12:00 〜 12:15
[PPS01-01] 木星型惑星を想定した雲対流の数値計算
キーワード:木星大気, 湿潤対流, 数値計算, 雲解像モデル
木星・土星の大気では水などの凝結を伴う強い積乱雲が生成することが知られており, 天王星・海王星でも同様の対流雲の存在が理論的に推定される. 木星型惑星の雲対流は, 地球大気の場合と同様に, 大気の成層構造と物質分布の決定に重要な役割を担っていると考えられている. しかし, 厚い雲に覆われた巨大惑星の雲層を遠隔観測するのは困難であり, 巨大惑星における雲対流と平均的大気構造との関係については未だ明らかとなっていない点が多い. この問題に対し我々は, 複数成分の凝結および化学反応を考慮した雲対流モデルを開発し, 木星大気条件において, 雲の生成消滅が繰り返された結果として決まる統計的平衡状態での大気構造を調べてきた (Sugiyama et al., 2009,2011, 2014). 本発表では, 土星と天王星を想定した同様の 2 次元数値計算を実行し, 雲対流と平均的大気構造との関係を議論する.
モデルは準圧縮系方程式(Klemp and Wilhelmson, 1978)に基づく. 雲微物理過程は Nakajima et al. (2000) と同様に, 地球で良く利用されている単純な雲微物理パラメタリゼーション (Kessler, 1969) を用いて定式化した. 放射過程は陽に計算せず, 水平一様かつ時間変化しない熱強制で代用する. 土星・天王星では雲層における正味の放射加熱・冷却の鉛直プロファイルが観測されていないため, 木星の観測結果に基づき 2 bar 高度から対流圏界面 (0.1 bar) の間を冷却することにした. 統計的平衡状態に至るまでの計算時間を短縮するため, 熱強制の値は木星大気における観測値より 2 桁大きい -1 k/day とする. 計算領域は水平方向に 7680 km とする. 鉛直計算領域の大きさは, 土星条件で 480 km, 天王星条件で 650 km とする. 解像度は水平方向と鉛直方向共に 2 km とする. 下部境界での温度圧力は熱平衡計算 (Sugiyama et al., 2006) に基づいて決定した. 下部境界での凝結性成分気体の存在度は, 現実的ではないが, 研究の出発点として太陽組成と同じとする.
土星条件と天王星条件の計算結果の大きな特徴は, H2O 持ち上げ凝結高度に対応する湿潤対流層下部で強い上昇流が見られる一方で, 湿潤対流層上部に狭くて強い下降流が多数見られることである. 強い下降流が存在するという特徴は, 狭くて強い上昇域と広くて弱い下降域によって特徴づけられた木星条件の計算結果と対照的である. 土星と天王星において下降流の大きさは上昇流と同程度の 50 m/s 以上であり, 湿潤対流層の上部では鉛直速度の歪度は負である. 天王星条件で得られた歪み度が最も小さく, このことは土星よりも天王星の方が下降流が卓越することを意味する. 土星条件と天王星条件において下降流が卓越するのは以下の 2 つの理由による. 1 つは対流運動が, 下からの加熱ではなく, 対流圏界面付近 (0.1 < p < 2 bar) での冷却によって駆動されるためである. もう 1 つの理由は, 対流圏上部の温度が木星大気よりも低温なことである. 土星と天王星では H2O の凝結がより下層 (高圧) で始まる. 湿潤対流層の上部では H2O 混合比がほぼゼロとなるため, その高度領域では H2O の凝結潜熱の寄与が非常に小さくなる.
モデルは準圧縮系方程式(Klemp and Wilhelmson, 1978)に基づく. 雲微物理過程は Nakajima et al. (2000) と同様に, 地球で良く利用されている単純な雲微物理パラメタリゼーション (Kessler, 1969) を用いて定式化した. 放射過程は陽に計算せず, 水平一様かつ時間変化しない熱強制で代用する. 土星・天王星では雲層における正味の放射加熱・冷却の鉛直プロファイルが観測されていないため, 木星の観測結果に基づき 2 bar 高度から対流圏界面 (0.1 bar) の間を冷却することにした. 統計的平衡状態に至るまでの計算時間を短縮するため, 熱強制の値は木星大気における観測値より 2 桁大きい -1 k/day とする. 計算領域は水平方向に 7680 km とする. 鉛直計算領域の大きさは, 土星条件で 480 km, 天王星条件で 650 km とする. 解像度は水平方向と鉛直方向共に 2 km とする. 下部境界での温度圧力は熱平衡計算 (Sugiyama et al., 2006) に基づいて決定した. 下部境界での凝結性成分気体の存在度は, 現実的ではないが, 研究の出発点として太陽組成と同じとする.
土星条件と天王星条件の計算結果の大きな特徴は, H2O 持ち上げ凝結高度に対応する湿潤対流層下部で強い上昇流が見られる一方で, 湿潤対流層上部に狭くて強い下降流が多数見られることである. 強い下降流が存在するという特徴は, 狭くて強い上昇域と広くて弱い下降域によって特徴づけられた木星条件の計算結果と対照的である. 土星と天王星において下降流の大きさは上昇流と同程度の 50 m/s 以上であり, 湿潤対流層の上部では鉛直速度の歪度は負である. 天王星条件で得られた歪み度が最も小さく, このことは土星よりも天王星の方が下降流が卓越することを意味する. 土星条件と天王星条件において下降流が卓越するのは以下の 2 つの理由による. 1 つは対流運動が, 下からの加熱ではなく, 対流圏界面付近 (0.1 < p < 2 bar) での冷却によって駆動されるためである. もう 1 つの理由は, 対流圏上部の温度が木星大気よりも低温なことである. 土星と天王星では H2O の凝結がより下層 (高圧) で始まる. 湿潤対流層の上部では H2O 混合比がほぼゼロとなるため, その高度領域では H2O の凝結潜熱の寄与が非常に小さくなる.