18:15 〜 19:30
[SSS26-P13] 地震波エネルギーの空間分布からの散乱係数と内部減衰の推定 (3)
キーワード:地震波エネルギー, 散乱, 内部減衰
観測された高周波地震波エネルギー密度の時空間分布を,輻射伝達理論の解と比較することにより,地下の散乱係数と内部減衰を分離して推定することが可能である。そのような方法の一つであるMultiple lapse-time window法(Fehler et al., 1992; Hoshiba, 1993)では,各地点で観測された地震波エネルギー密度を複数の時間窓で積分し,その空間変化を輻射伝達理論で解釈する。我々はこれに対して,各時刻での地震波エネルギー密度の空間分布を「空間窓」で積分した量(「見かけのエネルギー」)を求め,その時間変化を輻射伝達理論で解釈することにより,散乱係数と内部減衰を推定する手法を提案した(齋藤ほか,2013,日本地震学会秋季大会)。前回(齋藤ほか,2014,日本地震学会秋季大会),この手法をHi-netで得られた中国地方の地震の観測記録に適用し,西南日本の平均的なS波(1 - 2 Hz)の散乱係数として約0.002 km-1,内部減衰のQ-1値として約0.0075という結果を得た。しかし,観測された見かけのエネルギーは複雑な時間変動を示し,その詳細は輻射伝達理論で十分に再現できなかった。
我々はこの不適合が,理論解の計算に用いる1次元S波速度構造モデルの不適切さによると考えた。そこで,Matsubara and Obara (2011)による3次元地震波速度構造モデルに基づき,中国・四国地方の平均的な1次元S波速度構造を求め,これを理論解の計算に用いた。また,これまで波面の拡大に比例して拡大する空間窓を用いていたが,これを固定幅の空間窓に変更した。その結果,見かけのエネルギーの観測値への理論値の適合度が大きく改善された。今後,改善された手法に基づきデータ解析事例を増やしていく予定である。
謝辞: 防災科学技術研究所のHi-netの地震記録,および同所が公開しているMatsubara and Obara (2011, Earth Planets Space, 63, 663-667)の3次元地震波速度構造モデルのデータを使用しました。
我々はこの不適合が,理論解の計算に用いる1次元S波速度構造モデルの不適切さによると考えた。そこで,Matsubara and Obara (2011)による3次元地震波速度構造モデルに基づき,中国・四国地方の平均的な1次元S波速度構造を求め,これを理論解の計算に用いた。また,これまで波面の拡大に比例して拡大する空間窓を用いていたが,これを固定幅の空間窓に変更した。その結果,見かけのエネルギーの観測値への理論値の適合度が大きく改善された。今後,改善された手法に基づきデータ解析事例を増やしていく予定である。
謝辞: 防災科学技術研究所のHi-netの地震記録,および同所が公開しているMatsubara and Obara (2011, Earth Planets Space, 63, 663-667)の3次元地震波速度構造モデルのデータを使用しました。