日本地球惑星科学連合2015年大会

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セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS32] 地震活動

2015年5月26日(火) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*林 能成(関西大学社会安全学部)

18:15 〜 19:30

[SSS32-P02] 2011年東北地方太平洋沖地震後の地球潮汐による地震トリガー作用

*田中 佐千子1 (1.防災科研)

キーワード:2011年東北地方太平洋沖地震, 地球潮汐, 地震トリガー作用, 余効すべり

1. はじめに
2011年東北地方太平洋沖地震(Mw 9.1)では,破壊開始点近傍の震源域北側の領域において,本震発生直前の約10年間に,地球潮汐と地震発生の間に明瞭な相関が現れていたことが明らかになっている(Tanaka, 2012).本研究では,太平洋沖地震の震源域を含む,東日本の太平洋沿岸域に注目し,太平洋沖地震発生後の約4年間における地球潮汐と地震発生の関係を調査した.

2. データ・解析方法
用いた地震データは,房総沖から十勝沖にかけての太平洋沿岸域における,Mw 5.0以上,深さ70 km以浅のグローバルCMT解である(1976年から2014年まで,1521個,2014年11~12月は暫定解).地球潮汐による応力変化はTanaka et al.(2002)の方法に従い,海洋荷重の効果も含めて理論的に計算した.応力成分は断層面上の剪断応力成分に着目した.計算した理論地球潮汐から地震発生時刻の潮汐位相角を読み取り,Schuster(1897)の方法を用いて位相選択性の有無を検定した.この検定で得られるp値は帰無仮説「地震発生は地球潮汐の位相角によらない」を棄却する危険率を表す.

3. 解析結果
太平洋沖地震発生後の約4年間について,p値の空間分布を調べた結果,破壊開始点近傍の震源域北側の領域では,p値は30%以上の高い値をとり,本震発生直前に見られた地球潮汐と地震発生の相関は,本震の発生に伴い消滅していたことが確認できる.一方,さらに北側の岩手沖では,p値の小さい領域が存在し,特に海岸線近傍で顕著である.この領域は,余効すべりの大きい領域に対応し(Ozawa et al., 2012),関連性が示唆される.最も小さいp値(2.8%)が得られた200 km四方の領域に注目し,太平洋沖地震の発生前に遡り,p値の時間変化を調べた結果,1976年以降,本震発生前までの約35年間にわたり,p値は40%以上の高い値をとり,地球潮汐と地震発生は無相関の状態が継続していたことが確認された.また,太平洋沖地震後の期間についてもp値の時間変化を調べた結果,p値は太平洋沖地震の発生直後が最も小さく(1.4%),その後徐々に回復する傾向を示すことが明らかになった.余効すべりの変動も本震直後に特に大きく,次第に小さくなっていることが報告されている(Ozawa et al., 2012).余効すべりの加速に伴い,地球潮汐の影響が顕著に現れた可能性が示唆される.