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[AHW26-05] ベトナムドンナイ川流域上流部における土地被覆変化及び河川流況変化の検討
キーワード:ドンナイ川流域, 河川流況, 土地被覆変化
ベトナムは気候変動によって最も深刻な影響を受ける国の一つだと評価されている。すなわち1m海面が上昇すると、人口の約10~12%が直接影響を受ける可能性があり、経済的損失がGDPの10%にのぼると予測されている(Dasgupta et al., 2007)。また雨季における降水量の増加と海面上昇が組み合わさると、沿岸デルタ地域の40,000km2、メコンデルタ下流部の20,000km2が洪水になるという予測もある(Eastham et al., 2008)。気候変動に適応した水資源の安定的確保はベトナムにおける重要な課題となっている(Schmidt-Thome et al., 2015)。
ベトナム南部に位置するドンナイ川はメコン川と並び、南部の主要な水資源を供給している。メコン川は気候変動による水資源の変動、メコンデルタ上流部のカスケード型水力発電所システムやダム建設などによる下流の河川流量や土砂輸送に対する潜在的な影響に関する論争が続いているが、ドンナイ川流域はベトナムが独自にコントロールできる水資源の供給源であるため、気候変動及び人間活動による水文レジームの変化及びそれへの適応策について検討することはベトナムにおける喫緊の課題になっている。
ベトナムでは人間活動として森林面積の減少も非常に大きな問題である。すなわち2002年から2009年までの間に毎年620 km2の森林を損失し、250 km2の森林を他の土地利用形態に変換した(ベトナム森林保護局,2010)。森林減少の主な理由は、持続不可能なロギング又は農耕地開発と伐採である(Hoang M.H. et al., 2010)。森林植生が消失すると流出量はほとんどの場合で増加し、逆に森林植生の成長の伴って流出量は減少することが多い(真板,鈴木,2008)。
森林植生の変化が流出量への影響を解析する方法は流況曲線を用いる方法が一つである。本研究ではドンナイ川流域における土地被覆変化及び河川流況変化の検討を目的とする。
ドンナイ川流域内の3地点の1989年から2009年の河川流量データを利用し、河川流況の変動を分析した。衛星データはアメリカ地質調査所(USGS)で公開されているLandsatの2014年3月8日、2005年1月13日、2時点の画像を利用した。リモートセンシング画像解析ソフトENVIを用い、密林・疎林・多年生植物・農耕地・裸地・水部の5つの主要な土地被覆を分解した。
ドンナイ川の流域面積は14,713.5km2であり、画像解析から得られた2005年における主な土地被覆は、密林35%、疎林26%、年生植物24%であった。2005年から2014年にかけて、密林・疎林から多年生植物・農耕地への変化が多かった。また一部の疎林は密林になっていた。特に大部分の裸地(7%)は疎林・多年生植物・農耕地に転換されていた。その他の土地被覆の面積率は密林33%、疎林16%、年生植物39%となった。森林破壊が深刻に発生したと考えられる。
Tri An地点の流況は流域出口におけるダムの流入量として、平水流量・低水流量・渇水流量の全ての流量はやや増えたが、豊水流量が減少傾向があった。森林破壊の影響を受けたTa Lai地点の流況は、豊水流量・平水流量がやや増加したが、低水流量・渇水流量の変化傾向は認められなかった。Da Nhim地点の流況は流域上流部のダムの流入量として、豊水流量・平水流量・低水流量・渇水流量の全ては増加傾向があった。
中野(1971)や玉井ら(2004)などより、植生量減少によって流況曲線は全体に増加することが明らかとなったが、流況曲線変化の原因は植生変化だけではなく、降水量の大小に変動する。1993年から2009年まで間におけるTri An地点の降水量は約5%、Ta LaiとDa Nhim地点の降水量は約10%を増加した。Tri An地点はTa LaiとDa Nhim地点より降水量の増加が少ないためTri An地点における豊水流量が減少した原因の一つだと考えられる。
ベトナム南部に位置するドンナイ川はメコン川と並び、南部の主要な水資源を供給している。メコン川は気候変動による水資源の変動、メコンデルタ上流部のカスケード型水力発電所システムやダム建設などによる下流の河川流量や土砂輸送に対する潜在的な影響に関する論争が続いているが、ドンナイ川流域はベトナムが独自にコントロールできる水資源の供給源であるため、気候変動及び人間活動による水文レジームの変化及びそれへの適応策について検討することはベトナムにおける喫緊の課題になっている。
ベトナムでは人間活動として森林面積の減少も非常に大きな問題である。すなわち2002年から2009年までの間に毎年620 km2の森林を損失し、250 km2の森林を他の土地利用形態に変換した(ベトナム森林保護局,2010)。森林減少の主な理由は、持続不可能なロギング又は農耕地開発と伐採である(Hoang M.H. et al., 2010)。森林植生が消失すると流出量はほとんどの場合で増加し、逆に森林植生の成長の伴って流出量は減少することが多い(真板,鈴木,2008)。
森林植生の変化が流出量への影響を解析する方法は流況曲線を用いる方法が一つである。本研究ではドンナイ川流域における土地被覆変化及び河川流況変化の検討を目的とする。
ドンナイ川流域内の3地点の1989年から2009年の河川流量データを利用し、河川流況の変動を分析した。衛星データはアメリカ地質調査所(USGS)で公開されているLandsatの2014年3月8日、2005年1月13日、2時点の画像を利用した。リモートセンシング画像解析ソフトENVIを用い、密林・疎林・多年生植物・農耕地・裸地・水部の5つの主要な土地被覆を分解した。
ドンナイ川の流域面積は14,713.5km2であり、画像解析から得られた2005年における主な土地被覆は、密林35%、疎林26%、年生植物24%であった。2005年から2014年にかけて、密林・疎林から多年生植物・農耕地への変化が多かった。また一部の疎林は密林になっていた。特に大部分の裸地(7%)は疎林・多年生植物・農耕地に転換されていた。その他の土地被覆の面積率は密林33%、疎林16%、年生植物39%となった。森林破壊が深刻に発生したと考えられる。
Tri An地点の流況は流域出口におけるダムの流入量として、平水流量・低水流量・渇水流量の全ての流量はやや増えたが、豊水流量が減少傾向があった。森林破壊の影響を受けたTa Lai地点の流況は、豊水流量・平水流量がやや増加したが、低水流量・渇水流量の変化傾向は認められなかった。Da Nhim地点の流況は流域上流部のダムの流入量として、豊水流量・平水流量・低水流量・渇水流量の全ては増加傾向があった。
中野(1971)や玉井ら(2004)などより、植生量減少によって流況曲線は全体に増加することが明らかとなったが、流況曲線変化の原因は植生変化だけではなく、降水量の大小に変動する。1993年から2009年まで間におけるTri An地点の降水量は約5%、Ta LaiとDa Nhim地点の降水量は約10%を増加した。Tri An地点はTa LaiとDa Nhim地点より降水量の増加が少ないためTri An地点における豊水流量が減少した原因の一つだと考えられる。