日本地球惑星科学連合2015年大会

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ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-TT 計測技術・研究手法

[S-TT53] 地震観測・処理システム

2015年5月24日(日) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*中村 洋光(防災科学技術研究所)

18:15 〜 19:30

[STT53-P09] 燃料電池による地震観測のための電源確保

*加納 靖之1吉村 令慧1片尾 浩1前田 健作2山下 全広2 (1.京都大学防災研究所、2.東洋紡株式会社)

キーワード:燃料電池, 地震観測, 地殻変動観測, 臨時観測, 電源確保

地震や地殻変動の研究において,しばしば商用電源のない場所での観測が必要になることがある.大地震発生時の臨時観測や定常的な観測網がカバーしないような稠密な観測をする場合である.また,商用電源がある場所での観測においても,災害時の電源バックップは重要である.特に地震発生前後の貴重なデータを連続的に記録するという観点に立てば,電源のバックアップを用意することが望ましい.
これまでは,蓄電池(主に車載用)や太陽電池を活用して商用電源のない場所での観測が実施されてきている.しかし,蓄電池は重く運搬に不向きであり,また一定の期間ごとに交換する必要がある.太陽電池の場合は,天候により十分な電力が確保できなかったり,夜間は発電できないなどの短所がある.電源に関するもうひとつのアプローチとして省電力型の観測システムを構築するというやり方もあるが,これは主にデーロガーについてのアプローチである.センサーによっては一定の電力を必要とする場合があり,またテレメータする場合にはシステム全体で必要な電力は大きくなりがちである.
近年ダイレクトメタノール型(メタノールと空気を触媒によって化学反応させて発電)のコンパクトな燃料電池が開発され,長期間にわたって安定的に観測用の電力を供給することが可能となってきた.大気観測(屋久島)や,斜面崩壊の観測,砂防工事や火山の監視などでの実績もある.このような燃料電池を使用した地震観測システムの実現性を検証するため,京都大学防災研究所の八木観測点(DP.YGI)において,燃料電池と太陽電池を併用した観測システムを設置し,観測をおこなった.システムの構成は以下のとおりである:短周期地震計,データロガー(白山工業LS7000-XT),燃料電池(東洋紡ProtonCube(R)),太陽電池パネル,電源制御機器,モバイルルーター(NEC MR03LN).2013年12月末から観測を開始し,現在も観測中である.降雪や荒天などにより,太陽電池からの電力が期待できない状況であったが,燃料電池からの電力供給により順調に観測システムが動作している.現状では燃料電池に10Lの燃料タンクを2個接続しており,半年程度は観測を継続できると見込まれる.燃料タンクの増設によりさらに長期間,無交換での運用も可能になる.今後は,燃料電池を利用した地震や地殻変動の観測のため,地震計以外のセンサーやより厳しい観測環境においての試験をおこなう予定である.