17:15 〜 17:30
[SCG57-35] 地形・重力異常・火山分布の位置関係に基づく沈み込み帯の分類
キーワード:沈み込み帯, 島弧, 地形, 重力異常, 火山フロント
多様な沈み込み帯を分類し理解するために、チリ型・マリアナ型(Uyeda, 1982)という区分が提唱され教科書等にも広く掲載されている。チリ型では、若い海洋プレートがその浮力のために低角で沈み込むため、プレート間の固着が強く、巨大地震が発生し上盤(島弧)では圧縮が生じる。一方、マリアナ型では、古く重いプレートが高角で沈み込むため、プレート間の固着は弱く、巨大地震は発生せず上盤では背弧拡大など伸張的な現象が起こるとされている。この分類は直感に訴えるものではあるが、例えばスラブの年齢と沈み込み角の間には実は相関がない(Lallemand et al., 2005)など、実態を的確に反映したものではない。東北弧のように古い海洋プレートが沈み込む一方沈み込み角が浅いなど、どのように分類したら良いのか判然としない島弧は少なくない。
島弧海溝系の最も主要な特徴としては、地震分布の他に、地形・重力異常・火山分布の3つがある。その3者は基本的に海溝にほぼ平行に走る。そこで、各沈み込み帯ごとに島弧の走向に直交する断面を取って、地形および重力異常のプロファイルを描くと共に火山フロントの位置をプロットすることにより、3者の空間的位置関係をまず客観的に把握した。そして、主として火山フロントの位置が重力異常や地形的な高まりと一致するか否かを基に沈み込み帯の分類を行った。
重力異常は、海溝で普遍的に低く、わずかの例外を除き海溝から100 - 200 km 陸側に顕著な高まりを持つ。以下では、その重力異常の高まりを前弧、それよりも陸側を背弧と呼ぶことにする。背弧にも重力異常の高まりがしばしば存在する。
まず一つ目の分類の基準として、前弧の重力異常の高まりと火山フロントの位置とが一致する場合としない場合とがあることに着目した。前者の場合、地形的高まりも一致する。これをI型と名付けた。次に、後者の一致しない場合、火山フロントは海溝側にくることはなく、常に背弧側に位置する。そして、火山フロントと地形的な高まり(ピーク)とが一致する場合と一致しない場合があり、それぞれII-a型、II-b型と名付けた。火山フロントが不明瞭ないしは海溝と斜行、海溝の走向方向に地形等の変化が大きい、海嶺沈み込みの近く、などを除く世界中の30の沈み込み帯について解析したところ、I型が6,II-a型が12、II-b型が6,前弧の重力異常がはっきりしないものが3,I型とII型の中間的形態が3となった。
I型は全て海洋性島弧である一方、II-a型は千島弧を除き全て大陸性だった。II-b型は海洋性と大陸性が半々で、海洋性の場合I型と一続きの島弧海溝系を形成する場合が多い。応力状態は、I型・II-b型が伸張的である一方、II-a型は圧縮的だった。
I型とII-b型の違いは、スラブの沈み込み角に帰されると考えられる。基本的に、前弧の重力異常の高まりの位置は海溝からの距離に依る(Matsu'ura and Sato, 1989)のに対し、火山フロントの位置はスラブの深度で規定されるからである(England et al., 2004)。例えば、スラブの沈み込み角が比較的に浅いトンガ弧はII-b型である一方、その南に位置するI型のケルマデック弧は沈み込み角が非常に急である。
II-a型とII-b型の違いは島弧の応力場に帰着される。まとめると、スラブの沈み込みの角度によりI型とII型が、応力状態によりa型とb型が区分される。そうすると、分類は全体として2×2となるべきだが、スラブの沈み込み角が急でかつ圧縮場というケースは少なくとも地球上には存在しない。一般に、スラブの沈み込み角が急になると島弧の応力場が伸張的になることが知られており、その問題と関係している。また、前弧の重力異常がはっきりしない島弧は、琉球やエーゲ海などいずれも強伸張場である。海洋プレートの沈み込みにより重力異常の高まりを作る作用が、伸張場による変形によってあらかた打ち消されているためと考えられる。また、地形的高まりと火山フロントがしばしば一致するものの普遍的にはそうではないことが知られているが、その問題もこの分類によってクリアに整理できる。I型とII-a型のときには両者は一致し、II-b型のときには一致しないのである。
島弧海溝系の最も主要な特徴としては、地震分布の他に、地形・重力異常・火山分布の3つがある。その3者は基本的に海溝にほぼ平行に走る。そこで、各沈み込み帯ごとに島弧の走向に直交する断面を取って、地形および重力異常のプロファイルを描くと共に火山フロントの位置をプロットすることにより、3者の空間的位置関係をまず客観的に把握した。そして、主として火山フロントの位置が重力異常や地形的な高まりと一致するか否かを基に沈み込み帯の分類を行った。
重力異常は、海溝で普遍的に低く、わずかの例外を除き海溝から100 - 200 km 陸側に顕著な高まりを持つ。以下では、その重力異常の高まりを前弧、それよりも陸側を背弧と呼ぶことにする。背弧にも重力異常の高まりがしばしば存在する。
まず一つ目の分類の基準として、前弧の重力異常の高まりと火山フロントの位置とが一致する場合としない場合とがあることに着目した。前者の場合、地形的高まりも一致する。これをI型と名付けた。次に、後者の一致しない場合、火山フロントは海溝側にくることはなく、常に背弧側に位置する。そして、火山フロントと地形的な高まり(ピーク)とが一致する場合と一致しない場合があり、それぞれII-a型、II-b型と名付けた。火山フロントが不明瞭ないしは海溝と斜行、海溝の走向方向に地形等の変化が大きい、海嶺沈み込みの近く、などを除く世界中の30の沈み込み帯について解析したところ、I型が6,II-a型が12、II-b型が6,前弧の重力異常がはっきりしないものが3,I型とII型の中間的形態が3となった。
I型は全て海洋性島弧である一方、II-a型は千島弧を除き全て大陸性だった。II-b型は海洋性と大陸性が半々で、海洋性の場合I型と一続きの島弧海溝系を形成する場合が多い。応力状態は、I型・II-b型が伸張的である一方、II-a型は圧縮的だった。
I型とII-b型の違いは、スラブの沈み込み角に帰されると考えられる。基本的に、前弧の重力異常の高まりの位置は海溝からの距離に依る(Matsu'ura and Sato, 1989)のに対し、火山フロントの位置はスラブの深度で規定されるからである(England et al., 2004)。例えば、スラブの沈み込み角が比較的に浅いトンガ弧はII-b型である一方、その南に位置するI型のケルマデック弧は沈み込み角が非常に急である。
II-a型とII-b型の違いは島弧の応力場に帰着される。まとめると、スラブの沈み込みの角度によりI型とII型が、応力状態によりa型とb型が区分される。そうすると、分類は全体として2×2となるべきだが、スラブの沈み込み角が急でかつ圧縮場というケースは少なくとも地球上には存在しない。一般に、スラブの沈み込み角が急になると島弧の応力場が伸張的になることが知られており、その問題と関係している。また、前弧の重力異常がはっきりしない島弧は、琉球やエーゲ海などいずれも強伸張場である。海洋プレートの沈み込みにより重力異常の高まりを作る作用が、伸張場による変形によってあらかた打ち消されているためと考えられる。また、地形的高まりと火山フロントがしばしば一致するものの普遍的にはそうではないことが知られているが、その問題もこの分類によってクリアに整理できる。I型とII-a型のときには両者は一致し、II-b型のときには一致しないのである。