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[HTT29-06] リモートセンシングによるシカ食害地域の推定
キーワード:シカ, 食害, リモートセンシング
シカによる森林への食害が全国的に深刻化している。特に北海道では1976年にエゾシカによる農林業被害額が1億円台に達し、近年もその分布域を拡大しながら生息数を増加させている。しかし、従来のワナ・狩猟による捕獲数調査等では面的な広がりをもった具体的な生息域・生息数調査が行えていないのが現状である。また北海道では全森林面積の68%を天然林が占めるが、その被害調査は人工林のそれより困難であるため被害の全貌すら明らかになっていない。本研究の目的は、Landsat衛星によるマルチバンド衛星画像データのスペクトル解析により、広範囲におけるシカ被害林と非被害林を区別することである。本研究では、従来の直接調査により食害が明らかになっている北海道大学中川研究林において食害の被害地域と非被害地域のスペクトルを衛星の撮像データから獲得し、2つの手法で調査を行った。1つ目は、シカの積雪期の主食であるササの下層分布を特定し、その年毎の変化から食害被害を推定する手法である。これは、ササを下層植生とする森林において、シカがササを食べ尽くした後に森林に食害をもたらす傾向を利用したものである。ササの分布を調査するにあたり、ササ及びダケカンバの混合状態の1画素(ミックスピクセル)からササの占める面積の割合を推定することを試みた。北海道弟子屈町のササ草原・ダケカンバ林・ササ-ダケカンバ林のスペクトルを計測・解析し、ササの分布域に特異的なスペクトルを特定することに成功した。我々がスペクトル解析から推定したササ-ダケカンバ林ミックスピクセル中のササの割合は、より高解像度のGoogle Earthの3色カラー画像から見積もった割合と概ね一致した。2つ目は積雪と森林のスペクトル変化から、食害被害を推定する手法である。これは、シカが食物の獲得が困難になる積雪期に森林への食害をもたらす傾向を利用したものである。中川研究林の被害地、北海道苫前町の非被害地、中川町の積雪した畑の計3地域について5年間のデータを解析した結果、被害地の年毎の変化量が非被害地の年毎の変化量より大きいことが明らかになった。