日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM27] 大気圏・電離圏

2015年5月26日(火) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*大塚 雄一(名古屋大学太陽地球環境研究所)、津川 卓也(情報通信研究機構)、川村 誠治(独立行政法人 情報通信研究機構)

18:15 〜 19:30

[PEM27-P01] 地上デジタル放送波を用いた水蒸気推定手法の開発

*川村 誠治1太田 弘毅1花土 弘1山本 真之1志賀 信泰1木戸 耕太1安田 哲1後藤 忠広1市川 隆一1雨谷 純1今村 國康1藤枝 美穂1石津 健太郎1岩井 宏徳1杉谷 茂夫1 (1.情報通信研究機構)

キーワード:水蒸気, 電波, 伝搬遅延, 地デジ

情報通信研究機構では、地デジ放送波を用いて水蒸気を推定する手法の研究開発を行っている。電波は伝搬の過程で水蒸気による遅延を受ける。この遅延量を計測すれば、伝搬路上の水蒸気積算値を推定することができる。例えば伝搬距離が5 kmの場合、相対湿度が1 %変化すると伝搬遅延は約17 ps変化する。有効な観測のためには少なくとも数十psの精度で遅延時間を精密測定する必要がある。地デジ波はOFDM方式で符号化されており、その中には既知信号(SP信号)が埋め込まれている。既知信号から複素遅延プロファイルを算出しその位相を用いることで、原理的には約4.5 ms毎に伝搬遅延を高精度(ピコ秒オーダー)に求めることが可能である。このような精度を議論する場合、電波塔側、受信局側のそれぞれの局発の位相変動が大きな誤差要因となる。そこで、電波塔を含む直線上に2つの受信点を設け、それぞれで遅延時間を測定する。この測定値には電波塔と受信局それぞれの局発の位相変動が含まれているが、両者の差を取ることで電波塔側の位相変動を相殺することができる。残った2地点間の局発の位相変動差を同期により相殺することで、水蒸気量を推定する。
これまでに地デジ放送波の遅延を位相変動として測定する装置をソフトウェア無線の技術で開発してきた。この装置をさらに改良し、リアルタイム処理可能なチャンネル数を最大5chにまで拡張することに成功した。同装置のハードウェアとしての測定精度を評価し、遅延測定の時間分解能が50 ps程度(距離分解能15 mm)であることを確認した。異なる地点の局発の同期(位相変動差を取り除く)手法としてはCATVを用いる方法を検討している。CATV網には地デジ中継信号(電波塔から送信されているRFと同じ信号)が通っており、上記の装置で地デジ放送波と同じように処理することが可能である。CATV網で配信される信号をリファレンスとして局発の位相変動を取り除く。CATV信号は異なる経路を通ってくるためにそれぞれ独自の遅延変動を持っているが、それを補正する手法を開発しており、現時点での同期精度は100 ps以下となっている。さらに精度向上を目指して室内実験を行っている。今夏をターゲットに水蒸気推定の実証実験を計画している。この実験ではCATV同期に加え、既に確立している光ファイバーを用いた同期も併用して同期の検証と遅延測定を行う予定である。将来の多点展開に向けて測定装置の小型化(ボード化)の検討も進めている。