11:45 〜 12:00
[G03-11] 「選ぶ」・「作る」・「考える」防災教育教材の提案 -「クロスロード」と「4コマ漫画教材」の違い-
キーワード:地震, 防災, 教育, 災害, 教材
東日本大震災以降,防災教育の必要性は広く認識されるようになり,子どもたちが多くの時間を過ごす学校現場への導入は強く求められている.起こりうる災害は学校の立地条件によって異なるため,防災授業はその学校のリスクに合ったテーマで行われる必要がある.しかし,前例や教材集・ワークシート等が用意されていない現状において,教員が新たに防災教育の授業案を練り,その学校のリスクに合った教材を作るのは容易なことではないだろう.
災害発生時には,さまざまなジレンマが伴う状況下において,今ある不完全な情報から少しでも早く最善の決断を下すことが求められる.多くの場合「正解」は存在しない.発表者は,このような意思決定の事前訓練のできる教材として「4コマ漫画教材」を開発した.本発表では「4コマ漫画教材」が,同様の枠組みで活用できる既存の防災教育教材「クロスロード」と「とっさのひとこと」と共通する点・相違する点について整理し,教材ごとに向いているテーマ・向いていないテーマを明らかにする.これにより,防災授業で扱いたいテーマに合わせて,学校教員が迷わず教材を選択し,生徒とともにその土地の災害について考えられるようになることを目的としている.
例えばこれらの教材は,教材を通して災害時のリスクを共有し,被災者のおかれた状況を疑似体験するという点では共通しているが,教材の主人公,教材の形式,問いに対する正解の有無, 教材で求められるアクション, 地域や対象によってカスタマイズできるかなどに注目して比較してみると,それぞれ違いがある.
中でも,「クロスロード」と「4コマ漫画教材」においては,教材の形式において「二者択一ゲーム」と「漫画」という違いはあるものの,両者ともに「正解のない問題について考え,各自で判断をする」というアクションが求められるなどよく似ている.そこで,「クロスロード」と「4コマ漫画教材」の違いは問題発生時の状況を「文章」で表しているか「漫画」で表しているかという点のみにあるという仮定のもと, 「クロスロード」のストーリーを「4コマ漫画教材」に適用し,作成を試みた.結論から言うと,「クロスロード」の全てのストーリーが「4コマ漫画教材」に作り替えられるわけではなかった.そして比較を進める中で,「クロスロード」はYES/NOカードを出すという行為からもわかるように「決断」の部分をメインとしているが,「4コマ漫画教材」は決断内容をセリフにして相手に伝える「説明・説得」に重点があることが分かった.
両者の特徴はそれぞれ,災害時に判断の難しい決断を迫られること,その後その決断を他者に説明・説得することに対応しており,発災時の一連の場面を両者でカバーしていると言える.例えば,避難所において支援物資が不足するため分配方法を決める(=難しい決断を下す),次にその分配方法を避難者に説明し理解を求める(=他者に説明・説得する)といった場面のことである.「クロスロード」と「4コマ漫画教材」の両方を教材として取り入れることで,決断とその後の説明・説得という一連のプロセスを疑似体験することが可能となる.
本発表では,学校教員が防災の授業をする際に障壁となりうる,なぜ正解のない問題を考える必要があるのか,正解がない中で私たちに何ができるのかについて言及し,既存の防災教育教材との違いをまとめる.また,例として内閣府「一日前プロジェクト」から「4コマ漫画教材」を作成して示す.
災害発生時には,さまざまなジレンマが伴う状況下において,今ある不完全な情報から少しでも早く最善の決断を下すことが求められる.多くの場合「正解」は存在しない.発表者は,このような意思決定の事前訓練のできる教材として「4コマ漫画教材」を開発した.本発表では「4コマ漫画教材」が,同様の枠組みで活用できる既存の防災教育教材「クロスロード」と「とっさのひとこと」と共通する点・相違する点について整理し,教材ごとに向いているテーマ・向いていないテーマを明らかにする.これにより,防災授業で扱いたいテーマに合わせて,学校教員が迷わず教材を選択し,生徒とともにその土地の災害について考えられるようになることを目的としている.
例えばこれらの教材は,教材を通して災害時のリスクを共有し,被災者のおかれた状況を疑似体験するという点では共通しているが,教材の主人公,教材の形式,問いに対する正解の有無, 教材で求められるアクション, 地域や対象によってカスタマイズできるかなどに注目して比較してみると,それぞれ違いがある.
中でも,「クロスロード」と「4コマ漫画教材」においては,教材の形式において「二者択一ゲーム」と「漫画」という違いはあるものの,両者ともに「正解のない問題について考え,各自で判断をする」というアクションが求められるなどよく似ている.そこで,「クロスロード」と「4コマ漫画教材」の違いは問題発生時の状況を「文章」で表しているか「漫画」で表しているかという点のみにあるという仮定のもと, 「クロスロード」のストーリーを「4コマ漫画教材」に適用し,作成を試みた.結論から言うと,「クロスロード」の全てのストーリーが「4コマ漫画教材」に作り替えられるわけではなかった.そして比較を進める中で,「クロスロード」はYES/NOカードを出すという行為からもわかるように「決断」の部分をメインとしているが,「4コマ漫画教材」は決断内容をセリフにして相手に伝える「説明・説得」に重点があることが分かった.
両者の特徴はそれぞれ,災害時に判断の難しい決断を迫られること,その後その決断を他者に説明・説得することに対応しており,発災時の一連の場面を両者でカバーしていると言える.例えば,避難所において支援物資が不足するため分配方法を決める(=難しい決断を下す),次にその分配方法を避難者に説明し理解を求める(=他者に説明・説得する)といった場面のことである.「クロスロード」と「4コマ漫画教材」の両方を教材として取り入れることで,決断とその後の説明・説得という一連のプロセスを疑似体験することが可能となる.
本発表では,学校教員が防災の授業をする際に障壁となりうる,なぜ正解のない問題を考える必要があるのか,正解がない中で私たちに何ができるのかについて言及し,既存の防災教育教材との違いをまとめる.また,例として内閣府「一日前プロジェクト」から「4コマ漫画教材」を作成して示す.