日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-QR 第四紀学

[H-QR23] ヒト-環境系の時系列ダイナミクス

2015年5月24日(日) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*宮内 崇裕(千葉大学大学院理学研究科地球生命圏科学専攻地球科学コース)、吾妻 崇(独立行政法人産業技術総合研究所)、宮地 良典(産業技術総合研究所)

18:15 〜 19:30

[HQR23-P02] 九十九里浜平野南部における沖積層の層序と基底地形

*中島 礼1七山 太1大井 信三2 (1.産業技術総合研究所地質情報研究部門、2.国土地理院)

キーワード:沖積層, 開析谷, 最終氷期, 完新世, 九十九里浜, 茂原

九十九里浜平野は房総半島の北東部に位置し,海岸線の長さ約60km,幅10kmの,北東から南西に弧状に伸びる広い低地である.この低地は,多数の浜堤列とこれに挟まれた堤間湿地とが交互に海岸線に平行して並んでいるほか,背後の台地との間には旧潟湖,砂丘,自然堤防などが,さらに台地内には谷底低地が分布するなど変化に富む.この低地の形成については,地形学的な研究や表層堆積物の研究が行われ,完新世における九十九里浜平野の地形発達史を論じられている.一方,九十九里浜平野地下に分布する沖積層については,ボーリングデータや地中レーダーを用いた研究が行われており,沖積層の発達過程や地殻変動,海水準変動について論じられている.しかし,これまで九十九里浜平野南部に位置する茂原地域に伏在する沖積層の研究は行われていない.そこで本研究では,茂原地域の沖積層の層序と基底地形を明らかにするために,本地域の表層堆積物の調査,ボーリング資料や放射性炭素年代測定を行った.既存ボーリングデータ資料については,千葉県地質環境インフォメーションバンク(http://wwwp.pref.chiba.lg.jp/pbgeogis/servlet/infobank.index)のデータを参照した.ボーリングデータから沖積層とその下位に分布する上総層群との区別については,主にN値が50を超えるかどうかで判断した.
 本地域の沖積層は3つの累重パターンがみられ,下位より腐植土や貝化石が含まれる泥質層からなるエスチャリー相→貝化石を含む砂質層からなる下部外浜・海浜相→泥質層からなる潟・氾濫原相からなるパターンI,貝化石を含む砂質層からなる下部外浜・海浜相→泥質層からなる潟・氾濫原相からなるパターンIIである.放射性炭素年代の測定結果によると,エスチャリー相は約12,000?9,000 calBPの海進期,外浜・海浜相は約7,000?5,000 calBPの海退期にあたることがわかった.また,外浜・海浜相内の年代は,陸から海に向かって形成年代が新しくなることがわかった.これは海退期において海岸線が沖方向に前進していたということである.市街地より丘陵内に入った河川沿いにも沖積層は発達しており,現在の河川による下刻により沖積段丘となっている.この地域の沖積層は下部にエスチャリー相,上部に内湾・潟・氾濫原相からなり,これをパターンIIIとした.この沖積層は約7,000?5,000 calBPの時期の谷埋め堆積物である.
 本地域の沖積層の基底地形をパターンIのボーリングデータから推察すると,北部から南部に向かって約-20m?-10mの標高でやや平坦な地形となっており,沖方向に傾斜している.一方,パターンIIのボーリングデータの位置をみると,平坦な基底地形を下刻する東及び東南東方向の谷地形が複数内在していることが予想される.現在の九十九里浜平野南部の河川は堤間部など標高の低い場所を蛇行して流れているが,最終氷期の河川は丘陵部から太平洋に直線的に流れこんでいたことがわかる.