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[SVC47-P14] カルデラ南方の支笏カルデラ形成噴火堆積物のテフラ層序:特に構成物解析からみた噴火推移について
キーワード:カルデラ噴火, テフラ層序, 構成物解析, 噴火推移
支笏火山は北海道南西部に位置し、約4.2万年前に起こった大規模珪長質噴火により支笏カルデラを形成した。この大規模噴火は、初期にマグマ水蒸気爆発を発生し、次にプリニー式噴火を行い、降下軽石堆積物(spfa-1)を堆積させ、その後噴煙柱の崩壊が起こり、大規模火砕流の噴出へと移行した(勝井,1959)。その後、Yamagata (1992)はカルデラ南東部とカルデラ縁より半径10 km以内の火砕流堆積物中にはラグブレッチャを特徴的に含むことを明らかにし、プリニー式噴火時から火砕流噴火時には火道が移動したことを示唆した(Yamagata, 1992)。その後、中川・ほか(2006)はカルデラ形成時のマグマタイプの多様性を示し、火砕流噴出時の後半に複数のマグマタイプが共存することを示した。このように、カルデラ形成噴火において、噴火様式や火道・火口の拡大・移動、およびマグマタイプの時間変化が指摘されているが、それらの詳細と、それをもとにした噴火推移・過程は明らかではない。我々は支笏カルデラ形成噴火の詳細を地質学的および物質科学的手法で検討している。ここでは最近になって出現した好露頭での地質記載と構成物解析により明らかになった噴火推移について報告する。
本研究で取り扱う露頭は、苫小牧市覚生川流域で大規模に出現した露頭である。ここでは支笏火山初期の噴出物である社台火砕流から、表層部の樽前降下軽石まで約6万年間の層序が観察できる。支笏カルデラ形成に関連したテフラは多数の地層単位に区分できるが、それらを噴火・堆積様式の変化に注目して、大きく5つの噴火フェーズに分類した。フェーズ1は最初期の活動であり、断続的に繰り返したマグマ水蒸気噴火による産物である。これらは、ベースサージと判断できる火山豆石を含む火山灰層、降下軽石層の互層からなる。この後はマグマ噴火に推移し、プリニー式噴火からなるテフラをフェーズ2とした。まずプリニー式噴火により厚い降下軽石層が堆積後、サージ堆積物と降下軽石層の互層が堆積し、その後にラグブレッチャを含む火砕流堆積物が堆積している。このようにフェーズ2では、大規模なプリニー式噴火による降下軽石卓越層から、噴煙柱が断続的に不安定となり火砕流堆積物卓越層へと移行している。これらの間には顕著な時間間隙は観察されていない。その後、侵食間隙を挟んで、大規模で高エネルギーな火砕流を連続的に噴出した(フェーズ3)。最下部の火砕流は、ここでは層厚8 mを越える大規模なもので、フェーズ2の堆積物を捕獲ブロックとして取り込んでいる。これらを覆って、フェーズ4の火砕流が堆積している。この火砕流は大規模な厚い岩片濃集層が最下部にある。この岩片濃集層と下位のフェーズ3の火砕流の境界は不規則に波打っており、短時間のうちに両者が堆積したことを示す。その後、噴火規模を急減して薄いサージ堆積物と降下軽石層が互層している(フェーズ5)。
岩相の変化に注目して40の層位から構成物分析用の試料を採取した。今回の解析結果は以下の通りである。石質岩片含有率はフェーズ2とフェーズ4の岩片濃集層では70%wt.以上であり、通常30wt.%以下で、多くても40wt.%程度である。各ユニットを構成する石質岩片は堆積岩(頁岩・砂岩)、火山岩(両輝石安山岩)、変質岩からなり、まれに深成岩片や鉱物片を含む。下位から岩片のタイプに注目すると、噴火推移に伴う変化が認められる。フェーズ1は堆積岩に比べ、火山岩の含有率が高いことで特徴づけられるが、フェーズ2のプリニー式噴火前期における噴出物中では、堆積岩の含有率は概ね50wt.%と高くなり、噴煙柱が不安定になりだしたフェーズと思われるプリニー式噴火中期では、堆積岩にかわって火山岩の含有率が高くなる。これは、フェーズ1からフェーズ2にかけて火口が移動しプリニー式噴火が起こり、その後に火口が拡大することにより噴煙柱が不安定になったと考えられる。そしてフェーズ2後期になると堆積岩の含有率はおよそ20wt.%まで低下し、火山岩・変質岩の含有率が高くなり、また岩片量が70wt.%に達するユニットも存在する。したがってフェーズ2後半で火口の拡大・移動が大規模に起こったと考えられる。フェーズ2後半の岩片種はその後に続くフェーズ3でもみられる特徴であり、フェーズ3の火砕流発生にかけて大きな火口移動・拡大はなかったと考えられる。フェーズ5の70wt.%以上の岩片を含む岩片濃集層は本露頭では最も大規模であり、またこれまでみられなかったタイプの火山岩が認められる。これは、新たな火道からの活動、また火口の拡大が大規模に起こったことを示しており、この時期がカルデラ形成の最盛期であったと考えられる。今後は、カルデラ形成噴火における噴出プロセスに併せて詳細なマグマ変遷の解明を試みる。
本研究で取り扱う露頭は、苫小牧市覚生川流域で大規模に出現した露頭である。ここでは支笏火山初期の噴出物である社台火砕流から、表層部の樽前降下軽石まで約6万年間の層序が観察できる。支笏カルデラ形成に関連したテフラは多数の地層単位に区分できるが、それらを噴火・堆積様式の変化に注目して、大きく5つの噴火フェーズに分類した。フェーズ1は最初期の活動であり、断続的に繰り返したマグマ水蒸気噴火による産物である。これらは、ベースサージと判断できる火山豆石を含む火山灰層、降下軽石層の互層からなる。この後はマグマ噴火に推移し、プリニー式噴火からなるテフラをフェーズ2とした。まずプリニー式噴火により厚い降下軽石層が堆積後、サージ堆積物と降下軽石層の互層が堆積し、その後にラグブレッチャを含む火砕流堆積物が堆積している。このようにフェーズ2では、大規模なプリニー式噴火による降下軽石卓越層から、噴煙柱が断続的に不安定となり火砕流堆積物卓越層へと移行している。これらの間には顕著な時間間隙は観察されていない。その後、侵食間隙を挟んで、大規模で高エネルギーな火砕流を連続的に噴出した(フェーズ3)。最下部の火砕流は、ここでは層厚8 mを越える大規模なもので、フェーズ2の堆積物を捕獲ブロックとして取り込んでいる。これらを覆って、フェーズ4の火砕流が堆積している。この火砕流は大規模な厚い岩片濃集層が最下部にある。この岩片濃集層と下位のフェーズ3の火砕流の境界は不規則に波打っており、短時間のうちに両者が堆積したことを示す。その後、噴火規模を急減して薄いサージ堆積物と降下軽石層が互層している(フェーズ5)。
岩相の変化に注目して40の層位から構成物分析用の試料を採取した。今回の解析結果は以下の通りである。石質岩片含有率はフェーズ2とフェーズ4の岩片濃集層では70%wt.以上であり、通常30wt.%以下で、多くても40wt.%程度である。各ユニットを構成する石質岩片は堆積岩(頁岩・砂岩)、火山岩(両輝石安山岩)、変質岩からなり、まれに深成岩片や鉱物片を含む。下位から岩片のタイプに注目すると、噴火推移に伴う変化が認められる。フェーズ1は堆積岩に比べ、火山岩の含有率が高いことで特徴づけられるが、フェーズ2のプリニー式噴火前期における噴出物中では、堆積岩の含有率は概ね50wt.%と高くなり、噴煙柱が不安定になりだしたフェーズと思われるプリニー式噴火中期では、堆積岩にかわって火山岩の含有率が高くなる。これは、フェーズ1からフェーズ2にかけて火口が移動しプリニー式噴火が起こり、その後に火口が拡大することにより噴煙柱が不安定になったと考えられる。そしてフェーズ2後期になると堆積岩の含有率はおよそ20wt.%まで低下し、火山岩・変質岩の含有率が高くなり、また岩片量が70wt.%に達するユニットも存在する。したがってフェーズ2後半で火口の拡大・移動が大規模に起こったと考えられる。フェーズ2後半の岩片種はその後に続くフェーズ3でもみられる特徴であり、フェーズ3の火砕流発生にかけて大きな火口移動・拡大はなかったと考えられる。フェーズ5の70wt.%以上の岩片を含む岩片濃集層は本露頭では最も大規模であり、またこれまでみられなかったタイプの火山岩が認められる。これは、新たな火道からの活動、また火口の拡大が大規模に起こったことを示しており、この時期がカルデラ形成の最盛期であったと考えられる。今後は、カルデラ形成噴火における噴出プロセスに併せて詳細なマグマ変遷の解明を試みる。