14:45 〜 15:00
[SCG58-06] 南部北上山地,氷上花崗岩体の岩相
キーワード:氷上花崗岩帯, 岩石化学, 南部北上山地, 先シルル紀
南部北上山地の氷上花崗岩類は,岩手県大船渡市南西部から陸前高田市東部にまたがり氷上山を中心として分布する氷上花崗岩体(村田ほか,1974)と,それに対比されているいくつかの小岩体を構成する花崗岩類に与えられた総称である(北上古成層研究グループ,1982).小岩体の多くは先シルル系を伴う.層序的位置づけに関しては様々な議論があったが地質学的証拠は先シルル紀基盤であるとする考えのみが確かである.年代学的には佐々木ほか(2013,2014)によって小林・高木(2000)を参考に岩相わけを行いLA-ICP-MS によるジルコンU-Pb年代測定を行った結果,450Maに測定結果が集中しているため氷上花崗岩類の固結年代は450Ma前後であると結論された.
氷上花崗岩体の岩相区分に関してはIshii et al. (1960),許(1976),浅川ほか(1999),小林・高木(2000)がある.Ishii et al. (1960)は氷上花崗岩体を東部,北部に分布する大野型と氷上山型に区分した.後者は片麻状構造を有することから深所に貫入したと考え,前者は後者を貫き浅所に貫入したと考えた.浅川ほか(1999),小林・高木(2000)も氷上型に大野型が貫入し浅所に貫入したという点で同じである.一方,許(1976)は流理構造が微弱なものをA岩体,顕著なものをB岩体とした.A岩体とB岩体はそれぞれIshii et al. (1960)の大野型と氷上山型に対応するがB岩体がA岩体を貫くと結論付けている.
本研究では自分の採取試料と小林・高木(2000), 浅川ほか(1999)を参考に氷上花崗岩体を9岩相に細分化した.普通角閃石を含む岩相のうち岩体北東部の系列をA-1),中央部の系列をA-2),南西部の系列をA-3),南部の系列をA-4)とし,Ishii et al. (1960)の大野型にあたる岩体北部,東部の系列をB),北部から中央部にかけて広く分布する系列をC),氷上山南東,大野西方に分布する系列をD),東側の壺の沢変成岩に隣接する系列E),西側の壺の沢変成岩に隣接する系列をF)とした.これらの岩相の関係性を露頭観察,薄片観察,全岩化学組成や鉱物の組成データをもとに検討した.
これらの岩相の露頭観察からは角閃石を含む岩相ではA-3以外から暗色包有岩を含んでいることが観察された.A-1,A-2の暗色包有岩は薄く楕円形を示しA-4 に関しては暗色包有岩の周りが優白質であることが確認できる.A-2 のものは火炎状組成を示す.このことからA-2は暗色包有岩が固化時に液体であったことを示し両マグマはほぼ同時期に固化したものと考えられる.また普通角閃石を含まない岩層でも暗色包有岩と接している氷上花崗岩が観察できた.この暗色包有岩を地球化学的判別図によって検討したところMullen(1983)の図では島弧型のソレアイト,カルク‐アリカリ岩の組成であることが判断された.Pearce and Cann(1973)の図ではカルクアルカリ玄武岩にプロットされる.Meschede(1986)の図では島弧型,N-MORB型,プレート内ソレアイトの範囲にプロットされた.
化学組成に関しては9岩相のうちSiO2の最も低いものはA-3(62-63wt%),次いでA-2(64-66wt%),A-1(64-67wt%),A-4(68-71wt%),D(69-71wt%),C(69-72wt%),B(70-73wt%)となる.変成岩に接するE(69-72wt%),F(68-75wt%)はその他の岩相に比べて広範囲にプロットされる.主成分元素ではNa2O,K2Oでばらつく傾向がみられるが他の元素ではSiO2の増加に伴い減少する一連の過程がみられる.Al2O3は一度A-2まで増加した後に減少する傾向がみられる.微量元素ではZr,Sr,GaではSiO2の増加に伴い一度増加した後に減少する様子がみられる.NbはSiO2量の高い岩層ほど含有量に差がある傾向がみられる.REEパターンは全体的にHREEが枯渇して右下がりの傾向を示す.しかし岩相FのみHREEが他の岩相よりも低い傾向を示す.このことは微量元素のYにおいても同様であり他の岩相と比べて低い値を示す.同じ年代,一連の化学組成を示すことから氷上花崗岩は一連のマグマと考えられる.よって氷上花崗岩体の結晶作用の検討を行った.主成分元素を用いて「親マグマ=娘マグマ+分別結晶」のマスバランスを最小二乗法で求めて結晶分化過程における分別鉱物の割合を求めた.そしてマスバランス計算で求めた分別鉱物の割合を用いて分化過程おける微量元素の変化をレイリー分別モデルで検討した.SiO2の低い角閃石を含むA-4からSiO2の高いBのモデルを作ることはできたがA-4よりも低いA-1,2,3についてはモデルができていないため今後検討する必要がある.
氷上花崗岩体の岩相区分に関してはIshii et al. (1960),許(1976),浅川ほか(1999),小林・高木(2000)がある.Ishii et al. (1960)は氷上花崗岩体を東部,北部に分布する大野型と氷上山型に区分した.後者は片麻状構造を有することから深所に貫入したと考え,前者は後者を貫き浅所に貫入したと考えた.浅川ほか(1999),小林・高木(2000)も氷上型に大野型が貫入し浅所に貫入したという点で同じである.一方,許(1976)は流理構造が微弱なものをA岩体,顕著なものをB岩体とした.A岩体とB岩体はそれぞれIshii et al. (1960)の大野型と氷上山型に対応するがB岩体がA岩体を貫くと結論付けている.
本研究では自分の採取試料と小林・高木(2000), 浅川ほか(1999)を参考に氷上花崗岩体を9岩相に細分化した.普通角閃石を含む岩相のうち岩体北東部の系列をA-1),中央部の系列をA-2),南西部の系列をA-3),南部の系列をA-4)とし,Ishii et al. (1960)の大野型にあたる岩体北部,東部の系列をB),北部から中央部にかけて広く分布する系列をC),氷上山南東,大野西方に分布する系列をD),東側の壺の沢変成岩に隣接する系列E),西側の壺の沢変成岩に隣接する系列をF)とした.これらの岩相の関係性を露頭観察,薄片観察,全岩化学組成や鉱物の組成データをもとに検討した.
これらの岩相の露頭観察からは角閃石を含む岩相ではA-3以外から暗色包有岩を含んでいることが観察された.A-1,A-2の暗色包有岩は薄く楕円形を示しA-4 に関しては暗色包有岩の周りが優白質であることが確認できる.A-2 のものは火炎状組成を示す.このことからA-2は暗色包有岩が固化時に液体であったことを示し両マグマはほぼ同時期に固化したものと考えられる.また普通角閃石を含まない岩層でも暗色包有岩と接している氷上花崗岩が観察できた.この暗色包有岩を地球化学的判別図によって検討したところMullen(1983)の図では島弧型のソレアイト,カルク‐アリカリ岩の組成であることが判断された.Pearce and Cann(1973)の図ではカルクアルカリ玄武岩にプロットされる.Meschede(1986)の図では島弧型,N-MORB型,プレート内ソレアイトの範囲にプロットされた.
化学組成に関しては9岩相のうちSiO2の最も低いものはA-3(62-63wt%),次いでA-2(64-66wt%),A-1(64-67wt%),A-4(68-71wt%),D(69-71wt%),C(69-72wt%),B(70-73wt%)となる.変成岩に接するE(69-72wt%),F(68-75wt%)はその他の岩相に比べて広範囲にプロットされる.主成分元素ではNa2O,K2Oでばらつく傾向がみられるが他の元素ではSiO2の増加に伴い減少する一連の過程がみられる.Al2O3は一度A-2まで増加した後に減少する傾向がみられる.微量元素ではZr,Sr,GaではSiO2の増加に伴い一度増加した後に減少する様子がみられる.NbはSiO2量の高い岩層ほど含有量に差がある傾向がみられる.REEパターンは全体的にHREEが枯渇して右下がりの傾向を示す.しかし岩相FのみHREEが他の岩相よりも低い傾向を示す.このことは微量元素のYにおいても同様であり他の岩相と比べて低い値を示す.同じ年代,一連の化学組成を示すことから氷上花崗岩は一連のマグマと考えられる.よって氷上花崗岩体の結晶作用の検討を行った.主成分元素を用いて「親マグマ=娘マグマ+分別結晶」のマスバランスを最小二乗法で求めて結晶分化過程における分別鉱物の割合を求めた.そしてマスバランス計算で求めた分別鉱物の割合を用いて分化過程おける微量元素の変化をレイリー分別モデルで検討した.SiO2の低い角閃石を含むA-4からSiO2の高いBのモデルを作ることはできたがA-4よりも低いA-1,2,3についてはモデルができていないため今後検討する必要がある.