日本地球惑星科学連合2015年大会

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インターナショナルセッション(口頭発表)

セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-SC 社会地球科学・社会都市システム

[H-SC03] Implementing Human Dimensios Research for the Earth' Future

2015年5月28日(木) 10:00 〜 10:45 105 (1F)

コンビーナ:*氷見山 幸夫(北海道教育大学教育学部)、櫻井 武司(国立大学法人一橋大学経済研究所)、春山 成子(三重大学大学院生物資源学研究科共生環境学専攻)、渡辺 悌二(北海道大学大学院地球環境科学研究院)、座長:氷見山 幸夫(北海道教育大学教育学部)、春山 成子(三重大学大学院生物資源学研究科共生環境学専攻)

10:30 〜 10:45

[HSC03-03] 中山間地域の土地利用変化と集中豪雨による水害 -大分県竹田市の事例-

*土居 晴洋1 (1.大分大学)

キーワード:中山間地域, 浸水範囲, 都市的開発, 人口減少

1.はじめに
2011年3月に発生した東日本大震災による巨大な津波は,防波堤などの津波に対する備えがあった地域でさえ,大きな被害を発生させた。日本はこのような大地震ばかりでなく,その歴史において梅雨前線や台風による大雨による洪水と土砂災害を繰り返し経験してきた。本研究で考察する大分県竹田市では,この30年間に4度の大雨を経験し,そのたびに洪水と土砂災害が人的被害と住宅損壊,農地被害が発生した。竹田市は日本の西部にある九州島のほぼ中央部に位置する山間地域に位置する。竹田市は人口が減少し,高齢化が進展しているという点で,日本の典型的な山間地域の特質を備えている。本研究の目的は,大雨による自然災害のうち,洪水に注目して,2012年7月に竹田市で発生した水害を事例として,その浸水状況と地形的条件,社会的条件の変化,土地利用変化との関連を考察する。

2.2012年7月九州北部豪雨災害による竹田市の水害
 本研究で考察する2012年7月九州北部豪雨は,7月3日から14日の間に大分県を含む九州北部地域に梅雨前線の活発化によって各地で斜面崩壊と河川氾濫が発生させた豪雨である。2012年7月九州北部豪雨において,竹田市は再び大きな洪水被害を受けた。7月は梅雨であるため,月初めから1日あたり数十ミリメートルの降水があったが,総雨量は大きくなかった。しかし,12日の3時から9時にかけて1時間あたり30?40ミリメートルの降水が続いた。わずか6時間ほどで,250ミリメートルに達する降水があったことから,稲葉川・玉来川両者ともに水位が上昇した。
ダムが完成していた稲葉川では堤防上端近くまで水位は上昇したが,幸いに越流することはなかった。しかし,玉来川では拝田原地区を中心に数カ所で洪水が発生した。拝田原地区では堤防上端から2.5メートルまで水位が上昇した。この災害においても,河川の上流域において多数の斜面崩壊が発生した。水位が上昇して,越流したことに加えて,これによる流木が河川に流れ下り,橋梁にかかって越流した。

3.竹田市における水害と近年の土地利用変化
竹田市においては,河谷低地はこれまで水田を中心とする貴重な農業地帯であったが,近年の住宅や商業施設,公共施設は,河谷低地に立地する傾向がある。一方で,山間地域の農地は,人口減少と高齢化による農業の担い手不足のため,農地に植林を行うという土地利用変化も一般的である。竹田市においては,水害発生の要因や背景につながると思われる土地利用や社会的変化が進行してきた。
 しかし,既にできあがった住宅の移転といった,既存の土地利用の変更を制度的に誘導することは,現在の日本の法制度では十分に行うことが困難である。特に,本研究が対象とするような中山間地域では,都市的土地利用に適した平地は非常に少ない。竹田市は災害が発生した7月12日を「竹田防災の日」と定め,市民に対する防災・減災意識の涵養にも力を入れ始めた。平地が乏しく,高齢化と人口減少が進行する竹田市においては,今後の防災・減災を実現するためには,市民の防災意識の向上を基礎として,市民生活の基盤となる流域の平地における土地利用のあり方について,これから議論が進められることが期待される。