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[U06-P05] 太陽地球系システムの理解における統合データサイエンスの重要性
キーワード:太陽地球系科学, 統合データサイエンス, ERG, ひので
太陽から地球電磁気圏、大気圏を含む領域は、様々な手法によって研究が行われてきた。そこでは、人工衛星による直接観測や遠隔観測、地上からの光学や電波、磁場等の観測が行われ、現象の多様な変化を観測し続けている。一方、観測の一つ一つは、現象の部分や断面をとらえたものであり、現象の全体像を明らかにするためには様々なデータを組み合わせることが必須となる。従来、データを組み合わせた解析すなわち統合解析を実現するためには、まず様々な異なる種類のデータを収集し、データを読み込むための処理プロセスを準備する必要があるなど、解析を始める前に多くの努力が必要であり、結果的に統合解析を実現するのに敷居が高い状況であった。一方、近年のIT技術の進歩をふまえ、ネットワークインフラを活用することで、ネットワーク上に分散したデータベースにアクセスし、データを取得することが日常的となってきている。さらに、CDFやFITSといったメタデータ付のデータファイルの標準フォーマットが普及し、ユーザーが個別のデータのファイルフォーマットを意識せずにデータ解析を進めることができる状況が実現しつつある。このような背景をふまえ、現在、名古屋大学太陽地球環境研究所では、国立天文台および宇宙科学研究所との連携のもと、太陽観測衛星 ひのでサイエンスセンター、ジオスペース探査衛星(ERG)プロジェクトのサイエンスセンター(宇宙科学連携拠点として運営)を設置し、人工衛星の観測データと地上データを統合して解析できる環境の構築を進めている。また、現象のより定量的な理解を目指して、観測データとシミュレーションデータを組み合わせた解析環境の実現を目指したシステムの構築や、観測データとシミュレーションデータとを融合するデータ同化技術の開発にも取り組んでいる。本講演では、名古屋大学における具体的な取り組みを例にとりつつ統合データ解析の重要性を紹介するとともに、このような環境構築を通してコミュニティプロジェクトのサイエンスを先導的に担う統合データサイエンスセンターの役割についても議論する。