16:15 〜 16:30
[HRE28-20] 擬坑井試料を用いた地化学反応結果から見た地中貯留サイトの坑井健全性評価
キーワード:二酸化炭素貯留, 坑井健全性, セメント, 炭酸塩化
本研究では、CO2地中貯留における坑井健全性を評価するため、室内試験による超臨界CO2と坑井セメント、砂岩との反応特性を調べた。分析試料は、既存坑井の構造に即した、ケーシング材 (J-55鋼管)、普通ポルトランドセメント(API ClassA相当; 水/セメント比: 0.46) 及び砂岩からなる円柱状の複合材料 (模擬坑井試料) を作成した。室内試験は地下 1 km程度の地層での反応を想定し、50℃、10MPaの温度・圧力条件下で模擬坑井試料とCO2とを 56 日間反応させた。また、CO2との反応は、CO2飽和溶液環境下及び水飽和した超臨界CO2(wet-CO2)にて行った。
CO2反応後の模擬坑井試料は、セメントと砂岩の界面近傍で反応が進行しており、セメント界面ではオレンジ色に呈色した炭酸塩化領域が、さらにその内側では白色に変色した変質領域を観測した。セメントの炭酸塩化は、CO2飽和溶液環境下と比べてwet-CO2環境下の方が大きく進行してしたが、その度合いは限定的であり、Fickの第二法則より推定した30年後の炭酸塩化領域は、CO2飽和溶液環境下で 0.76mm、wet-CO2環境下であっても 4.5 mm であった。炭酸塩化領域のCa濃度は、未反応領域と比べて13%増加しており、Caが緻密化している一方、Mg、Si、S 濃度は大幅に減少していた。炭酸塩化領域の結晶相は、CaCO3の結晶形として安定なカルサイトとアラゴナイトのほか、天然にはほとんど存在しないバテライトも生成していることが分かった。また、セメント-砂岩界面の砂岩側では、CaCO3やCaの二次鉱物が析出して砂岩内の孔隙を閉塞させる様子が認められた。これは、セメントの主成分元素であるCaが、CO2との反応により溶脱して砂岩の孔隙内に入り、その後、CO2と結合して炭酸塩として析出することで、孔隙を充填したものと考えられる。これらの相互作用により、セメント内部への更なるCO2の侵入が防止され、結果、坑井セメントの劣化を抑制すると予想される。
CO2反応後の模擬坑井試料は、セメントと砂岩の界面近傍で反応が進行しており、セメント界面ではオレンジ色に呈色した炭酸塩化領域が、さらにその内側では白色に変色した変質領域を観測した。セメントの炭酸塩化は、CO2飽和溶液環境下と比べてwet-CO2環境下の方が大きく進行してしたが、その度合いは限定的であり、Fickの第二法則より推定した30年後の炭酸塩化領域は、CO2飽和溶液環境下で 0.76mm、wet-CO2環境下であっても 4.5 mm であった。炭酸塩化領域のCa濃度は、未反応領域と比べて13%増加しており、Caが緻密化している一方、Mg、Si、S 濃度は大幅に減少していた。炭酸塩化領域の結晶相は、CaCO3の結晶形として安定なカルサイトとアラゴナイトのほか、天然にはほとんど存在しないバテライトも生成していることが分かった。また、セメント-砂岩界面の砂岩側では、CaCO3やCaの二次鉱物が析出して砂岩内の孔隙を閉塞させる様子が認められた。これは、セメントの主成分元素であるCaが、CO2との反応により溶脱して砂岩の孔隙内に入り、その後、CO2と結合して炭酸塩として析出することで、孔隙を充填したものと考えられる。これらの相互作用により、セメント内部への更なるCO2の侵入が防止され、結果、坑井セメントの劣化を抑制すると予想される。