日本地球惑星科学連合2015年大会

講演情報

口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS21] 南大洋・南極氷床が駆動する全球気候・生態系変動

2015年5月28日(木) 09:00 〜 10:45 301A (3F)

コンビーナ:*池原 実(高知大学海洋コア総合研究センター)、野木 義史(国立極地研究所)、大島 慶一郎(北海道大学低温科学研究所)、座長:菅沼 悠介(国立極地研究所)

10:30 〜 10:45

[MIS21-17] 2002-2014年のGRACE衛星重力データを用いた南極しらせ氷河の質量収支の研究

*山本 圭香1福田 洋一2 (1.宇宙航空研究開発機構、2.京都大学大学院理学研究科)

キーワード:南極氷床変動, GRACE, 衛星重力ミッション, 表面質量収支, しらせ氷河

衛星重力ミッションGRACEの時間変動重力場データを用いた最近の南極氷床の質量変動の研究では、南極全体の氷床質量は2002年の打ち上げ以来、一貫して減少を続けており、近年その減少が加速していることが報告されているが、この減少は主に西南極の大規模な氷床融解、流出によるものであり、東南極では逆に若干の質量の増加が観測されている。東南極の中で、特に大きな増加傾向が見られるのが、しらせ氷河付近である。本研究では、GRACEデータを用いて得られたしらせ氷河の氷床質量の経年変化について、その変動を引き起こす主要因、変動のメカニズムを調査することを目的とした。われわれは、2002年3月から2014年3月までのGRACE衛星重力データを用いて、しらせ氷河における質量変動の流域平均値の経年変化トレンドを見積もった。その結果、+23.7 Gt/yrの質量増加が観察された。このうちGIAの寄与は約3-10 %程度と予想されるため、観察された増加の大部分は表面質量変化によるものと考えられる。続いて経年変化トレンド大きな地域の空間分布について調べたところ、顕著な正のピークはしらせ氷河の河口付近(38.6°E、-70.5°N)に位置していることがわかった。一つの関心事は、観察された質量の増加が、単に降雪量の増加で説明できるのか、それとも下部の氷床流動の減速といった横方向の流出入量変化も関係しているのか、ということである。このことを明らかにするため、われわれは、GRACEから得られた表面質量変化の値と、この地域におけるリージョナルな大気客観解析によって得られた表面質量変化の計算値との比較をおこなった。大気客観解析による表面質量収支のデータは、横方向の流出の成分を含んでおらず、両者の差の時系列は、この流出の時間変化を表すと考えられる。発表では、これらの結果に基づき、しらせ氷河流域における氷床流動のメカニズムについて、考察をおこなう。