日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-GD 測地学

[S-GD22] GGOS(全球統合測地観測システム)

2015年5月28日(木) 16:15 〜 18:00 303 (3F)

コンビーナ:*松坂 茂(公益社団法人 日本測量協会)、大坪 俊通(一橋大学)、座長:松坂 茂(公益社団法人 日本測量協会)、土井 浩一郎(国立極地研究所)

16:45 〜 17:00

[SGD22-10] 広帯域バンド幅合成について(その2)

*近藤 哲朗1岳藤 一宏1 (1.情報通信研究機構)

キーワード:ブイエルビーアイ, 広帯域バンド幅合成

1.はじめに
受信帯が10GHz以上にも跨る超広帯域VLBI観測データのバンド幅合成に関して検討を行なっている。現在バンド内の位相特性補正、バンド間の遅延補正および電離層遅延補正を含めたより具体的な処理方法について検討を行なっている。

2.バンド内位相補正
従来のバンド幅合成ソフトウェアのチャンネル間の位相補正に相当する補正がバンド内の位相補正である。ここでは一つのバンドの帯域として最大2GHz程度を考えている。従来のシステムと同様に位相校正信号をフロントエンド部から注入されるが、一般に10GHzを超えるような高い周波数では位相校正信号の周波数特性が劣化してくる。こうした場合にも対応できるよう帯域内位相校正法としては以下の方式を考えている。
1) 強い電波源の相関データから直接帯域内位相特性の差を求め位相校正用データとする。
2) 帯域内の何点かの位相校正信号の時間変動を求め、1)で求める校正データの時間変動を補正する。

3.バンド間遅延補正
複数バンドを独立なサンプラーでサンプリングした場合は広帯域バンド幅合成において機器遅延を補正する必要がある。長基線の場合は電離層遅延と機器遅延の分離ができない。100km程度の基線長では電離層遅延の差は無視できると仮定すると以下の手順でバンド間遅延補正が可能と考えられる。
1) 強い電波源の遅延をバンド毎に独立に求めて、基準バンドに対する各観測遅延の差を求める。この際にバンド内の位相補正は行なっておく。
2) 広帯域バンド幅合成時に1)で求めた遅延を補正する。この時、バンド間の位相差は0とする。
3) バンド幅合成後のクロススペクトルで各バンドの接続点での基準バンドに対する位相差を求める。
4) 1)で求めたバンド間遅延と3)で求めた位相差を補正して広帯域バンド幅合成を再度行なう。

4.電離層遅延の検出
電離層遅延は周波数の-2乗に比例するため周波数が低い程その寄与は大きくなる。低い周波数バンド(概ね4GHz以下)では2.で議論したバンド内位相補正にも影響を及ぼす。3.で議論したバンド間遅延にも影響を及ぼすことになる。この場合、以下に述べるような方法で電離層遅延を補正できないか検討を進めている。
1) あるスキャン(観測)での電離層遅延込でのバンド内位相補正およびバンド間遅延補正データを得る。
2) 別のスキャンでは1)からの変位分を電離層遅延補正とみなして補正する。

5.おわりに
以上述べてきたように広帯域バンド幅合成時のバンド内位相補正、バンド間遅延補正、電離層遅延補正の具体的手法に関しての検討を進めている。短基線の場合については実データを用いての広帯域バンド幅合成にすでに成功している。講演では電離層遅延の検出も含めて報告予定である。