呼ぶことにする。
どちらの手法についても、長周期側は全国一次地下構造モデル(暫定版;地震調査委員会, 2012)を基本としたモデル(以下mod-JIVSM)を用いて三次元差分法(GMS;青井・他, 2004)で計算する。その際、数値計算上は周期1秒まで有効となるように計算を行うが、mod-JIVSMが周期2秒以上を対象としていることから、波形合成における接続周期は2秒とする。短周期側は、ハイブリッド法では統計的グリーン関数法によって計算し、ERF法では経験的なERFと長周期側の波形を利用して短周期地震動波形を作成する。統計的グリーン関数法に用いる地下構造モデルは、周期0.5-2秒程度の地震動をより適切に評価することを目的として作成中の浅部深部統合地盤モデル(Senna et al., 2013)とする。
関東平野内の代表地点において、ハイブリッド法、ERF法、および差分法による波形やフーリエスペクトルをそれぞれ比較した。ハイブリッド法とERF法は接続周期である2秒から1秒の間で差分法に比べてスペクトル振幅が有意に大きい。ハイブリッド法とERF法の速度波形における最初に到達する主要動部分の振幅レベルは互いにおおむね一致するが、後続動ではハイブリッド法の短周期成分が小さくなる傾向が見られ、特に振幅の大きい後続波群を持つ場合にハイブリッド法とERF法の違いが顕著であった。現行のハイブリッド法では、長周期と短周期の波形を重ね合わせるタイミングに任意性があり、特に巨大地震では両者の波形の走時のずれが顕著に表れる可能性がある。
ここで検討した手法は、今後面的評価も含めた広帯域地震動ハザード評価に現実的な計算量で寄与できることが期待される。地震動予測式等との比較によってこれらの手法の適用性検証や手法同士の比較検討を行うことも重要である。