日本地球惑星科学連合2015年大会

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口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS27] 地震・火山等の地殻活動に伴う地圏・大気圏・電離圏電磁現象

2015年5月26日(火) 16:15 〜 18:00 201A (2F)

コンビーナ:*児玉 哲哉(宇宙航空研究開発機構宇宙利用ミッション本部地球観測研究センター)、芳原 容英(電気通信大学 大学院情報理工学研究科)、長尾 年恭(東海大学地震予知研究センター)、早川 正士(電気通信大学)、座長:早川 正士(株式会社 早川地震電磁気研究所)、芳原 容英(電気通信大学 大学院情報理工学研究科)

16:45 〜 17:00

[MIS27-05] 2011年東北沖地震発生40分前に始まったGPS-TECと地磁気偏角の前兆変動について

日置 幸介1、*榎本 祐嗣2 (1.北大院理、2.信州大学 信州科学技術総合振興センター)

キーワード:2011東北沖地震, 電離層全電子数, 地磁気偏角, 前兆現象

2011東北沖地震発生の約40分前から電離層電子の総数(TEC)の増加(Heki, GRL, 2011)とそれに同期した地磁気偏角の正の変動が観測された(Heki & Enomoto, JGR 2013).これに対して,地震発生のあと津波で生じた電離層の擾乱(Kakinami et al. GRL,2012: Kamogawa & Kakinami, JGR, 2013)あるいは磁気嵐の影響とする説(Utada & Shimizu, JGR, 2014: Masci et al. JGR, 2015)が出ている.しかし地震に先行した正の変動はいずれの現象も地震発生ののち約10分以内に元に戻っており,この時間帯に磁気嵐の影響を受けているとは考えにくいこと,TECと地磁気変動との同時性やWyssの判定条件をほぼ満足していることから,我々はTEC変動,地磁気変動ともに地震先行現象であると考えている(Heki & Enomoto, JGR, 2013,2014). 本発表では,上述の磁気嵐影響説に対して再論する.
江刺での水平成分Hの平常値は29037nT程度で磁北は真北から西に6.9°ほど振れている.それが地震発生の約40分前から+(東側)に変動し,地震直前時には+0.34分(9.9×10-5rad)となった.地震前兆の磁場変動分をδBとすると,ΔD ≪ 1なので,δB?H・ΔD関係が成り立つ.この関係からδB=29037nT×9.89×10-5 rad = 2.9nTとなり,ΔHにもその程度の変動(約2.0nT)を確認できる(Enomoto & Heki, GJI 投稿中).この前兆変動はピエゾ磁気効果でない. すなわち,’食い違い弾性論’もとづくピエゾ地磁気の変動量は,震源域周辺の江刺辺りで北西方向,大きさは1nT程度である(Utada et al. EPSL,2011). 前述したように江刺での水平成分は真北から西に6.9°偏っているので,これとピエゾ地磁気変動ベクトル(真北から45°西)とのベクトル和はさらに西向き(~ -0.12arcmin)になるはずであるが,それだと(+)側の変動を示した観測事実に合わない.
 さらにUtadaら(JGR, 2014)は3.11(地震日)の地震直前の15:10-15:46U.T.と磁気嵐が顕著だった21:35-21:54の地磁気偏角の各観測点での+変動の大きさが観測地点の緯度が高いほど大きいこと,双方の時間帯での偏角変動の相関係数が大きいことを理由に磁気嵐の影響であると主張した.偏角ΔDだけでなく伏角あるいはΔ(Z/H)についても検討する必要があろう.地震直前でのΔDとΔ(Z/H)の相関係は0.138(相関なし)であったのに対して磁気嵐が顕著な時間帯での相関係数は-0.971(強い相関)であった.このことは両時間帯で起きているΔDとΔ(Z/H)の変動は同じ原因といえないことを示唆している.
上述の前兆現象を説明するメカニズムについては現在投稿中である(Enomoto & Heki, GJI).