日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS24] ガスハイドレートと地球環境・資源科学

2015年5月27日(水) 16:15 〜 18:00 101B (1F)

コンビーナ:*戸丸 仁(千葉大学理学部地球科学科)、八久保 晶弘(北見工業大学環境・エネルギー研究推進センター)、森田 澄人(独立行政法人 産業技術総合研究所 地圏資源環境研究部門)、座長:戸丸 仁(千葉大学理学部地球科学科)

17:36 〜 17:39

[MIS24-P08] 日本海最上トラフRC1408コアの全有機炭素・全窒素の含有率と安定同位体比を用いた古環境復元

ポスター講演3分口頭発表枠

*卜部 輔1公文 富士夫2 (1.信州大学大学院総合工学系研究科、2.信州大学理学部物質循環学科)

キーワード:古環境変動, 第四紀, 日本海, 有機炭素, 安定同位体

本研究は、日本海堆積物に残された有機炭素・全窒素量の時間的・空間的な分布の把握を行い、併せて生物生産性を支配した日本海の環境変遷の解明を試みている.日本海の新潟県上越沖から採取された堆積物コアの全有機炭素(TOC: total organic carbon)の含有率の変動が、過去13万年にわたって北半球高緯度地域の数百年周期の気候変動と非常によく一致することが明らかになってきた(Urabe et al. 2014). そこで新たに最上トラフから採取されたRC1408コアの全有機炭素 (TOC)・全窒素 (TN: total nitrogen)の含有率と安定同位体比を高時間分解能で測定した。RC1408コアのTOC含有率は、気候が温暖な間氷期・亜間氷期に1.5~2%と高く、寒冷な氷期・亜氷期に0.8%と低いという結果であった。TOCの安定同位体比は、間氷期において-23.1~-21.3‰と高い値を示し、氷期には-25.7~24.7‰と低い値を示した。
 2.9~9.8 kaの完新世中期から後期は, 1.5~1.9%と比較的高いTOC含有率から, 海洋表層における生物生産が活発であったことが示される. これは, 完新世の温暖な気候下で夏季アジアモンスーンが活発化し, 東シナ海の富栄養な沿岸水塊が, 黒潮・対馬暖流によって, 対馬海峡を介して流入したことに起因すると考えられる(Tada et al. 1999; Urabe et al. 2014). また, 6.0~9.8kaにかけてのC/N比の減少と, δ13C値の上昇は, 海水準が最も高くなった6.0kaに向かって, TOCに対する, 海洋表層の植物プランクトンを主とする海洋源有機物と陸上植物を主とする陸源有機物の寄与率が変化し, 海洋源有機物の寄与が高まり, そして, 6.0ka以降は, 現在の海洋環境に移行したことが示唆される. 11.0~12.2 kaのTL1にあたる層準では、TOC含有率の急上昇と, 比較的高いC/N比, 比較的低いδ13C値から, 陸上有機物の流入が増加したことも示唆されるが, 依然として海洋源有機物の値に近いため, 主には海洋表層の生産性が急激に増加したことに起因すると考えられる. そして, この海洋表層における高い生物生産が, 海底へ沈降する有機物フラックスを増加させ, 有機物分解による底層水の酸素消費が増加し, 底層水が還元化したために, TL1のラミナが形成されたと考えられる. 最終氷期極相期(LGM: Last Glacial Maxima)から完新世への移行である最終退氷期には、アジアモンスーンの活発化や栄養塩の流入によって, 日本海表層の生物生産が急激に増加したと考えられる(Tada et al. 1999; Urabe et al. 2014). 同時にδ13C値も, 急激に上昇していることからも海洋の生物生産が急激に増加したことが支持される. LGMにあたる16.2~27.5 kaでは、-25‰程度の最も低いδ13C値と0.8~1.1%の最も低いTOC含有率から, 海洋の生物生産は非常に少なく, 全有機炭素に対する陸上有機物の寄与が比較的増加していたが, その流入量自体は小さかったことが示唆される. 本研究は、経済産業省のメタンハイドレート開発促進事業の一環として行われたものである。