15:30 〜 15:45
[SSS25-18] 南海トラフにおけるやや長周期地震動の観測とシミュレーションによる再現
キーワード:長周期地震動, やや長周期地震動, 強震動, 南海トラフ, 海底観測
海洋研究開発機構では、紀伊半島沖の水深1,900-4,400 mの海底に20点から成る地震観測網(DONET)を2010年に設置した。各海底観測点には強震計を備えており、リアルタイムで気象庁や防災科学技術研究所などの機関にデータ配信を行っている。南海トラフをはじめとする観測点周辺の地域で発生する大地震に対し、海底における強震観測データは、早期地震警報のためのリアルタイム解析や断層震源解析への活用が期待されている。
本研究では、海底強震観測データを用いて、2013年4月に淡路島で発生した地震(Mw 5.8)時の海底におけるやや長周期成分の震動の解析を行った。陸上の強震観測データ(K-NET)と比較を行ったところ、4秒以上の帯域において、海底観測点では最大振幅値が数倍大きい値を示すことが分かった。一方、1秒以下の短周期成分では振幅値に大きな違いを見出すことはできなかった。震動の継続時間については、陸上では数10秒程度の継続時間であった。一方、海底では減衰が小さく、100秒以上にわたって震動が継続していることが分かった。震源及び海底観測点周辺の領域における3次元波動場のシミュレーションを試みたところ、10-20秒の帯域において、振幅の増幅や震動長大化の特徴について観測データと整合的な結果を得ることができた。シミュレーションから得られたスナップショットでは、表面波が付加体へ入射後、振幅の増幅や波群の伝播速度が低下する様子が確認できた。また、表面波の波線追跡でも同様に、付加体で表面波群の伝播速度が急激に低下することを確認した。これらは、陸上の堆積平野部でこれまで多く観測された堆積層表面波と同様の特徴を示しており、海底観測点で見られたやや長周期成分の特徴的な波群は、低速度構造かつ盆地形状を成す付加体内で発達した表面波の伝播によるものと考えられる。
やや長周期地震動の帯域(2-20秒)は、早期地震警報における地震の規模推定や波形インバージョンなどでの断層震源解析時に重要な帯域である。本研究のシミュレーションでは、2秒までの計算精度があるものの、やや長周期地震動の帯域の内、10秒より短周期側の観測波形の再現はできていない。これは、ミュレーションで用いたS波速度構造モデルと実際の構造との間に乖離があるためと考えている。今後は、コアロギングデータや変換波データなどを活用して、付加体におけるS波構造の詳細な解析を行い、構造モデルを更新する必要があると考えている。
本研究では、海底強震観測データを用いて、2013年4月に淡路島で発生した地震(Mw 5.8)時の海底におけるやや長周期成分の震動の解析を行った。陸上の強震観測データ(K-NET)と比較を行ったところ、4秒以上の帯域において、海底観測点では最大振幅値が数倍大きい値を示すことが分かった。一方、1秒以下の短周期成分では振幅値に大きな違いを見出すことはできなかった。震動の継続時間については、陸上では数10秒程度の継続時間であった。一方、海底では減衰が小さく、100秒以上にわたって震動が継続していることが分かった。震源及び海底観測点周辺の領域における3次元波動場のシミュレーションを試みたところ、10-20秒の帯域において、振幅の増幅や震動長大化の特徴について観測データと整合的な結果を得ることができた。シミュレーションから得られたスナップショットでは、表面波が付加体へ入射後、振幅の増幅や波群の伝播速度が低下する様子が確認できた。また、表面波の波線追跡でも同様に、付加体で表面波群の伝播速度が急激に低下することを確認した。これらは、陸上の堆積平野部でこれまで多く観測された堆積層表面波と同様の特徴を示しており、海底観測点で見られたやや長周期成分の特徴的な波群は、低速度構造かつ盆地形状を成す付加体内で発達した表面波の伝播によるものと考えられる。
やや長周期地震動の帯域(2-20秒)は、早期地震警報における地震の規模推定や波形インバージョンなどでの断層震源解析時に重要な帯域である。本研究のシミュレーションでは、2秒までの計算精度があるものの、やや長周期地震動の帯域の内、10秒より短周期側の観測波形の再現はできていない。これは、ミュレーションで用いたS波速度構造モデルと実際の構造との間に乖離があるためと考えている。今後は、コアロギングデータや変換波データなどを活用して、付加体におけるS波構造の詳細な解析を行い、構造モデルを更新する必要があると考えている。