日本地球惑星科学連合2015年大会

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セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG56] 日本の原子力発電と地球科学:地震・火山科学の限界を踏まえて

2015年5月27日(水) 18:15 〜 19:30 コンベンションホール (2F)

コンビーナ:*川勝 均(東京大学地震研究所)、金嶋 聰(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、末次 大輔(海洋研究開発機構 地球内部変動研究センター)、橋本 学(京都大学防災研究所)

18:15 〜 19:30

[SCG56-P04] 地震の最大規模推定に関する研究のレビュー

*橋本 学1 (1.京都大学防災研究所)

キーワード:最大規模地震, テクトニクス, G?R則, 地体構造

10万年ともいわれる放射性廃棄物処理の問題を考える上で,日本列島で発生しうる地震の最大規模の推定は重要な問題である.最近,地震の最大規模推定に関する研究を調べたことがあり,このまとめを議論の材料として提供することが有効であると考えた.
日本では,垣見・ほか(2003)に代表されるような,活断層や活構造に着目した研究が主であった.しかし,世界の研究者はこのような地形・地質学的な観点とは異なる観点で最大規模の推定を行っている.これらのいくつかを紹介する.
実は世界では,少なくとも1980年代以前より,主として工学的な要請(おそらく原子力関連プラント等の建設)に基づいて行われてきた.Wheeler(2009)のまとめでは,10以上の手法が提案されているが,それぞれ一長一短がある.大きく分けて,(1)既往の観測最大地震の規模を用いるもの,(2)地震活動度に基づく推定やG–R則の外挿などの統計的手法に基づくもの,(3)テクトニクスに基づくもの,(4)物理的な原理に基づく推定,(5)地震波(Lg波)Coda Qからの推定,などである.最近の研究は,地震カタログと統計モデルに基づいた研究が多い.McCaffrey(2008)は,沈み込み帯のセグメント全体が破壊するとした場合の地震の規模を推定した.日本海溝ではM9.0としている.Kagan, Jackson, BirdらやZöllerらの研究は,地震活動データにTaperedまたはTruncated G–R則をフィッティングするもので,コーナーあるいは打ち切りマグニチュードをM9∼10に設定せざるを得ないとしている.上記の研究者らが共通して主張していることは,データの期間長が長くないといい推定ができず,またデータの期間が長くなれば推定される最大規模も大きくなることである.
地震科学としては,発生しうる地震の最大規模を推定することについては,科学的妥当性がない.今,最大クラスの地震の推定が求められている状況において,地震科学として何をどのように社会に発信するべきか,真摯な議論が不可欠だ.