18:15 〜 19:30
[SCG62-P16] 沈み込む海嶺列における地震発生サイクル:SSEの発生
キーワード:地震発生サイクルシミュレーション, 垂直応力, 海嶺列, 東海SSE
近年の地震・地殻変動観測網の発達により、沈み込み帯では様々な時空間スケールのすべり現象が発生していることが分かってきた。これらのすべり現象はプレート境界面上に密に分布し、互いに相互作用すると考えられる。そこで、次の巨大地震の発生予測を目指して、巨大地震とその他のすべり現象との相互作用の検証が、地震発生サイクルシミュレーション(ECS; Earthquake Cycle Simulation)を用いて現在行われはじめている(Ariyoshi et al., 2014; Matsuzawa et al., 2013)。
実際の巨大地震発生領域を考える際には、断層面形状がその場の環境が応力の蓄積等に影響を及ぼす。しかしながら、これまで行われてきた計算では比較的大きな波長の断層面形状のみしか考慮されていない(Hirose and Maeda, 2013)。本研究では、より小さなスケールの断層面形状の例として、南海トラフ東端に見られる沈み込む海嶺列に注目する。この領域では南方から海溝まで海嶺列が連なっているのが海底地形データから分かる (Hirose and Maeda, 2013)。東海沖で調べられた地震波速度構造では、これら海嶺列が海洋プレートと共に沈み込む様子が見られている(Kodaira et al., 2004)。また、浜名湖直下のプレート境界では長期的スロースリップが観測されている(東海SSE)。本研究では海嶺列を地形的高まりとして表現し、これらが地震発生サイクルにどのような影響を及ぼすかを検証する。
ECSでは計算量の比較的少ない境界要素法準動的スキームがよく用いられる。この枠組み内では通常プレート境界面上の剪断応力変化のみしか考慮されない。全無限弾性体中の平坦な断層面においては、断層すべりによって垂直応力が変化しないからである。しかしながら、地表が存在する場合または断層面が平坦でない場合にはすべりによる垂直応力変化が生じる。そこで、本研究では、断層面上のすべりによる静的垂直応力変化を考慮した準動的ECSを導入し、断層面形状の効果を検証する。
断層面として、角度15度、速度3.25 cm/yearで定常的に沈み込む、走行・沈み込み方向に200 km×240 kmの平坦なプレート境界面を設定する。また、この平坦な面を基準としそこから高さ5 km波長50 kmの突起が三個連なった形状のプレート境界面を考え、両断層面における地震発生サイクルの比較を行う。断層面上の摩擦として、垂直応力変化を考慮した速度状態依存摩擦則(Linker and Dieterich, 1992)を仮定する。初期剪断応力・垂直応力を一様とし、深さ40 km以浅の領域を地震発生領域として一様な摩擦パラメタA, B, Lを設定した。
A – B = -0.2 MPa, L = 0.2 mに設定したとき、臨界角形成サイズはおよそ60 kmであり、平坦な断層面では通常の地震が繰り返し発生した。一方、凸凹な断層面では、地震性のすべりと、断層面上で凹部を中心としたスロースリップがその地震間に発生した。地震間において、断層面上の垂直応力の初期値からの差は、連なる凸・凹部でそれぞれ増加・減少し、縞構造を示す。垂直応力の増加・減少はその地点の|A – B|を増加・減少させ、働く摩擦力を変化させる。凹部では破壊が始まりやすくなるが、凸部では破壊がしにくくなり、これが地震間のスロースリップ発生の原因となったと考えられる。一方で、浜名湖下で観測される東海SSEは海嶺列の凹部分に位置する。長期的スロースリップは豊富な流体による高間隙流体圧により説明されることが多いが、本研究は、これに加え断層面形状が東海SSEの発生に影響を及ぼしている可能性を示している。
実際の巨大地震発生領域を考える際には、断層面形状がその場の環境が応力の蓄積等に影響を及ぼす。しかしながら、これまで行われてきた計算では比較的大きな波長の断層面形状のみしか考慮されていない(Hirose and Maeda, 2013)。本研究では、より小さなスケールの断層面形状の例として、南海トラフ東端に見られる沈み込む海嶺列に注目する。この領域では南方から海溝まで海嶺列が連なっているのが海底地形データから分かる (Hirose and Maeda, 2013)。東海沖で調べられた地震波速度構造では、これら海嶺列が海洋プレートと共に沈み込む様子が見られている(Kodaira et al., 2004)。また、浜名湖直下のプレート境界では長期的スロースリップが観測されている(東海SSE)。本研究では海嶺列を地形的高まりとして表現し、これらが地震発生サイクルにどのような影響を及ぼすかを検証する。
ECSでは計算量の比較的少ない境界要素法準動的スキームがよく用いられる。この枠組み内では通常プレート境界面上の剪断応力変化のみしか考慮されない。全無限弾性体中の平坦な断層面においては、断層すべりによって垂直応力が変化しないからである。しかしながら、地表が存在する場合または断層面が平坦でない場合にはすべりによる垂直応力変化が生じる。そこで、本研究では、断層面上のすべりによる静的垂直応力変化を考慮した準動的ECSを導入し、断層面形状の効果を検証する。
断層面として、角度15度、速度3.25 cm/yearで定常的に沈み込む、走行・沈み込み方向に200 km×240 kmの平坦なプレート境界面を設定する。また、この平坦な面を基準としそこから高さ5 km波長50 kmの突起が三個連なった形状のプレート境界面を考え、両断層面における地震発生サイクルの比較を行う。断層面上の摩擦として、垂直応力変化を考慮した速度状態依存摩擦則(Linker and Dieterich, 1992)を仮定する。初期剪断応力・垂直応力を一様とし、深さ40 km以浅の領域を地震発生領域として一様な摩擦パラメタA, B, Lを設定した。
A – B = -0.2 MPa, L = 0.2 mに設定したとき、臨界角形成サイズはおよそ60 kmであり、平坦な断層面では通常の地震が繰り返し発生した。一方、凸凹な断層面では、地震性のすべりと、断層面上で凹部を中心としたスロースリップがその地震間に発生した。地震間において、断層面上の垂直応力の初期値からの差は、連なる凸・凹部でそれぞれ増加・減少し、縞構造を示す。垂直応力の増加・減少はその地点の|A – B|を増加・減少させ、働く摩擦力を変化させる。凹部では破壊が始まりやすくなるが、凸部では破壊がしにくくなり、これが地震間のスロースリップ発生の原因となったと考えられる。一方で、浜名湖下で観測される東海SSEは海嶺列の凹部分に位置する。長期的スロースリップは豊富な流体による高間隙流体圧により説明されることが多いが、本研究は、これに加え断層面形状が東海SSEの発生に影響を及ぼしている可能性を示している。