日本地球惑星科学連合2015年大会

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セッション記号 H (地球人間圏科学) » H-TT 計測技術・研究手法

[H-TT31] 環境トレーサビリティー手法の新展開

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*中野 孝教(大学共同利用機関法人 人間文化研究機構 総合地球環境学研究所)、陀安 一郎(京都大学生態学研究センター)

18:15 〜 19:30

[HTT31-P01] 愛媛県西条市の降水の微量元素濃度とSr・Pb同位体比の時空間変化

*横尾 頼子1亀山 拓哉1申 基澈2加藤 祥生3徳増 実4中野 孝教2 (1.同志社大学理工学部、2.総合地球環境学研究所、3.金沢大学大学院自然科学研究科、4.西条市生活環境部)

キーワード:降水, 微量元素, Sr同位体比, Pb同位体比

四国最高峰の石鎚山地を有する愛媛県西条市において,2008年から2012年までの5年間にわたり,高度の異なる2地点(市役所屋上:標高20 m,成就社:標高1280 m)で月別降水を採取し,微量元素濃度およびSrとPbの安定同位体比を測定した.採取した降水を0.2 μmメンブランフィルターでろ過し,SrとPbの安定同位体比は総合地球環境研究所に設置されている二重収束型高分解能 ICPマルチコレクタ質量分析装置で,微量元素濃度(Al,Si,Mn,Fe,Zn,Li,Ti,V,Cr,Co,Ni,Cu,Ga,Ge,As,Rb,Sr,Zr,Mo,Cd,Sn,Sb,Cs,Ba,W,Pb,U)は同志社大学理工学部に設置されているICP質量分析計で測定した.
石鎚山中腹の成就社の降水では,Al,Mn,Fe,Zn, V, Cu, Ga, As, Rb, Sr, Mo, Cd, Sb, Cs, Ba, Pbの濃度が冬から春にかけて高かった.これらの元素は,春に多い黄砂の観察頻度に対応した濃度変化がみられる.またSrとRbは,市街地の中心部に位置する市役所においても,冬から春にかけて濃度が高くなる季節変化が見られた.成就社の降水のSr同位体比も春季に高く,Srの濃度と同位体比が高い黄砂の可溶性鉱物が溶解しているという考えを支持する.
市街地の中心部に位置する市役所の降水では成就社のような明瞭な季節変化がみられず, Fe,Ti,Cr,Ge,Zr,Sn以外の21元素の濃度は,年間を通して成就社よりも高い傾向がみられた.市役所の降水の微量元素濃度は,成就社に比べてNi, U, Pb, Cs, Sr, Li, Rb, V, Sb, Al, Mn, Coが1.3∼3.0倍,Ga, As, W, Cd, Zn, Ba, Si, Moは3.7∼6.5倍,Cuは17倍高かった.冬期に高濃度になるのは,季節風によるアジア大陸からの越境汚染物質の流入によると考えられるが,市役所で高濃度を示す元素には,瀬戸内など国内の平野域で発生する人為由来成分の影響が大きいことを示唆する.成就社の降水のPb同位体比は日本の環境鉛に似ており,このような考えと矛盾しない.