09:45 〜 10:00
[MAG38-04] 放射性セシウムの大気再飛散担体粒子の解明
キーワード:放射性セシウム, 大気再飛散, エアロゾル
背景・目的
東京電力福島第一原子力発電所の事故によって、原子炉施設から多量の放射性物質が周辺地域に飛散・拡散し土壌や植生に沈着した。地表に沈着した放射性核種が今後どのように移行するか定量的に理解していくことが、モデル等により今後の推移を理解する上で重要である。現在、大気には地表や植生からの再飛散によって放射性セシウムが供給され、移流・拡散していると考えられる。その定量化のため、地表から大気中への放射性セシウムの飛散のメカニズムおよび放出フラックスの理解が必要である。飛散メカニズムを確定させるために、まずどのようなエアロゾル粒子に含まれる形で放射性セシウムが飛散しているか、担体物質の同定が必要である。季節によって飛散の様態が変化しているので、季節毎に同定を試みる。
サンプリング・実験
2012年12月より、浪江町下津島地区において7台のハイボリュームエアサンプラーによって大気エアロゾル状で浮遊している放射性核種による放射能濃度を24時間の時間分解能で測定するとともに、カスケードインパクタ1台によりエアロゾル粒径毎の大気放射能濃度を1週間から2週間の時間分解能で測定している。同時に、パッシブサンプラーによる放射性核種の沈着フラックスを測定するとともに、土壌水分と風速など気象要素を自動気象ステーション(AWS)にて、飛散する砂の量を飛砂カウンターにて、エアロゾル粒子の粒径別濃度を電子式陰圧インパクタ(Electric Low-Pressure Impactor, ELPI)、黒色炭素エアロゾル濃度および硫酸エアロゾル濃度をそれぞれブラックカーボンモニタおよびサルフェートモニタにて連続的に測定している。
カスケードインパクタで粒径別に捕集したエアロゾルについて、Ge半導体検出器によりCs-137放射能強度を測定すると共に、走査型電子顕微鏡(SEM)およびEDS装置により粒子の観察と元素分析を行った。特に4.2-10.2μmの粒子を捕集したサンプル(以下粗大サンプル)と0.4μm以下(以下微小サンプル)の粒子を捕集したサンプルを対象に、純水により水溶性成分、および過酸化水素により有機物の抽出を行い、その際に減少した放射性セシウム量からそれらの成分の寄与を定量する。この操作によっても土壌鉱物粒子、金属粒子、無機炭素粒子は残存する。土壌特に粘土鉱物粒子に吸着したセシウムの脱着は困難といわれているが、福士(2015)によると高濃度Na+水溶液に入れるとイオン交換によってセシウムが溶出する。そこで0.2MNaCl水溶液による抽出も試み土壌鉱物粒子の寄与についても推定した。
結果
冬季の粗大サンプルには、主に鉱物粒子および植物破片が見られた。純水抽出および過酸化水素水抽出でのCs-137放射能強度減少は有意ではなく、鉱物粒子とC,Al,Sを含む粒子が残存していたので、鉱物粒子あるいは無機炭素が担体となっている可能性が高いと考えられる。冬季の微小サンプルではCとS元素が多く検出され、またFe,Alも微量検出された。純水抽出するとCs-137放射能強度は25%減少し、水溶性成分の寄与は1/4程度であることが示された。過酸化水素水抽出では変化がないが、Cを含む粒子が残存していたことから、微小粒子であるススなど無機炭素が担体となっている可能性が高い。
春季の粗大サンプルでは、Al,Feを含む鉱物粒子および花粉粒子が多く捕集されていた。純水抽出によりCs-137放射能強度は28%減少し、過酸化水素水抽出では38%減少した。水溶性物質、有機物はそれぞれ1/4および1/3程度寄与している可能性がある。残存粒子をNaCl溶液で抽出すると残存したCs-137の85%が失われ、主要な担体は鉱物粒子である可能性が高い。春季の微小サンプルにはカスケードインパクターを通り抜けた粗大粒子が含まれておりそれを除去したところ、Cs-137放射能強度は71%減少したため、微小粒子の担体を推定することは困難であった。
今後、夏/秋に採取されたサンプルについても同様に担体物質について同定を試みる。
東京電力福島第一原子力発電所の事故によって、原子炉施設から多量の放射性物質が周辺地域に飛散・拡散し土壌や植生に沈着した。地表に沈着した放射性核種が今後どのように移行するか定量的に理解していくことが、モデル等により今後の推移を理解する上で重要である。現在、大気には地表や植生からの再飛散によって放射性セシウムが供給され、移流・拡散していると考えられる。その定量化のため、地表から大気中への放射性セシウムの飛散のメカニズムおよび放出フラックスの理解が必要である。飛散メカニズムを確定させるために、まずどのようなエアロゾル粒子に含まれる形で放射性セシウムが飛散しているか、担体物質の同定が必要である。季節によって飛散の様態が変化しているので、季節毎に同定を試みる。
サンプリング・実験
2012年12月より、浪江町下津島地区において7台のハイボリュームエアサンプラーによって大気エアロゾル状で浮遊している放射性核種による放射能濃度を24時間の時間分解能で測定するとともに、カスケードインパクタ1台によりエアロゾル粒径毎の大気放射能濃度を1週間から2週間の時間分解能で測定している。同時に、パッシブサンプラーによる放射性核種の沈着フラックスを測定するとともに、土壌水分と風速など気象要素を自動気象ステーション(AWS)にて、飛散する砂の量を飛砂カウンターにて、エアロゾル粒子の粒径別濃度を電子式陰圧インパクタ(Electric Low-Pressure Impactor, ELPI)、黒色炭素エアロゾル濃度および硫酸エアロゾル濃度をそれぞれブラックカーボンモニタおよびサルフェートモニタにて連続的に測定している。
カスケードインパクタで粒径別に捕集したエアロゾルについて、Ge半導体検出器によりCs-137放射能強度を測定すると共に、走査型電子顕微鏡(SEM)およびEDS装置により粒子の観察と元素分析を行った。特に4.2-10.2μmの粒子を捕集したサンプル(以下粗大サンプル)と0.4μm以下(以下微小サンプル)の粒子を捕集したサンプルを対象に、純水により水溶性成分、および過酸化水素により有機物の抽出を行い、その際に減少した放射性セシウム量からそれらの成分の寄与を定量する。この操作によっても土壌鉱物粒子、金属粒子、無機炭素粒子は残存する。土壌特に粘土鉱物粒子に吸着したセシウムの脱着は困難といわれているが、福士(2015)によると高濃度Na+水溶液に入れるとイオン交換によってセシウムが溶出する。そこで0.2MNaCl水溶液による抽出も試み土壌鉱物粒子の寄与についても推定した。
結果
冬季の粗大サンプルには、主に鉱物粒子および植物破片が見られた。純水抽出および過酸化水素水抽出でのCs-137放射能強度減少は有意ではなく、鉱物粒子とC,Al,Sを含む粒子が残存していたので、鉱物粒子あるいは無機炭素が担体となっている可能性が高いと考えられる。冬季の微小サンプルではCとS元素が多く検出され、またFe,Alも微量検出された。純水抽出するとCs-137放射能強度は25%減少し、水溶性成分の寄与は1/4程度であることが示された。過酸化水素水抽出では変化がないが、Cを含む粒子が残存していたことから、微小粒子であるススなど無機炭素が担体となっている可能性が高い。
春季の粗大サンプルでは、Al,Feを含む鉱物粒子および花粉粒子が多く捕集されていた。純水抽出によりCs-137放射能強度は28%減少し、過酸化水素水抽出では38%減少した。水溶性物質、有機物はそれぞれ1/4および1/3程度寄与している可能性がある。残存粒子をNaCl溶液で抽出すると残存したCs-137の85%が失われ、主要な担体は鉱物粒子である可能性が高い。春季の微小サンプルにはカスケードインパクターを通り抜けた粗大粒子が含まれておりそれを除去したところ、Cs-137放射能強度は71%減少したため、微小粒子の担体を推定することは困難であった。
今後、夏/秋に採取されたサンプルについても同様に担体物質について同定を試みる。